第9話 決戦

ついにこの時が来た。

帰りのホームルームが終わり、図書室に着いた。

坂石さんには、少しやる事があるため先に行っておいてと言われた。

中には図書委員の人が1人と、本を立ち読みしている人が2人いた。

席は1番出入口に近いところにした。これといった理由はないが……


返ってきた英語のテストと睨めっこをしていた。

何故日本人が外国語を学ばなければいけないんだ!なんてしょうもないことを考えていると、後ろの扉がガラガラと開く音がした。


「お待たせ〜それじゃあ勉強頑張ろう!」


坂石さんはそう言うと、俺の隣の席に座り、カバンから筆記用具、テスト、ノートなどを取り出した。

数学のテストを開くと、俺に近づき質問した。


「ここの問題なんだけど……」


近い!近すぎる!

風に乗っていい匂いがやってくる。

肩が触れそうな距離なため、いろいろとほんとに近い。

俺の理性を正面からぶっ壊しにきた。

くっ……どうにか邪念を取り払わなければならない。

九九だ!俺は無心になって九九を始めた。

いんいちがいち、いんにがに、いんさんがさん……


「おーい、今井君大丈夫? なんか焦点がちゃんとあってないんだけど……」


俺の正面に顔をぬっと出しながら、心配そうに坂石さんは俺に言った。

我に返った俺は、正面を見た。

すると、目の前に好きな人の顔があった。

心臓が飛び跳ねる。自分の顔がどんどん赤くなるのが感じられる。

思わず固まり、そのまま見つめてしまう。

すると坂石さんは少し頬を赤めらせ、顔の位置をスっと元の位置に戻した。


しまった、見つめすぎた。やらかしたー!

1人心の中で叫び反省をしていると、坂石さんはまだ頬が少し赤いまま、先程の続きと思われることを話し始めた。


「こ、ここなんだけどね、この公式を使っても解けなかったの。何を使えばよかったのかな?」


そうだ。俺は勉強をしに来たんだ。

テストの回答を見た。

坂石さんは基本はできていたが、応用がかなり苦手らしい。


「そうだね。この問題はここの角度が知りたいから、坂石さんがさっき出した答えをここに代入して……」

「なるほど!そうやるんだ!今井君って教えるのとっても上手いね。尊敬しちゃうな〜」


笑顔で坂石さんはそう言ってくれた。

ああ、可愛いな

俺は彼女の笑顔に惚れていた……


そこからは、俺が数学をとにかく教えた。

そして今度は俺の分からないところを教えて貰った。

説明してくれている時問題ではなく、説明してくれている坂石さんの事を見ていたのは言うまでもないだろう。


気付けば下校時間の10分前になっていた。

慌てて片付けを済ませ、正門を出た。


「今日はありがとね!また明日。バイバイ」


そう言って笑顔で手を振る彼女は夕日ととてもマッチしていた。


「こっちこそありがとう!じゃあまた明日。バイバイ」


こうして2人は別々の方向に帰っていった。

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