第5話 2人の距離感
放課後、この教室にいるのは俺と坂石さんだけだ。
話すチャンスはここしかない!
そう思っても言葉が上手く出てこない……
そんな時、楓の言葉を思い出す
『早く仕掛けないと取られちゃうかもね』
おそらく俺の他にも坂石さんに一目惚れした人はいるだろう。
こんなところで躓いていては付き合うなんて夢のまた夢だ。
「坂石さんってなんの教科が好き?」
突然話しかけたせいか、坂石さんは一瞬固まった。俺は、なんでいきなり好きな教科聞いてんだよ!他になんかあっだろ!と後悔していたが
「好きな教科は国語と英語かな。逆に苦手なのは数学かも。今井君は?」
彼女の優しい声が聞けて、さっきまで後悔していたことはどこかにいってしまった。
自分も聞かれていることに少し遅れて気付き、慌てて質問に答えた。
「文系なんだね。俺は逆に数学が好きで、国語と英語は苦手なんだよね。」
好きな人と喋るのってこんなに緊張するものなのか。言葉が上手くまとまらない。まるで全校の前で演説をしているようだ……
それから俺たちは明日の話をしつつ、好きな食べ物、趣味などお互いの事を知っていったのだ。
最初は緊張したものの、最後の方になると割と普通に話す事ができた。少し距離が縮まったような気がした。
そんな事を考えていると、別れの時間がやってきた。
家の向きが逆なため、正門でお別れだ。
さすがに出会って間もないのに一緒に帰るのは気持ち悪がられる気がするので、やめておいた。
楽しい時間はあっという間だな。なんて思っていると坂石さんは頬をほんのり染めながら、上目遣いで
「よ、良ければ連絡先交換しない?係のことで連絡することがあるかもしれないし……」
俺は自分の耳を疑った。好きな人が連絡先を交換しようと言っているのだ。
しかも上目遣いで……
鼻血が今にも吹き出しそうだ。驚いたのと、幸せで少し固まっていると、
「ごめんね、嫌だよね。そんないきなり連絡先交換なんて……」
そんな事を言い出すので俺は慌てて否定する。
「嫌なわけないよ!むしろ嬉しいすぎる!
あ、えーっと、別に変な意味じゃなくて仲のいい人が増えるしね。」
焦って恋心を丸出しにしてしまった。苦し紛れの言葉も上手く伝わったようで、坂石さんの表情に特に変化は無かった。
「じゃあID教えるね…………」
こうして俺は好きな人の連絡先を手に入れた。
自分の部屋に着き、早速連絡先を登録した。
夕飯を終え、部屋に着くとスマホから着信音がなった。
まさかと思いメールを開くと、そこには坂石さんからのメールが画面に映し出されていた。
《明日は今日の打ち合わせどうりに頑張ろうね!それじゃあおやすみなさい》
ヤバい、嬉しすぎる……
俺は思わずベッドにダイブし、足をバタバタと暴れさせた。
そして俺は、
《頑張ろうね!おやすみ。また明日》
と返信し、しばらく幸せに浸かった。
そして、なかなか眠れない夜を過ごしたのであった。
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