6人目 野上祐也(のがみ ゆうや) 17歳 男 ②
楽しかった夏休みも終わり、普通の学校生活に戻るとなかなか未歩と2人で会うことはできなかった。授業や廊下、部室など少しの時間しか会えなかったがとても幸せだった。むしろ会えない時間が未歩への想いを更に成長させた。そして、高校3年の春。
部活の時間が終わり静まり返った部室。祐也は1人残り戸締りに来る未歩を待ち伏せていた。生徒たちは下校し静まり返った校舎に未歩の足音が近づいてきた。
ガラガラ
「あら?野上君、まだ残ってたの?」
「はい…、じつは…。」
「どうかした?」
「先生にお話しが…。」
「話し?もう遅いから明日にしましょう?」
「いえ!今言います!俺、先生の事が…。」
祐也は言葉に詰まってその先が出てこない。
「野上君…。」
未歩は何を言いたいのかを察して。
「ありがとう野上君。」
「え?」
「野上君の気持ちは嬉しいわ。でもね…。」
「俺!先生の事本気で…!」
未歩は祐也の言葉を遮った。
「駄目!その先は言わないで…。」
「先生…。」
「その気持ちは大事に胸の奥にしまっておいて。あなたは生徒で私は教師…。歳だって離れてるし…。」
「俺はそんな事!」
「分かって野上君。」
「分からない!」
未歩は話を変えるようにテーブルに置かれた花に近づいた。
「この花達を見て。」
その花はスケッチ用の花でいつも未歩が用意しているものだった。
「恋や愛を花に例えるなら、あなたの今の気持ちはこの蕾よ。」
「蕾?」
「そう、花は咲いている時だけが美しい訳じゃない。花には花の、蕾には蕾の美しさがある。」
祐也には未歩が何を言いたいのか全く分からなかった。
「だからね……、その今の気持ちは大切にしまっておいて。きっといつか必ずその蕾は花開く日が来るはずだから。」
祐也はやはり未歩の言葉が理解できなかったが自分の気持ちは未歩にとって迷惑である事は理解できた。泣きながら部室を出て行く祐也。
「野上君!」
そう叫ぶ未歩の声が校内に響いた。
それから数日後、落ち込みはした祐也だったが未歩の事を諦めてしまった訳では無かった。祐也は再度友人に相談をしていた。
「先生の事はまだ好きだから…。」
「でも振られたんだろ?」
「いや、先生がしてくれた蕾の話。自分なりに考えたんだ。いつか花開くって、それは今じゃないだけなんだよきっと!」
「どういう事?」
「今は先生と生徒だからダメなんだ!だから、学校卒業したらもう一度話そうと思ってる!」
「今は時期じゃないってことか…。」
「ああ、次はちゃんと言うよ。好きだって、最後まで。」
「そっか、頑張れよ!俺はいつでも祐也の味方だからな!」
「うん、ありがとう一雄!」
終わり
『恋の蕾はいつか必ず花開く』
次の人物『山本和彦』
LIFE~交じり合う人生~ 昴流 @jihardo
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