第二章幕間 スノーウィオウルズ
真っ暗闇の空間、誰かの気配があった。
神ーー
豊は突如左目にも幾何学模様が浮かび上がった。
その様子に
やがて豊は赤津を圧倒し、殺そうとしていた。それに少しもったい無いと感じた
「ふふ、榎園豊君、やはり君は私の見込んだとおりだ」
久しぶりに
それから次の舞台をどうしようか思索に耽けた。ある程度成長したアナテマ使いを揃えている。まだ成長途中の人ももちろんいる。
そして気になる事があるとすれば、豊がチームで行動していること。他にもチームで行動しているのは知っていた。
「・・・・・・チームか。次は少し趣向を変えよう。あっちも用意し、彼らと争わせるのも一興。ただ榎園豊、彼は私の予想を上回る行動をしてくれる。さて、それはどうしようかな。敢えて泳がせる・・・・・・それもいいだろう。ならあっち側にちょっとした曲者を用意するか」
次の舞台となる場所へ
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
丸2日寝ていた豊は目を覚ますと、紗瑠の整った顔が眼前にあった。視線がぶつかり、紗瑠は目が覚めた豊に驚きつつも、冷静になって「おはよう」と言葉にした。
対して豊は顔の近さに呆れて、内心で溜息を吐いて口にした。
「何してる?」
紗瑠は妖艶な笑みを浮かべて、豊の胸に手を這わせて、優しく撫でる。
なぜか豊の上半身は裸になっている。身体や腕には包帯が巻かれる。怪我を手当してくれたのは感謝するも、豊は今の現状について問い正したかった。
しかし、紗瑠は頬を赤らめて意味深な笑みを浮かべるのみ。
豊は紗瑠の肩を掴んで離した。それに不満な紗瑠は豊の手を払いのけていつも以上に積極的に、豊の胸板に密着した。銀髪がさらりと身体に落ちてくすぐったい。
「おい」
「ねぇ豊」
いつもの呼び掛け。紗瑠がそう呼ぶときはいつも過激なアプローチをするときである。紗瑠は何かを企んでいる。
「豊の事が・・・・・・欲しいな?」
紗瑠が顔を上げて豊に上目遣いをする。瞳はうるうるとして、あざとく攻める。
それに少なからず豊は口を閉じて、困った顔をしていた。
いつもと雰囲気が違う紗瑠に何かを感じて、豊はあまり強く言えなかった。
抵抗を感じられない豊を確認し、紗瑠は内心これはいけると確信した。このまま最後まで既成事実を作ろうと決行しようと思った。
その時、誰かが部屋に入ってきた。
「榎園の様子はどうなの暁烏? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
部屋に入ってきた蓮魅は、豊に襲い掛かる紗瑠を見てしばらく固まった。それが一体どういうことか、蓮魅は理解していた。要はみんないる家の中で二人は始めようとしている。何を始めるのか? それはナニを始めることをだ。
「君たちさ、ボク達が居る中でいちゃこらチュッチュするとか何なの!? せめてボク達が居ないところでやってよね!? 彼女いない歴=年齢のボクに対して見せつけるとか鬼畜か!? やっぱり榎園は鬼畜系主人公だよ!」
「・・・・・・紗瑠」
「今日は豊の好きなように出していいからね?」
蓮魅の文句に、豊の訝しげな視線を受けても一切気にしない紗瑠は続きを始めようとする。
「マジでボクの前で始めないでよね!? というか何? 君ら見せつけて興奮するタイプなの?」
「とにかく離れろ紗瑠」
これ以上暴走する紗瑠を何とか止める。
せっかく良い雰囲気で、今日なら最後まで行けたと不満な様子の紗瑠。渋々豊の上から離れた。顔は名残惜しそうにして。
豊は疲れた溜息を吐いて、ベッドから降りると下半身に違和感を覚えた。それで気付くべきだったが、タオルケットから出てしまいもう手遅れである。
紗瑠と蓮魅の前で豊は全裸を晒してしまった。女子二人の視線は当然下半身へ注がれた。
「ふふ♡」
「・・・・・・・・・・・・」
当然知っていた紗瑠は興奮し、何も知らない蓮魅は固まった。
豊は直ぐにベッドに腰掛けて、タオルケットを下半身に掛けた。再び溜息を漏らして、紗瑠を睨み、着替える物を要求した。
それから着替え終わった豊がリビングに姿を現して、竜斗と萌衣が声を掛けてきた。
「おう豊、もう大丈夫なのか?」
「問題ない」
「お兄ちゃん! 私心配だったです」
「心配掛けたな」
萌衣の頭を撫でて隣に座る。いつもの定位置である。さっきまで蓮魅が座っていた場所だったため、何か文句を言おうするが、さっきのポロリ事件を思い出して顔を赤くした。そんな蓮魅の様子に竜斗は訝しんだ。
「小峰、なに顔赤くしてんだ?」
「へぇ!? あ、赤くないし!? 何でも無いし!?」
動揺する蓮魅は明らかに何かあったような反応であると、竜斗は疑問を感じる。取りあえず、竜斗は豊が無事に起きた事に安堵する。
「まあ、豊も起きて、今回の一件も終わった所だし・・・・・・つーか、豊には色々と聞きたい事があるんだよ」
それは竜斗以外も同じく、豊が右目を失っても、同様に左目にも幾何学模様が浮かび、アナテマを使った件が気になっていた。
「右目は大丈夫なんですか・・・・・・?」
「ああ、普通に見えるし、問題は無い」
赤津に潰された右目は
「豊の右目が治ったのは喜ばしい事だわ。それと左目の事、それも気になる事よね」
「・・・・・・これは俺にもよく分かってないが、今まで俺達が使っていたアナテマはおそらくほんの一部の力だと思う。それに、右目が潰れたくらいで使えないワケじゃない」
「てっきり使えないかと思ってたけど、力の源は別にあるって事か?」
「おそらくそうだ。原理は知らんが、アナテマについて俺達は完全に理解していないのだろう。今後の事を考えればお前らも覚醒した方がいい」
「そんな事言われてもどうすればいいのよ。榎園なら分かるんでしょ?」
蓮魅に問われ、目が合った瞬間に蓮魅は頬を赤くしてそっぽを向いた。豊としては、そんなに過剰に反応しないでくれと思った。
「悪いが俺も未だに分かってない。何か分かれば教えられるが・・・・・・」
「なら私達も今まで以上に力を付けなきゃ、
蓮魅はふと思った事を口にした。
「そういえばボク達ってチームなのよね? 名前とかあったりするの?」
「あ! そうです! まだ私達チーム名決まってないんです! 蓮魅さん、何かありますか?」
「え? ボクに聞くの? 他は何か考えてないの?」
紗瑠と豊、竜斗は首を横に振って、特に何も決めていなかった。それにチーム名とか特に気にしておらず、萌衣だけが気にしていた。
蓮魅は萌衣のためにもネーミングを考えた。
うんうん唸りながら、チラリと豊を見る。
「氷・・・・・・雪・・・・・・スノー・・・・・・あーなら」
「は、はい! どんな名前ですか?」
萌衣に期待した目を向けられて、蓮魅は満更でもなさそうに答えた。
「スノーウィオウルズとかどう?」
「スノーウィオウルズ・・・・・・ですか?」
「スノーウィオウルでシロフクロウって意味なんだけど、榎園のアナテマって氷を操る力でしょ? 右目も雪色だし、とりあえずスノーが付く言葉が良いかなって考えたんだけど。フクロウは幸運の鳥でもあるし、萌衣たんが動物好きだから縁起のいい動物にしようかなって。知の象徴とも言うし、榎園からボク達に何か教えてくれるんじゃないかって。どうかな?」
豊は自分に関するチーム名は止めて欲しいと思い言葉にしようとして、萌衣の喜色な顔をしているのを見て、言葉を呑み込んだ。やはり萌衣に甘い豊かである。
「素敵ですね! お兄ちゃんに関係するチーム名・・・・・・えへへ、私気に入りました! スノーウィオウルズ・・・・・・えへへ」
やっとチーム名が決まって嬉しそうな顔をする萌衣。それを見て蓮魅はガッツポーズを取って、萌衣に好感度が上がったことを確信する。
紗瑠と竜斗に関しては任せていたこともあり、特に反論はなかった。
「チーム名も決まったんなら、これからどうするかだがーー」
豊がこれからの方針を話そうとした矢先、宙に文字が浮かび上がり、一同は身構えた。
『やぁ、みんな。それに榎園豊君。無事で何よりだよ。君たちのチーム名も決まって早々にこれから私が用意した舞台が決まったよ。今からその場所へ君たちを送る。詳細は全員が揃ったときに伝えよう。さあ、今度も頑張りたまえよ』
「は? 俺達を送るってどこにーー」
竜斗が最後まで言葉を紡ぐ事なく、光に包まれて消えた。その様子に豊達は驚き、全員が光に包まれていた。
「お兄ちゃん!」
「も、萌衣たん!?」
萌衣が豊をしがみつこうとして、蓮魅が萌衣へしがみつこうとして、消えた。
「豊掴まって!」
紗瑠が豊に手を伸ばし、豊は掴もうとした瞬間に消えた。
「・・・・・・今度は俺達に何をするつもりだ」
最後に豊は消えた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
豊が目にしたのは鬱蒼とした森の中だった。
今までと違いどこかに飛ばされたのだろう。一体
「一体ここはどこだ?」
周囲は木に囲まれて、セミの五月蠅い鳴き声が当たりに聞こえてくる。鳥の声や動物の声も豊の耳に届いていた。人気は感じられない。
取りあえず、萌衣と蓮魅を探すために周囲を歩き回ることにした。
しばらく変わり映えの無い風景が続き、一度立ち止まって再び周囲を観察する。
よく目を凝らしていると、草が生い茂って気付いてなかったが、道があることに気付いた。豊は草を掻き分けて、奥へ進んだ。
豊の耳に微かだが川の音を聞いた。どんどん進んで行くと、豊の目に映ったのは綺麗な川。川に近づいて中を覗くと魚が泳いでいる。
そして、パシャという何かが跳ねる音のようなものを聞いて、そこへ視線を向けた。
するとそこにはーー全裸で水浴びをしている少女と出会った。
太陽の光に照らされ、金髪が輝いて腰まで伸ばし、くびれや臀部、脚線美には目が離せず、肌が白く綺麗な肢体。
神秘的な美少女。
彼女は豊がいることも知らず暢気に水浴びをしている。豊は静かに離れようとし、枝を踏んでしまう。
「誰っ!?」
音に気付いた少女は豊と目が合う。
それが彼女との出会いである。
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