第2話「Your identity」

「…あ、あの。一生のお願い…。私に…キスしてほしい!」

「はぁぁぁぁぁ!!!?」


いやいや、待て待て…!いつの間に頭でも打ったのか!?それか、俺が変な夢でも見てるのか!?

「……むにっ(頬っぺたをつねる)」

「い、痛ってぇぇ!!!」

何するんだこいつは…!まさかエスパーかよ!そんなことより、今日初対面で失礼すぎだろ!いや、俺も気味悪女とか散々言ったが…。

「…夢じゃ、ないから…」

やっぱりエスパー…。そう思いながら目の前にいる女を不審そうに見つめる。

「…それで、キスする気になった…?」

まだ、言うか。

「なる訳ねぇっつの!冗談なら、もっとマシなのにしろ…!」

全力で断った。こいつと一緒にいるとツッコミカウンターがどんどん加算される。

「……」

柏木は俯く。お、諦めたか…?よし、簡単に俺のファースt…いや、キスされてたまるかっつの。心の中でガッツポーズを決めた、その瞬間だった。

「…じゃあ、無理矢理にでもさせてもらうね」

彼女はそう言って、俺のマスクを外す。

「は……… !?」


時が止まるとは、こういうことだろう。

自然に目を瞑る。

それは、一瞬。それは、刹那。

しかし、我を忘れるほどに永遠に感じた。

心臓の音が聴こえる。ーートクン、トクン。それは俺なのか、彼女なのか。



「………はぁ」

唇が離れる。触感は、置いてきぼりにして。

……我に返る。急に恥ずかしさが込み上がる。

「おまっ…、なん……」

またもや、言葉を失った。何故なら目の前にいたのは、

「なんで、ここに…、ハルがいるんだよ……!」

そう、俺の目の前にいたのは。あの超人気アイドル、ハルだったのだ。

「……姿、だね」

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