第17話

天界のとあるビルの一室。スレイブが椅子に座り、黒いファイルを見ている。そこへソードがよろよろと入ってきた。


「ソード……?!」


「先輩……、戻りました……。」


「姿を保てない程に力を使ったのですか?今にも消えそうじゃないですか?!」


「すいません、無理をしてしまった様です…。」


「とにかく座って!…落ち着いたら報告を聞きましょう。」


スレイブはソードを椅子に座らせると、ソードの頭に手をかざした。今にも消えそうだったソードの身体がはっきりと見える様になった。


「先輩?こ、これは…?」


「応急処置です。少し私の力を分けました。」


「すいません……。」


落ち着いたソードは、今日の事を包み隠さずスレイブに報告した。


「そうですか…そんなに力を。無茶をしましたね。」


「すいません。」


「それに、もう一度明日過去へ行くと。」


「はい。」


「残念ですが、それは許可できません。禁書は回収します。」


「そんな…!お願いします!あと1度だけですから!」


「自分の状態が分かっているんですか?」


「わかっていますよ、もう大丈夫ですから。」


「それは、今は私の力があるからですよ。貴方の本来の力はもう底をつきかけているでしょう?」


「明日になれば大丈夫です!ダメなら…先輩の力を少し貸して下さい!」


「あなたは…そこまで彼女を。」


「お願いします!」


「……1度だけですよ。それ以上は、彼女が何を言おうと駄目ですからね。」


「ありがとうございます!」


急に立ち上がってよろけるソード。


「ソード!まったく…。あっちで少し横になりなさい。」


スレイブは奥のソファーを指さした。


「すいません、ありがとうございます。」


ソードはスレイブに支えられソファーに横になった。すると、スレイブは急に、


「……やはり、谷山正彦には魂が見えましたか。」


「やはり…とは?」


「実は、貴方から谷山正彦の事を聞いて気になり、調べたんです。彼はもう…死んでいました。」


「え…?どういうことですか?」


ソードは起き上がろうとするが、スレイブがそれを止め、


「落ち着いて下さい。ややこしいですが、貴方が会いに行った谷山正彦は確かに生きていました。しかし今の時代では、すでに彼は亡くなっているのです。」


「そんな…?!」


スレイブは、先ほどまで見ていたファイルを取り出した。


「それは…?」


「自殺した人間をまとめたファイルの1冊です。」


「そんなものが……。」


「彼は、間違いなく10年前に自殺していますね。」


「10年前…!私たちが会いに行ったのもちょうど10年前です!」


「重なりますね。彼は自殺する。だから姿が見えたのでしょう。」


「でも、どうして自殺なんて…?」


「原因はいじめですね。」


「いじめ?彼が、いじめを?」


「過去の葉子さんが関係している様ですね。」


「葉子さんが…?」


「先に桜庭葉子がいじめを受けていた様です。歩けない…ただそれだけで。」


「そんな…?!」


「彼女が入院した後は仲の良かった谷山正彦に標的が向いた様です。」


「人間とはなんて愚かなんだ!」


「そう言う人間もいる、と言う事です。」


「何故、彼や葉子さんが…?!」


「だからと言って、私たちの仕事は皆平等ですよ。」


「はい…わかっています…。」


部屋には、重たい空気が流れた。


つづく

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