第16話

葉子は公園から立ち去る正彦を見送った。すると、急に目の前にソードが現れた。


「きゃ!…ビックリした。」


「あ、すいません。」


「ソードさんありがとう!いま正彦君とお話ししたの!私の姿、正彦君には見えるみたいなの!」


「え?そんな……、まさか!?」


「本当よ。それでね、明日も会う約束したんだけど大丈夫かしら?」


「ええ、それは大丈夫です。日付けを明日にずらせばいいだけですから。もう禁書の扱いに慣れたので細かな調整も可能です。」


「それならお願い!明日に行きたいわ。」


「わかりました。しかし……、何故姿が……?」


「ソードさん?」


「すいません、行きましょう。」


ソードは禁書に力を込めた。光が二人を包み込んだ。翌日に移動し、葉子は正彦と会っていた。その様子を見ながら、ソードは正彦が葉子の姿が見える事にある憶測を立てていた。


「死神と同じ魂の状態である葉子さんの姿が見える……。もしかしたら彼も……?」


考えていると正彦を見送った葉子が近づいてきた。


「ソードさん。あの……、言いにくいんだけど……。」


「また会う約束したんですね?」


「テヘペロ。」


「なんですか?それ?」


「ごめんなさい……。」


「いいですよ、行きましょう。」


そうして葉子は何度もソードに頼み1日づつ移動して正彦と会い続けた。正彦は、ユウコと言う謎の女性に心惹かれはじめていた。


谷山正彦に桜庭葉子の魂が見えた理由。葉子の会いたいと言う強い思いが奇跡を起こしたのだろうか?ソードはそう信じたかった。


そして、移動を1ヶ月分程繰り返したある日、ソードの力は限界を迎えた。


正彦と楽しそうに笑い合う葉子の頭に直接ソードの声が響いた。


(葉子さん……。)


「え??」


(私です…。ソードです。)


「ソードさん?」


(すいません。今病室で直接葉子さんに話してます。そろそろ戻って下さい。私の力が限界の様です。)


「そう…、分かったわ。」


「ユウコさん、どうかした?」


「ごめんなさい。私そろそろ行かないといけないみたい…。」


「行くって何処に?」


「帰らなきゃいけないの。」


「なんだ、どこか遠くに行っちゃいそうな様子だったから。」


「それは……。」


「それじゃ、また明日!」


「明日は、ちょっと…。」


「え、ダメなの?明日はどうしても会いたいんだ!…無理かな?」


「明日……。うん、明日ね。」


「よかった!へへ、楽しみにしててね。」


「何を?」


「いや!明日までひみつ!」


「わかった。じゃ…行くわね。」


「うん、さよなら!」


「……さようなら。」


葉子は正彦から離れて周りを見渡した。


「ソードさん、いいわ戻して。」


葉子を光が包み込んだ。目を開けるとそこはいつものベッドの上だった。


「…戻って来ちゃった。やっぱり…足は動かないわよね。」


葉子のベッドの横でソードが禁書を手にうなだれていた。


「ソードさん!大丈夫?!」


「…だ、大丈夫です。」


「ビックリした。」


「どうでしたか?過去は?」


「もう夢の様な時間だったわ!」


「満足してもらえましたか?」


「え?ええ……。」


「まだ何か?」


「その、言いにくいんだけど…。」


「はい。」


「最後に…もう一度だけ!会いに行けないかしら?」


「もう一度ですか…。」


「また明日って約束しちゃったの。どうしても明日会いたいって!最後ならちゃんとお別れもしたいし…。」


「……わかりました。もう一度だけなら。」


「ありがとう!」


「今日は一度天界で休みます。明日もう一度行きましょう。それで最後です。ちゃんとお別れして下さい。」


「ええ。」


「それでは。」


「さよならソードさん。本当にありがとう。」


ソードは笑顔で会釈すると天界へと帰って行った。


つづく

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