第14話

過去へ……。


13年前の桜庭家。


「葉子ちゃん!学校行こう!」


「おお、正彦君おはよう。」


「あ、おじさんおはようございます!」


「ちょっと待ってくれ。」


「はい!」


上空にはソードと葉子の魂が過去の桜庭家を見下ろしている。


「懐かしいなぁ~。」


「あれが正彦さんですか……?」


「うん。そうよ。あ!今出てきた車椅子の子が私よ。ふふ、お父さん若いわ。それに私、普通に立ててる!嬉しい!」


「……。」


喜ぶ葉子と考え込むソード。


「ソードさん……?どうかしたの?」


「……え?あ、すいません少し考え事を……。」


「考え事?」


「何もありませんよ、気にしないで下さい。それより遡りたい時期等あれば言ってください。自由に移動出来ますよ。」


「そうなの?それじゃ…私が入院してしまった後がいいわ。」


「わかりました。ここからどれくらい先か分かりますか?」


「今は小学6年生だと思うから、3年後ね。」


「わかりました。」


ソードはそう言いながら過去の葉子と正彦を見た。


『何故だろう……、この景色昔に見た気がする。まだ死神になって間もない来たことはないはず、気のせいだろうか。』


「ソードさん?」


「あ!すいません!行きましょう!」


ソードが力を込めるとまた本が不思議な光を放ち二人を包み込んだ。葉子が目を開くとそこには全く違う景色が広がっていた。


「ここは……?」


葉子にも見覚えのない景色の様だ。遠くに建物が見えた。


「あれは?確か中学校かしら?」


「うまく3年後に来れたでしょうか?」


「分からないわ。でもあそこに見えるのは私の通っていた中学校よ。」


「同じ場所で時期だけずらすつもりだったのですが……それに異常に身体重い……。」


「え?大丈夫?」


「ええ、何とか平気です。とりあえず葉子さんの知っている場所まで移動しましょう。」


「ええ……。あれ?待って、あれ!」


葉子達がいたのは中学校の通学路の1つだった。ちょうど下校時間らしく、沢山の学生が帰宅していた。その中に谷山正彦の姿を見つけた。


「正彦君よ!中学生の!」


「よかった。ちゃんと時期は進んだ様ですね。」


「あの名札の色は3年生のだわ。」


「ちゃんと3年後に来れたようですね。葉子さん、自分の体が浮く様なイメージを持ってください。」


「え?浮く?」


「はい。そして飛ぶイメージを。」


「分かったわ。」


葉子の身体が、正確には魂が宙に浮いた。


「すごい!私飛んでるわ!」


「魂の状態ならイメージ通りの動きが可能です。」


「楽しいわね。」


葉子は嬉しそうだ。


「葉子さん。すみませんが、私は1度現在の病室に戻り休みたいのですが。」


「え?私は?」


「葉子さんの姿は誰にも見えないはずです。好きな所へ行って大丈夫ですよ。」


「分かったわ。」


「ありがとうございます。すぐに戻りますから。楽しんで下さい。」


「ありがとう!ソードさん。」


笑みを浮かべたソードの姿が一瞬光り消えた。1人過去に残った葉子は、先程見かけた谷山正彦を探した。


つづく

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