第13話

「……禁書は今ここに?」


「……はい。」


ソードは隠し持っていた禁書をスレイブに手渡した。


「こんなもの使用されたら私の責任問題ですよ!」


「お願いします!1度だけでいいんです!使用させて下さい!」


「いや、流石にこればかりは……。」


「何でもします!どうかお願いします!」


「あなたは……そこまで彼女の為に?」


「はい、彼女の願いを叶えてあげたいのです。」


「……分かりました、1度だけなら許可しましょう。」


「先輩!ありがとうございます!」


「本当に1度だけですよ。何度も使用出来るものではありませんからね。」


「わかっています!」


「それが魂を救うことになると言うのなら、しっかり彼女の願いを叶えてあげてください。」


「はい、必ず。」


そして翌日、7月9日。


ソードは禁書を持ち葉子の病室へと向かった。




「葉子さん、おはようございます。」


そう言って病室に入ってきた山岸名津美が換気のために病室の窓を開けると、夏の熱気とせみの鳴き声が一気に入ってきた。


「おはようございます、名津美さん。」


「今日も暑いわね」


名津美は直ぐに窓を閉めてカーテンを束ねた。


「少しでも空気を入れ替えようと思ったんだけど。」


「ありがとうございます、大丈夫です。」


「これじゃ他の病室も開けられないわね。」


「ふふ、そうですね。」


「葉子さん、何かいい事でもあったの?」


「え……?ええ、少し。」


「そうなんだ、最近顔色が良いから嬉しいわ。」


「そうかしら?」


「ええ、よく笑顔も見せてくれるし。葉子さんは笑顔の方が素敵よ。」


「ありがとう、名津美さん。」


名津美は時計を見た。


「やば!他の病室も回らなきゃ!私行くわね!」


「はい。」


名津美は急いで病室を出ていった。名津美が出ていった病室を葉子は見渡した。


「ソードさん?」


「はい。ここにいます。」


そう言うとソードが姿を現した。


「よかった、来てくれたのね。」


「もちろんですよ、私の仕事ですから。」


「そうよね、仕事だもんね。」


「はい、それに過去に戻る方法も見つけてきましたよ。」


「本当に!?」


「はい、以前同じ事を試みた死神がいた様です。方法が書かれた本がありました。」


「方法って?」


「これを説明するのは難しいですね。私たち死神の力の使い方の違いなんですよ。」


「力?」


「そうですね、こちらの世界で言う魔法みたいなものですかね。」


「魔法が使えるの?」


「本当は少し違うと思うのですが、似たようなものですね。」


「へぇ~。」


ソードは黒い本を取り出し葉子に見せた。


「この本があれば、その力を使うことができます。ただ……。」


「ただ?」


「過去へ行けるのは貴方の魂だけです、意識のみを過去へ飛ばす事ができます。」


「そうなの?でも、この身体で過去へ行けても動けないものね。」


「え?……あ、そこまで考えていませんでした。」


「意識だけなら動き回ることは可能かしら。」


「それは大丈夫だと思います。」


「よかった。」


「ただ……。」


「まだ何かあるの?」


「実は謝らなければ行けない事があって……。」


「何?」


「この本によると過去に行った貴方の姿は見えないようです。魂だけになりますから。」


「見えないの…。」


「はい、ですから先日言っていた彼と話をすると言うのは不可能かもしれません。」


「そうなんだ……。」


「すいません、力不足で。」


「大丈夫よ、過去に行って正彦君の姿が見れるだけでも。」


「それだけでも構いませんか?」


「ええ。お願い出来るかしら?」


「はい!では早速行きましょう!」


「ええ、お願いします。」


「では、目を瞑って過去を思い描いて下さい。」


「はい。」


葉子は目を瞑った。ソードは禁書を開き葉子の顔の前に手をかざした。すると禁書は不思議な光を放ちその光は2人を包み込んで行った。


つづく

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