第3話
庄之助の承諾を得て、正彦は葉子の部屋へと向かった。そして、部屋のドア越しに葉子に話しかけた。
「葉子ちゃん、正彦だけど何かあったの?」
「正彦君……。」
「何かあったのなら教えてよ。」
「そんなこと言えない。」
「聞かせてよ。」
「嫌なことばかりなの。」
「いったい何が?」
「全部よ、皆冷たい目で見るのよ?どうして?どうして私だけこんなめに…。正彦君だって本当は迷惑してるんでしょ?」
「迷惑だなんて、思ってないよ!」
「嘘よ!もういいの、ほっといて!何処にも行きたくないの、外に出たくないのよ!」
「葉子ちゃん……。」
葉子はもう中学3年生。周りの目が気になる年頃である。
どうすれば良いか分からず黙ってしまった正彦に、庄之助は、
「この間から急にこの調子でな、少し様子を見ようかと思ってるんだ。」
「そうですか……。」
「葉子には辛い思いをさせてきているからな、今までワガママも一切言わなかった、今回は自由にさせてやろうかと思う。」
「分かりました。」
「今まで、本当にありがとうな。また行く気になったらお願いできるかな?」
「はい、もちろんです。」
「ほら、そろそろ行かないと遅刻するぞ。」
「あ!はい、いってきます!」
「ああ、いってらっしゃい。」
そう言って庄之助は正彦を学校へと送り出した。
正彦は、この日以降も何度も葉子の家へ通ったが葉子は学校へ行く事はなかった。
そして、しばらくすると葉子は体調が悪化し入院してしまった。
正彦は葉子のお見舞いに何度も病院へ通ったが、葉子には歓迎されず。
また正彦も学業に追われ、次第にお見舞いに行く事が減っていった。
そして日が経つにつれて正彦は葉子を気にする事も減っていった。
それから、10年の月日が流れた。
つづく
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