第78話告白合戦

「ダメだ、ダメだ、ダメだ。

 皇子殿下であろうと、後からしゃしゃり出てきてもらっては困ります。

 俺はずっとラナの事が好きだったのだ。

 ラナと結婚するのは俺だ。

 ラナ、もう知ってくれているとは思うが、ずっと好きだった。

 どうか俺と結婚してくれ」


 誰が知っていたというのですか?

 そんな事は全然知りませんでした!

 急に変な事を言うのは止めてください、ダニエル!


「そういうお前も、弟のくせにしゃしゃり出てくるんじゃない。

 ラナの事だから、私やダニエルの気持ちには気がついていなかったんだろ?

 ラナが気付いてくれるまでは、自然に任せるつもりだった。

 自分から告白するつもりはなかったのだが、ヨジップ殿下がプロポーズされた以上、もう黙っているわけにはいかない。

 私もラナの事がずっと好きだった。

 真剣に結婚の事を考えてくれないか」


 イヴァン!

 貴男もですか?!

 貴男も私の事を好きだったというのですか?

 私は、イヴァンの気持ちも、ダニエルのアピールも、全く気がつかない鈍感だったというのですか?


 なにか、落ち込んでしまいます。

 私はそんなに鈍感なのでしょうか?

 とても女子力が低いのでしょうか?

 それで乙女心が疼くと考えていたなんて、恥ずかし過ぎます。

 でも、それでも、そう簡単に恋する気持ちを諦めたくはありません。

 だって、婚約者に別れを告げてまで冒険者になったのですから。

 命を賭けて、我儘を言っても許されるだけの、努力をしてきたのですもの。


「待ってください。

 私が鈍感だという事はよくわかりました。

 ですから、イヴァンとダニエルの告白には、とても驚いています。

 ヨジップ殿下の告白にも、いえ、皇室の意向にも驚いています。

 正直、直ぐに答えを出せません。

 どうか家族と相談する時間をください」


 時間稼ぎをしても、どうなるものでもないのは、分かっています。

 家族に相談するとはいっても、頼りになるのは母上だけでしょう。

 独身で恋愛経験のない妹達に相談しても、役に立つ話を聞けるとは思えません。

 まあ、母上に相談できるのは、身分に関係ない純粋な恋愛話ですね。

 皇室と城伯家の縁組の大変さ、政略結婚については、母上には分からない事です。


 でも、それでいいと思うのです。

 私は政略決婚がしたくて、命懸けで戦ってきたわけではありません。

 皇族になりたくて、属性竜を狩ったわけではないのです。

 最初は、家族にお腹一杯の食事をさせたくて、冒険者になったのです。

 ある程度稼げるようになってからは、妹達に好きな男性と結婚できるようにしてあげたくて、頑張ってきたのです。

 そう考えたら、私の選ぶべき道がはっきりしました!

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