第22話告発状

 告発状


 この者達、下劣非道の犬畜生以下である!

 夫を冒険で亡くし、女手一つで必死に娘を育てる母を襲った。

 しかも、事もあろうに、騎士団軍務中に騎士装備でだ!

 しかも暴行を隠蔽するために、幼子二人も殺そうとした。

 これは騎士団が、皇帝陛下の命で女子供を襲ったも同然だ!

 この命令は、本当に皇帝陛下の命令で行われたのか?

 それとも魔都城代の命令で行われたのか?

 そもそも騎士団も徒士団も、皇帝陛下の民を護るために存在する。

 皇帝陛下がこのような蛮行を命じられたとは思えない。

 よってここに城代を告発する。

 城代は皇帝陛下の恩名を穢す、無能下劣不忠の大姦賊である!

 そして皇帝陛下の民として宣言する。

 今度同じことが行われようとしたら、責任者も私刑にする!


 今回は警告として、実行犯のみ私刑を下す。

 ひとつ、四肢の関節を粉砕する。

 ひとつ、耳、鼻、指、陰部を斬り落とす。

 ひとつ、斬り落とした耳、鼻、指、陰部を喰わせる。

 ひとつ、眼を潰す。

 ひとつ、肛門から杭をを打ち込む。

 ひとつ、殺さずに晒し者にする。

 ふとつ、助けようとしたモノは、一味同心とみなし私刑にする。


 ドウラさんの私刑は激烈です。

 私だけでなく、男性団員まで参加させなかった理由の一つでしょう。

 でも一番の理由は、他の団員を巻き込まないためですね。

 ここまでやったのです。

 魔都の城代を名指しで批判したのです。

 その報復は激烈なモノになります。


 ドウラさんの事ですから、勝算のない戦いはされないと思います。

 必ず勝てると踏んでの行動でしょう。

 ですが物事に絶対はありません。

 僅かな敗北の可能性を考慮して、私達を安全な位置に置いてくれたのです。

 本当に男前な方です。

 私もドウラさんのような男前な冒険者になれるでしょうか?


 事はドウラさんの目論見通りになりました。

 やはり裏でも動いておられたようです。

 それには私の義父上もゲイツ家もかかわっていたようです。

 更には、ドウラさんの集める良質な素材に頼るようになった、魔法薬職人や魔法薬商人、魔法薬に頼っている疫病発生地帯の貴族士族が、即座に皇帝陛下や重臣に働きかけたのです。


 魔都城代はドウラさん暗殺に動きませんでした。

 いえ、動けませんでした。

 今迄騎士団徒士団の暴虐に苦しんでいた、魔都の住民と冒険者が、ドウラさんという圧倒的な力を得て蜂起したのです。

 ゲイツクランの奔走で略奪や破壊は止めましたが、魔都内にある魔城を包囲して、城代の処罰を訴えたのです。


 城代は騎士団徒士団を動員して討伐しようとしましたが、騎士団徒士団は命令に従わず、城に籠って一歩も出ませんでした。

 余りに激烈な私刑に恐れおののいたのです。

 魔城の内外で睨み合いが始まって十日、皇都から勅使がやってきました。


 

 

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