第23話親子出仕

「よお、久しぶりだな」


「「兄上!」」

「マルティン様!」


「よう、坊主。

 ジョージとは別々か?」


 とても驚きました。

 王都にいるはずのマルティン様が、魔都にいると誰が思うでしょう。

 まあ、王都から魔都に来られたという事ですが、単にゲイツクランを見に来たというはずがありません。


 皇帝陛下が派遣された勅使の供をしてきたのでしょうが、普通なら後継者のマルティン様ではなく、現役当主のジョージ様がお供に選ばれるはずです。

 ドウラさんが何の動揺もされていませんから、ジョージ様が病や怪我という事もないでしょう。

 いったい何がどうなっているのか?


「一緒ですよ。

 勅使様と父は、魔都城代と責任者達の処分に奔走しています。

 私はドウラさんとの話し合いを任されました。

 魔都城代と責任者の処刑で引いてもらえませんか?」


「隠蔽が行われたりしないだろうね?

 貴族や重臣の縁者が見逃されたりしたら、私刑を続けるよ。

 そんなことになったら、皇帝陛下と皇国の威信は地に落ちるよ?」


 ドウラさんは凄すぎます。

 皇帝陛下と皇国相手に一歩も引きません。

 私にはとてもできない事です。


「その心配はいりませんよ。

 今回の件は、皇帝陛下も重臣の方々も、とても重く見ています。

 次にいつ厄竜が現れるか分かりません。

 今はドウラさんの狩ってくる素材を失うわけにはいかないのです」


「だが、それでも、私は私で独自に調べ続けるよ。

 ジョージやマルティン坊を頭から信用信頼しないよ」


 凄いです!

 ドウラさんが皇帝陛下と皇国を動かしました。

 一生ドウラさんについていきます。

 絶対にドウラさんのような冒険者になって見せます。


「分かっていますよ。

 ですが時間がありません。

 こういう事は即断即決しないと多くの横槍が入ります。

 ドウラさんの持っている証拠を見せてもらえませんか。

 それをもとに処刑を断行しますから」


「確かにマルティン坊の言う通りだ。

 腐れ外道共を全員処刑してくれるなら問題はない。

 だが渡すのは写本だよ。

 原本は渡さないよ」


 ドウラさんは慎重ですね。

 ジョージ様やマルティン様が相手でも完全に信用されません。

 私もこれくらい慎重にならなければいけませんね。


「分かっていますよ。

 私も見習いとはいえ徒士目付のお役をいただきました。

 証拠を手元から奪うような隠蔽工作はしませんよ」


「ほう、親子出仕かい。

 だが謁見待遇じゃないんだね。

 ジョージはどんな役目をもらったんだい?

 目付にでも栄転させてもらえたのかい?」


 凄いです!

 今の皇国で、親子揃って役目につけるのは、よほどの権力者だけです。

 まあ、専門職の場合は、無給で見習出仕させることはありますが。

 マルティン様はどうなのでしょうか?

 無給で働かされているのでしょうか?

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