第10話殺人訓練

 私の生活はは、王都にいた頃の生活から激変しました。

 パーティー鍛錬訓練中も違っていましたが、魔都についてからの変化は想像以上で、戸惑う事ばかりです。


 食事に関しては、普通の貧乏徒士家、家族よりも遥かに恵まれていました。

 家族が月一度魚の干物が食べれればいいところを、三食魚が食べれていました。

 ですが、鍛錬訓練旅行中から、肉が主食になりました。

 冒険者の食糧は現地調達が基本です。

 水と非常食以外の米や麦は、余計な荷物になるのです。

 それでなくとも冒険者は一日四リットルの水が必要なのです。

 それ以外の荷物は極力減らしたいのが現実です。


 だから肉も、極力焼かずに水分が多い状態で食べます。

 味付けも薄くしないと、体内の塩分や糖分の濃度が高くなり、ホメオスタシスを一定にするために喉が渇きます。

 全てドウラさんの受け売りで、覚えたばかりの知識です。

 私もイヴァンもダニエルも、ドウラさんの知識と経験を貪欲に吸収しています。


 些細な事のようですが、どの獣や魔獣から食べるべきなのか。

 素材として売った方がいいモノと、自分達ように消費すべきもの。

 水場の確認と、毒などの確認と解毒方法。

 腹立たしい事ですが、同じ冒険者を狙う外道が多いのです。

 特に皆がどうしても必要な水場に細工する、腐れ外道がいるのです。


「殺せ!

 怯むな!

 ここで殺さないと他の人間が殺されるよ!

 父を、兄を、子供を殺される者がいるんだよ!

 容赦せずに殺しな!」


 初めて冒険者狩りの外道と出会った時、一瞬攻撃を躊躇ってしまいました。

 そんな私に、ドウラさんの檄が飛びました。

 口を動かしながら、同時に投擲も行い、外道共を確実に殺してきます。

 エマとニカは既に魔法攻撃で数人殺しています。

 イヴァンもダニエルは私よりも先に飛び出しています。


 私も負けられないと思った時には、外道共に向かって駆けていました。

 冒険者狩りをするような連中です。

 人数も多く集めています。

 あの時は三十七人だったはずです。

 私は、ここで殺人を経験する。

 そう決意して外道どもの中に突っ込みました。


 後で聞いた話では、あれはドウラさんの仕掛けた罠だったそうです。

 適当な外道共を誘い出して、私たちに殺人を経験させたかったのだそうです。

 同時に、許し難い外道共を潰していく始まりだったそうです。

 魅力的な女が三人。

 特にエマとニカは魔術師です。

 誘拐出来たら大金になります。


 冒険者として経験を積む前に、襲ってしまおうと外道共が考えるように噂を流し、誘いをかけたのだそうです。

 そしてドウラさんが外道狩りをしている事を気づかれないように、殺した外道共の身ぐるみを剥いで、遺体は魔獣の餌にしました。

 撒き餌です。

 外道共の遺体で誘い出した魔獣を狩るのです。

 楽に多くの魔獣を狩ることができました。

 ドウラさんだけは絶対に敵に回さない。

 私だけでなく、イヴァンもダニエルも改めて強く誓ったそうです。

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