第11話送金

「ラナ。

 家族に送金したいのは分かるが、今は貯金しときな。

 これからどんどん強い魔獣を狩る。

 今の装備じゃ死ぬことになるよ。

 素材は自分達が狩ったものを持ち込めるから、仕立て代だけですむが、それでも馬鹿にならない金額になるよ。

 もう半年待ちな。

 半年待てば、小遣い銭で家族に王侯貴族の生活をさせられるよ」


 ドウラさんは何でもお見通しです。

 私が今日までの稼ぎを家に送金するか迷っていると、声をかけてくれました。

 でも、小遣い銭で家族を養える?

 王都にいる頃に聞いたら、下手な冗談だと思っていました。

 今でも他の人が言ったら絶対に信じません。

 でも、ドウラさんが断言するのなら信じることができます。


 鍛錬旅程の間ですら、一日の手取りが四千小銅貨はありました。

 六十日で二十四万小銅貨です。

 それだけで義父の年収六年分です。

 魔都に来てからは、一日の手取り平均が八万小銅貨で、今日までに二百四十万小銅貨を手に入れました。

 あわせて二百六十四万小銅貨の貯金があります。

 

 まあ、万を超えた時点で冒険者ギルドの支払いが小金貨になりますから、金貨二百枚と銀貨銅貨を沢山を持っています。

 もっとも、盗まれてもいけませんから、冒険者ギルドとクラン、それに王国に預けています。

 一番信用できる王国にお金を預けられるのは家臣の特権ですが、その王国ですら一つ間違えば接収する可能性がありますから、恐怖感もあります。


 どれほど装備が大切でも、少しくらい家族に送ってもいいと思うのですよ。

 端数の四万送るだけで、義父の年収と同じなのです。

 妹達に晴れ着の一枚も買ってやれます。

 腹六分目ではなく、満腹になるまで食べさせてあげたいのです。

 そんな気持ちが顔に出てしまっていたのですね。


「仕方のない奴だね。

 まあ、家族の事情は聞いているし、あのヴィクトルとペタルの子供達がひもじい思いをしているのも嫌だしね。

 鎧と剣の仕立料金は絶対に残しておきな。

 できれば早いうちに魔法袋は買っておくべきなんだがねぇ。

 それと飛脚は六小銅貨の並便にするんだよ。

 無駄金は小銅貨一枚だって使うんじゃないよ。

 小銅貨一枚がなくて、いい鎧が買えなくて、魔獣に殺される奴だっているんだよ。

 それと金は送金料のいらない王国の為替を使うんだよ。

 王国には安い金でこき使われているんだ、使えるところは全部使いな」

 

 本当にドウラさんは口が悪いです。

 王家批判のような事を口にしたら、下手をしたら不敬罪で死刑です。

 まあ、魔都に来て、冒険者ギルドの食堂で思い知りました。

 王家王国が冒険者達からは忌み嫌われている事を。


 本当にゲイツクランに入れて貰えてよかったです。

 ドウラさんのパーティーに押し込んでもらえなかったら、私は自害していたかもしれません。

 それくらい冒険者のモラルは低いです。

 ディミタール先生にはどれほど感謝しても感謝しきれません。


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