第9話意識改革

「お前と、お前と、お前。

 荷物持ちについてきな」


「おい!

 新入りが何を勝手なこと言ってるんだ!

 いくら初代の友達だからといっても、部外者は黙っていてもらおうか!」


「冒険者は実力主義だ。

 身体に分からせてやるよ。

 まとめてかかってきな!」


「「「「「後悔しろ!」」」」」


 え~と。

 今更説明も不要だと思いますが、ドウラさんは、ゲイツクランのクラン長以下の幹部をまとめて叩きのめしました。

 まあ、現役冒険者で、道場の門弟ですから、初代クラン長で初代道場主の友人、いえ、クラン創設メンバーのドウラさんに叩きのめされたら、内心はともかく表面上は従いますよね。


「いいかい!

 性根入れて聞きな!

 ゲイツクランは他のクランとは違うんだ!

 ゲイツ道場の門弟で構成されているんだ!

 誇りを持った狩りをしなけりゃあならんのだ!

 今のメンバーは、創設精神を忘れている!

 今から聞かせてやるから、耳かっぽじいて聞きな!

 ゲイツクランは、病気やケガで苦しんでいる人たちに、良質な魔獣薬を届けるために創設されたんだ! 

 自分が強くなりたいとか、強い魔獣を斃したいとか、そういうのは二の次三の次なんだ!

 特に今は厄竜の影響で質のよい魔獣薬が払底している。

 少しでも状態のいい素材を手に入れることが、ゲイツクランの役目だよ!」


 ああ、皆何も聞いていなかったのですね。

 目から鱗が落ちたような表情をしています。

 まあ、なかには今でも不服そうなメンバーもいますが、それは仕方ないです。

 冒険者ギルドで聞いたように、二度の厄竜災厄の時に伝承できなかったのです。

 イヴァンは今までの自分を恥じるような目で見ています。

 ダニエルは決意に満ちた目をしています。


 まあ、それからの事は、詳しく説明する必要もないでしょう。

 ドウラさんが目の前で手本を見せて、詳しくその理由とそれによってもたらされる金銭的な利益と、その結果作られる魔獣薬の治療効果を説明して、どのような人たちが救われるかを教える。

 即物的な利益と内心の名誉誇りを刺激する。

 ドウラさんは人を使う天才かもしれません。


 ドウラさんは、今迄のクラン役職を崩すことなく、クランの実権を握りました。

 クラン長の上に、総クラン長という役職を作ったのです。

 クラン長の座を奪ったら、反感を持つ者もいたでしょうから、いいやり方です。

 修行のために勘当されているとはいえ、イヴァンとダニエルがゲイツ一族です。

 彼らが推薦すれば認められる可能性は元々強かったのです。

 初代の戦友であり、孫の生死まで任されているのです。

 しかも実力で全幹部を叩きのめしています。

 当然の結果でしょう。


 ああ、私を含めたイヴァンもダニエルも平クラン員です。

 技はともかく、魔獣を斃していない私たちには、身体強化がないので、歴戦のクラン員には勝てません。

 それが、現役クラン員の誇りを護ったのでしょう。

 クランは血統関係なしの実力主義。

 ただし誇りと名誉を護った狩り方をする。

 これがゲイツクランの根本理念となりました。

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