第6話実戦経験

 パーティーを結成した私たちは、パーティー名を「破竜隊」としました。

 かなり大げさな名前ですが、ドウラさんは本気のようです。

 それはイヴァンとダニエルへの対応に見えます。

 二人にパーティーに入りたいのなら、ゲイツ騎士家からでろ、平民になれと言い放ったのです。

 冒険中、特に狩りの間に何かあったら、問答無用で殺すという決意の表れです。


 私は二人が断ると思っていました。

 流石に条件が厳し過ぎます。

 ですが、二人とも平民になる条件を受け入れました。

 ゲイツ騎士家もそれを認めました。

 そして私にも、二人の事を呼び捨てにするように、厳しく命じたのです。

 最初は戸惑いましたし、なかなか尊称が抜けませんでしたが、街道沿いで狩りを続けるうちに、徐々に呼び捨てにできるようになりました。


 その街道沿いでの実戦訓練ですが、ゲイツ騎士家が王国に申請してくれました。

 普通は誰かの所有地での狩りなどは絶対に認められないのですが、今は獣が跳梁跋扈して畑を荒らしているのです。

 街道の安全を確保するために、街道沿いの土地だけは、王国軍将兵と冒険者だけは、事前に申請を出しておけば狩りが許されているのです。


 許可を受けた私たちは、王都から魔都までの街道沿いで狩りをしました。

 魔都に入るまでに、実戦での連携を完璧にするためです。

 それとそれぞれの能力を伸ばすためです。

 特にドウラさんが拘ったのが、前衛職である私、イヴァン、ダニエルの偵察能力、斥候能力です。


 今は熟練斥候のドウラさんが、完璧に獲物の動向を把握してくれています。

 完璧に獲物を追撃できています。

 せっかくの獲物を見逃すような事はありません。

 ですが、ドウラさんには後衛として投石してもらう必要があります。

 命中率と破壊力と補給を考えれば、ドウラさんには後衛攻撃に専念して欲しいのですが、今の私たちの斥候能力では、ドウラさんに偵察してもらうしかありません。

 特に罠があるダンジョンでは、ドウラさんの偵察能力が生死を分けてしまいます。


 なので私たちは、ドウラさんのわずかな反応も見逃さず、素早く入れ代わられるように、実戦経験を積んでいるのです。

 ドウラさんが敵の存在を感じたら、私たち前衛三人が前に出て敵の襲撃に備える。

 それが魔獣であろうと、パーティーを襲って獲物を横取りしようとする、悪質冒険者であろうとです。


 だから急げば十五日で辿り着く王都から魔都までの旅を、六十日もかけて移動したのですが、意外と稼ぐことができました。

 ドウラさんが利益の多い獣を選んでくれたことと、高値で購入してもらえる狩り方と解体方法を伝授してくれたことにあります。

 そして街道にある宿場町が、適正な価格で買い取ってくれたからです。


 

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