第4話パーティー結成

「ラナ!

 そこに猪の痕跡が残っているよ。

 よく覚えておきない」


「はい、ドウラさん」


「イヴァン!

 ダニエル!

 無理矢理ついて来たんだから、もっと真剣に覚えな!」


「はい」

「分かっているよ、ドウラ」


「はい、ドウラさんだ、ダニエル!

 石は後ろからでも飛んでくるんだよ!」


「……はい、ドウラさん」


 え~と、何をどこから話せばいいか困るくらい、一度に多くの事が起こりました。

 順番に話すなら、私のパーティーが決まったところからですね。

 私のパーティーは、魔都ですでに活動している既存のパーティーではなく、王都で新たに結成されるパーティーとなりました。


 ですが全くの新人ばかりというわけではありません。

 初代道場主で冒険者でもあったディミタール先生が、冒険者であった時代にパーティー仲間だった、ドウラという女斥候がリーダーをするのです。

 しかも千人に一人しかいない魔法使いが二人も加わるのです。

 もっとも、このパーティー自体が、ドウラさんが可愛い孫に、安全に実戦経験を積ませるために結成されたのです。


 ドウラさんは他のメンバーを魔都で集めようと考えていました。

 古豪といえるドウラさんに二人の女魔法使いが加わるのです。

 女であることで苦労している冒険者が直ぐに集まると、ドウラさんは考えていたそうですが、その話をディミタール先生が聞きつけ、私を推薦してくれたのです。

 ここまでなら、私も話すのを躊躇ったりはしませんでした。


 問題は男のパーティー参加希望者が現れた事です。

 しかもただの相手ではありません。

 道場主であるジョージ先生の次男イヴァン師範代と、三男のダニエル師範代が一緒に魔都に来ると言いだしたのです。


 話がとてつもなく大事になりました。

 イヴァン師範代は天才で、純粋な腕だけで言えば、兄であるマルティン師範代を超えると言われています。

 厄竜の災厄で混乱する王国では、騎士も徒士の強い当主が求められています。

 養子候補として引く手あまたなのですが、それが冒険者になるというのですから、先生の家がもめるのも当然です。


 しかもそれに三男のダニエル師範代まで加わるのです。

 ダニエル師範代は少々遊び癖があり、私は苦手なのですが、腕は確かです。

 天才のイヴァン師範代や、生真面目に鍛錬を続けられるマルティン師範代には及びませんが、それでもそこらの剣客に勝る腕をお持ちです。


 ですがそれはゲイツ騎士家の家内問題でしかありません。

 一番の問題は、女だけのパーティーを結成しようとしていたドウラ殿をどう説得するかです。

 これが一番大きな問題だったのです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る