第9話 戦闘(告白)前夜

 初めてのサバゲ。

 哲也は体中が悲鳴を上げるのを感じた。

 運動部などに所属した経験の無い彼にとって、丸一日のサバゲは酷く身体を酷使したのだ。

 ガン好きなので、当然ながら、ガンアクションのある映画は見るし、自衛隊や軍隊の情報などもそれなりに吸収している。

 だが、頭で分かっているのと、それを体で再現するのは大きく違う。

 日頃から絶え間なく訓練している人間と同じように体が動くはずがない。

 つまり、サバゲ経験者を前にして、哲也は無力であった。

 このままでは彼はサバゲに勝つ事は出来ないと感じた。

 だが、それは彼女達に敗北をする事になる。

 何故だか、それだけは阻止せねばと思った。

 幸いにもエアガンだって、それなりに集めている。

 本当はモデルガンの方が好みなわけだが、エアガンでしか出てないモデルもあったりするからだ。

 今更ながら、射撃の練習をする。

 撃ち方なら、今どきは動画でもトップシューターの射撃だって見られる。

 実際はスポーツと同じで撃った数が物を言うが、時間が無い。今は色々と参考にして、撃つだけだ。

 

 同じ頃、摩耶と詩織も練習に励んでいた。

 知識も経験も無い彼女達にとって、指導してくれる先輩ゲーマー達の言う事を全て聞き入れる事が全てであった。

 そのせいか、意外にも上達は早かった。

 元々、活発な摩耶は特に上達が早く、射撃精度も動きも格段に良くなっていた。

 彼女達を教えるネムも満足そうであった。

 「これなら明日は、告白が出来そうだね」

 ネムに言われて、詩織は顔を真っ赤にする。今回の目的はチーム全員が知ってるとは言え、言われると恥ずかしいのだ。

 「ははは。詩織ちゃんは体力が無いから後方で待機して、来た敵を狙撃すると良い。スナイパーって役目ね。摩耶ちゃんは足が速いし、体力もあるから前にガンガン出て行こうね」

 「はい」「わかったでぇ」

 この調子なら、明日は勝てる。摩耶と詩織は自信に溢れた。

 

 互いに最終調整をして、翌日の本番を迎えていた。

 何が起きるか解らぬ哲也と告白をすると心に決めている詩織と摩耶。

 そんな気持ちを両陣営は半分、面白がっている。

 所詮はサバゲは遊びだ。どんな目的があろうと、楽しめなければ意味が無い。

 そんなこんなで当日を迎えたわけである。

 サバゲフィールドに車で到着するとすでに来ていた人々で和気藹々な雰囲気であった。

 食事はフィールドに隣接するバーベキュー場があるので、そこで食事の用意も始まっていた。

 ネムは自分の車で摩耶と詩織を連れて来た。

 「おっ、盛況だね。やっぱ、人数が多いゲームは楽しそうだね」

 ネムは楽しそうに自分の装備を降ろす。その間に詩織達は緊張しながら、更衣室へと向かう。

 最近のフィールドは更衣室も完備している事が多い。更衣室が無い場合は車などでカーテンで覆ったり、そもそも最小限の着替えで済むようにミリタリールック風にして、訪れるなどがある。

 女性ゲーマーはここで着替えをする。私物は盗難の怖れがあるので、鍵付きロッカーが完備されていない限りは車などに保管するのが好ましい。

 「野外でも更衣室がある所はありがたいわね。トイレも無い所があったりするから」

 それを聞いた詩織が驚く。

 「トイレが無かったらどうするんですか?」

 「近くのコンビニね。それも無いような田舎のフィールドは女性では行き辛いわね」

 「確かに・・・」

 どうしても広大な場所が必要な遊びである為、色々と難しい事が多いのだと詩織は理解した。

 持ち込まれたエアガンのレギュレーションチェックが始まる。

 主にパワーチェックがメインとなる。弾速測定器で初速が測られる。

 そして、レーザーポインターなどの装備である。基本的に視力に影響を与える可能性のあるレーザーポインターの使用は禁止される。それと不用意な誤解を与えるゴムナイフなど。

 このフィールドでは多量のBB弾を放出するランチャーや手榴弾、地雷なども使えるが、室内フィールドなどでは不可とされている所もある。

 服装に関してはゴーグルは絶対であり、それ以外は自由である事が多い。しかしながら、イベントなどに応じて、ナム戦装備などの縛りがある場合がある。

 ただし、山のフィールドなどでは蛭やマダニの危険性から肌の露出を減らす方が良かったりする。あと至近距離での交戦が多い室内フィールドではケガを防ぐ為、ゴーグル以外に顔や耳などを保護するプロテクターもあると良いだろう。

 今回は切り開いた場所がフィールドなので、全てがほぼ自由であった。

 多くは迷彩柄であるが、中には背広や何かのアニメかゲームのコスプレをしている人もいる。雑多な感じであった。ただし、大抵のサバゲではこれが普通であり、軍隊のような統一感はチームで統一でもしてない限り、少なかった。

 摩耶も詩織も極ありふれたウッドランドパターンの迷彩柄であった。それ以外はデジタル迷彩が多く、PMCのような無地の物も多かった。

 レギュレーションチェックが終わると、いよいよ、ゲーム開始の準備が始まる。

 ゲーム開始5分前になると互いのチームに分かれて、作戦会議が始まる。

 フィールドの地図を前にどうやって戦うかを決めるのだ。

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ガンコイ 三八式物書機 @Mpochi

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