第7話 これがサバゲか
哲也は初めて、サバゲフィールドをじっくりと眺めた。
自然を活用したフィールドだが、開けた場所には合板などで作られた壁やドラム缶などが置かれている。
「結局、哲也は全部ガテン系で揃えたか」
店長は哲也の恰好を見る。
「まぁ、折角、買うならサバゲ以外にも使える物の方が都合が良かったので」
哲也からすれば、サバゲにそれ程の興味など無いので、買うとしても普段使いが出来る物の方が良かっただけだ。
「良いんじゃね?最近はスポーツ感覚だったりするし。それにPMCだと言い張れるしな」
「PMCですか」
気乗りしない哲也だが、他の人の装備などを見ていると段々、楽しくなってきた。
フィールドに集まったのは全部で8名。
サバゲとなれば、平均的に集まる数だと店長は言う。
「じゃあ、4対4で分けようか。哲也君、君は黄色ね」
哲也に渡されたのは黄色のテープであった。
「これは?」
哲也は店長に尋ねる。
「識別マークさ。俺らはこうやって、マジックテープとかの奴を持ってるけど、お前さんは無いから、それを両腕に巻くのさ。同じ色の奴は味方って事だ」
「なるほど」
哲也は言われた通りに両腕にテープを巻き付ける。
その間に弾速チェックも行われる。
哲也も使う銃を持って、弾速チェックの列に加わる。
弾速チェックは専用の測定器を用いる。測定器の上を一発、撃って、その弾速を測るのだ。これが許容値を超えている場合は使用不可となる。因みに専用の測定器が無い場合は空き缶などを撃って、その凹み具合で測る事も場合もある。
「哲也君のはノーマルばかりだから、心配ないねぇ」
測定器を操作する前田が笑いながら言う。
「やっぱり改造とかするとパワーが上がるんですか?」
「うん。パワーを上げるのが、弾道の安定などの性能アップに繋がり易いからね」
「あんまり上げると危険じゃないですか?」
「だから、こうして、弾速をチェックするのさ。あと、うちは基本的に0.2g弾しか使えないしね」
「重たい弾だと何か違うんですか?」
「ガンマニアなら解るでしょ?弾頭の重量が重くなると同じ力で飛ばしても当たった時の威力が高くなるのさ」
「なんで重たい弾を?」
「まずは弾道が安定する。風などにも強くなるから命中率は高くなる。だからスナイパーは使いたがるね」
「なるほど」
「実際にボルトアクションのスナイパーには認めているフィールドもあるから」
「はぁ・・・」
「スナイパーには興味がない?」
「スナイパーライフルには興味がありますが・・・」
「なるほど、ガンマニアらしい答えだね。サバゲが楽しくなると、興味が湧いてくる事もあるさ」
弾速チェックを終えて、それぞれのチームに分かれる。
哲也が分けられたイエローグループはラットとみやっちと間島だった。
「最初に挨拶した奴等が同じグループになったな」
みやっちは爽やかな笑顔で言う。
「す、すいません。初心者じゃ、足手纏いで」
哲也はすまなそうに言う。
「ははは。何を言ってやがる。撃ち合いを楽しむために来てるんだ。勝ち負けより、相手を一人でも多くヒット出来る事を楽しめよ」
みやっちは豪快に笑う人だった。ナム戦装備のラットさんは暗い表情のままだが、どうやら、元々、こんな感じの人のようだ。彼はボソリと言う。
「まぁ、サバゲで勝ち負けはオマケさ」
「そうだよね。まずは走り回って、撃ち捲る。それが快感って奴さ。俺が君のサポートするから頑張ろう」
間島が頼りがいのある感じに言ってくれるので、哲也は少し安堵した。
ゲーム形式はフラッグ戦。
互いの陣地にある旗。ここでは防犯ブザーを鳴らす事で勝敗が決まる。
サバゲでは最も基本的な形式となる。
「4人だから、攻守を分けるのが難しい。誰かがフラッグを守り、残り3人で攻めて行くのが基本かな」
みやっちが作戦を考える。
「誰を残すかだが・・・ラットさんでいいかな。どうせM60使いたいでしょ?」
みやっちに言われて、ラットはほくそ笑む。彼の傍らにはM60軽機関銃が置かれている。アメリカ軍が採用していた軽機関銃でベトナム戦争で主に使われた物の電動エアガンである。金属部品を多く用い、実銃同様に重たい物であった。
「ここでは一人が持てる弾数は300発だけど、軽機関銃だけは1000発だから。弾幕を張れる分、守りには適している」
「なるほど・・・持てる弾数で銃の不利を補うんですね」
哲也は感心した。
「そうしないとデカブツを持ってる奴は何ともならなくなるからね」
みやっちは丁寧に哲也にルールを教える。
「エリアはこうなっている。一番外側には縄が張ってあるから、そこから外には出ないこと。意外と狭いから、すぐに縄に阻まれると思うから」
間島が更に説明を付ける。
「当たったら、大きな声でヒットと叫ぶんだよ。そして、両手を大きく挙げる事。その辺がちゃんとしてないと、ゾンビと間違われるか、余計に撃たれる羽目になるから」
それを聞いたみやっちが笑いながら続ける。
「そうだな。因みにマナーとしては、ヒットした相手に無駄弾を当てない事」
それに哲也は少し頭を捻る。
「簡単な事だよ。トリガーハッピーになると、ヒットした後も撃ち続けちゃう人が多いからね。相手がヒットコールをしたら、すぐに引金を離すなり、銃口を他に向けるなりするんだよ」
「解りました」
哲也はアドバイスをしっかり聞きながら、覚えていく。
サバゲはあくまでも遊びだ。しかし、痛みを伴う。だから、マナーは大事であると哲也は感じた。
「さぁ、哲也君。ゲームの時間だ。用意はいいかな?」
みやっちに言われて、哲也はコクリと頷き、頭に掛けていたゴーグルをしっかりと目の位置の掛けた。
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