第5話 ミッションスタート!

 学校に通い、アルバイトに励み、趣味に没頭する。

 いつか、アメリカに行って、本物の銃に囲まれて、生活したい。

 出来れば・・・銃に係る仕事もしたいとか思っている。

 だから、懸命に英語を勉強している。やはり、ネイティブな英会話ぐらいは出来ないと、銃を取り扱うまでには至らない。

 そんだけ銃が好きなら、自衛隊や警察などでも良いじゃないかと言う人も居た。

 バカか。

 それじゃ、生涯に触れる銃は片手で数えるぐらいしか無いだろう?

 俺は銃が好きなだけで、別に自衛隊や警察などの組織が好きなわけじゃない。

 そりゃ・・・合法的に拳銃を街中で携えられる警察官とか、自衛隊みたいなのが嫌いでは無いけど・・・銃好きはやっぱり、色々な銃を触ってみたいと思うのが普通だろう。

 そんな事を思いながら、哲也は日々、過ごしている。

 今日もアルバイトに精を出していた。

 彼がアルバイトをするのは近所のガンショップである。

 ガンショップとは言うが、実際は玩具店である。ただし、モデルガンやサバゲに特化しており、アウトドアショップとしても近所では有名な店である。

 昔から通っていて、店主とも仲がいい為、ここでアルバイトをしている。

 銃に関しての知識なら得意だが、アウトドアに関してはあまり詳しくない為、客から尋ねられると困るのが玉に瑕であった。

 品出しをしていると、ピンポーンと自動ドアのチャイムが鳴る音がする。

 「いらっしゃ・・・」

 哲也が挨拶をしようとすると、そこには二人の女子高生が立っていた。

 「よっ!ここがあんたのバイト先なんやな!」

 摩耶が哲也を指差しながら大声を上げるので、卓也は露骨に嫌そうな顔をする。

 「おいおい。哲也くん。折角可愛らしい女の子が来たんだ。そんな顔で迎えるなよ」

 店長が笑いながら言う。

 「す、すいません」

 哲也はすぐに作り笑顔をする。

 「何か御用ですか?」

 「あんたに用があるんや!」

 摩耶が胸を張って、哲也に迫る。

 「はっ?」

 哲也はそれに気圧され、一歩、退きながら、驚く。

 「うちらとサバゲをせぇ」

 「サバゲ?」

 「せやっ。あんた、銃が好きなんやろ?だったら、あんたの好きなもんで勝負したる。その代わり、うちらが勝ったら、うちらの言う事を聞くんや」

 「はぁ?」

 哲也はイマイチ、理解が出来ない感じの表情を浮かべる。

 「トロいな。勝負して、うちらが勝ったら、言う事を聞くんや」

 「えっ・・・その・・・僕が勝った場合は・・・」

 「うっ・・・そやな・・・この子があんたの言う事を聞くでぇ」

 突然、たじろいだ摩耶は後ろで恥ずかしそうにしている詩織を指差す。その瞬間、彼女はあまりに驚いたのか「ええぇええ」と素っ頓狂な声を上げて、一歩下がり、後に展示してあったテントに躓き、派手に転んだ。

 哲也は派手に転んだ詩織のスカートが捲れ、白いパンツが露わになっているのを見てしまい、真っ赤な顔をする。

 「貴様!詩織のパンツを見たなぁ!」

 摩耶がそれに気付き、哲也の胸倉を掴む。詩織は慌てて、スカートを降ろし、真っ赤な顔で立ち上がる。

 「謝れ!パンツを見たの謝れ!忘れろ!記憶から消せ!」

 摩耶が哲也の胸倉を掴みながら、激しく振るう。

 「ま、摩耶ちゃん!恥ずかしいからっ!」

 詩織は真っ赤な顔をしながら叫ぶ。その光景を見ていた店長はニヤニヤしながら見ていた。

 「勝負せぇ!勝負や!」

 「し、しかし、僕はサバゲなんてぇ」

 哲也は揺さぶられながら、何とか断ろうとする。

 「いや、その勝負を受けなさい」

 そんな卓也に店長がそう声を掛けた。その瞬間、摩耶が揺さぶるのをやめる。

 「おっさん・・・話が解るな」

 摩耶が偉そうに店長に言う。

 「おっさん・・・まぁいい。哲也君。良いじゃ無いか。君もサバゲをやってみたら?」

 「で、でも・・・僕は・・・」

 「ガンマニアは解るけど、折角集めたエアガンだ。撃ってみて、楽しむ事もしてみたらいい。何事も経験だよ。少年」

 「はぁ・・・」

 店長の言葉に納得がいかない感じの哲也。

 「そや。経験や。兎に角勝負やで。私等が勝ったら、あんたが言う事を聞く事。あんたが勝ったら・・・詩織があんたの言う事を聞いたるわ」

 「ま、摩耶ちゃん」

 オドオドする詩織。

 「安心せぇ。どうやら、相手も初心者や。勝てるでぇ。こっちには強い味方が居るし、練習もしてるからなぁ」

 摩耶の自信満々の感じに哲也は困惑する。

 「安心しろ。少年。サバゲは集団でやるゲームだ。こっちも良いメンツを用意してやる」

 店長が何故か自身満々だった。

 「そうか。おっさん!えらい、自信があるみたいやけど・・・こっちは強いでぇ」

 摩耶は店長に対して、胸を張る。だが、店長も鍛えられた厚みのある胸を前に出し、仁王立ちする。

 「そうかい。だが、こっちも長年、サバゲをやってきて、酸いも甘いも味わった世代だからな。お子ちゃまが簡単に勝てると思うなよ」

 「なんやて?おっさん・・・若者の体力の前に跪かせてやるわぁ」

 何故か摩耶と店長の間に火花が散っている光景が卓也には見えた。

 「とにかく・・・勝負は来週や。ここでやるから、用意して来な」

 摩耶は封筒を哲也に渡し、去って行った。

 「ははは。騒がしい娘だったね」

 店長は大笑いをしている。哲也は封筒を開けて、中を見て、暗い顔をしていた。

 「店長、勝手に決めないでくださいよ」

 「バカ野郎。女の子相手に喧嘩を売られて、買わない奴が居るか。安心しろ。相手がどんな連中でも・・・サバゲ歴30年の俺が勝てないわけないだろ」

 「どんな自信ですか。それに僕・・・サバゲなんて・・・」

 「サバゲは未体験でもシューティングは自信があるだろ?だったら十分だ。自分を信じろ。お前は強いよ」

 店長にそう言われて、哲也は溜息をつくだけだった。

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