第2話 どんだけ銃が好きなんだ?

 最初に銃を好きになったのは幼少期だ。

 男の子なら、誰でも銃や剣と言った武器に憧れるはずだ。

 僕が銃を好きになったのも同じようなものだ。

 子どもの頃に見た刑事ドラマでカッコいい銃撃戦をやっていた。

 それを見て、一目で銃にハマった。

 銃は力の象徴だった。

 最初はただ、鉄砲なら何でもよかったと思う。棒切れを持って、チャンバラする友達の傍らで箒を構えて、バンバンって口で発砲していた。

 だが、徐々に物を知るようになれば、銃という抽象的な概念から、その物自体に興味が移って行く。

 銃の構造、種類、歴史。学ぶことは多い。

 様々な映画やドラマなどを見て、出てきた銃器をイチイチ、調べる。それを繰り返す内に銃について詳しくなっていった。

 知れば知る程、面白くなるのがこの世界の住人の悪い癖だ。

 やがて、生活の全般において、銃が無いとダメな人間になってしまう。

 傍らにあるタブレットには銃器の専門誌が数年分、入っており、いつでも閲覧が可能だ。部屋には買い集めたエアガンやモデルガンが並ぶ。 

 ガンアクション物の映画やドラマ、銃器に関する映像資料に関してまで揃った本棚。

 中学校に上がる頃にはどっぷりとガンマニアになっていた。

 だが、この頃にはこの趣味が他人には一切、理解がされないという事も心得ていた。ガンマニアなら、通るだろう一般人の冷たい目。

 銃が好きだなんて、言えば、人を殺したように見られる辛さ。

 そんな辛酸は知り過ぎる程、知っている。

 だから、他人には自ら、進んでは言わない。だからと言って、別に間違った事をしているわけじゃないという気持ちもあるので、隠すことはしない。そんな複雑な感じだ。

 

 なので、絶対に理解をして貰えない女子と話をしたいとは思わない。確かに、性的な事に興味が無いわけでも無いし、それなりに処理をせねばならぬ欲求も当然、持ち得ている。だが、それでも彼女を作ろうとなんて思わない。万が一にも彼女が出来たとすれば、まず、時間を奪われる。次にデートなどで余分な出費が生じる。実はここが一番大きい。

 現状でもアルバイトをして、お小遣いと合わせて、毎月の銃やミリタリー関係の専門誌の購入、モデルガンなどの購入、映画やアニメなど、投じる先は多く、男子高校生には限界に近いのだ。これ以上、何かに出費するなど考えられなかった。

 だから、好きだと言われて、悪い気はしないが、現実がそれを決して許してくれないし、女の為に自らの趣味を削るなど、考える事も出来なかった。


 「はぁ・・・しかし・・・これはモテ期と呼んでいいのだろうか?ひょっとして、これを逃すと俺に二度とモテ期は到来しないのか?」

 哲也は微かな不安を口にする。だが、それでも趣味を削ると思えば、考えは改まる。

 

 哲也が悶々としている時、告白をした詩織とその友人の宮本摩耶はカラオケボックスに来ていた。無論、歌う為では無い。おいおいと泣きじゃくる詩織を摩耶が慰める為だ。

 「あんのくそぼけぇ。こんなにカワイイ詩織が告白したっちゅーのに、銃が好きだぁ?頭にウジが湧いとるんちゃうかぁ?」

 泣きじゃくる詩織の頭を撫でながら、摩耶は怒りを口にする。

 「まぁやちゃん。そんな風に言わないで。向こうだって突然だったからぁ」

 詩織は泣きながら言うのを摩耶がギュっと抱き締める。

 「ほんまにかぁわいいなぁ。くそっ。あのぼけぇ。どうしたええやろか」

 僅かに流れる沈黙。摩耶が突然、閃いた。

 「そや!相手の土俵に上って、負かしてやったらええんちゃうか?」

 「どういうこと?」

 「せやから、相手が銃が好きって事は、あれや。サバゲ。知ってるか?」

 その問い掛けに詩織は首を横に振る。

 「サバゲっちゅーのはな。確か、玩具の鉄砲で撃ち合いするんや」

 「撃ち合い?・・・怖いよ」

 詩織は眼鏡を少しズラしながら涙を拭く。

 「あああん、もう!かわいいなぁ!安心せぇ。撃ち合いって言っても、玩具や怪我はせぇへん。ちょっとした運動みたいなもんやろ。知り合いにサバゲをやっている奴らが居るんや。そいつらに協力して貰って、あいつを誘い出して、決闘するんや」

 「け、決闘?」

 「そうや。銃か詩織を選ぶ決闘や。あいつの土俵でやったろうやないか」

 摩耶は熱く語る。

 「う、うん!まぁやちゃんがそこまで言うなら、私、頑張ってみるよ」

 「ほんまにエエ子やぁ!あんの野郎。徹底的に叩きのめしてやるからなぁ!覚えておけぇよぉおおお!ぼけぇえええ!」

 個室の外にまで響き渡る声を上げて、二人の作戦は始動した。

 

 そんな事が起きているとは知らず、哲也はいつも通り、SNSでフォローしている各有名エアガンメーカーの呟きを確認していた。

 「マジか・・・こんなマイナーなコンシールドガンがモデルアップされるのか・・・くっ・・・ブロバしないけど・・・手に入れねば・・・安いのだけが、せめてもの救いか・・・でも・・・昔の固定スライドガスガン並だな。最近、少なくなったので、感慨深い感じだ」

 哲也はとても興奮していた。

 そもそも実銃自体もマイナー気味で昨今のコンシールド、セルフディフェンス用に需要を満たしているだけの小型拳銃が形となって、触れるというのはエアガン、モデルガンの最もな醍醐味である。

 そもそも、銃好きな人の多くはエアガンを買っても、サバゲなどには行かない層がかなり多い。そうして、撃つのが好きというよりも二次元でしか見れなかった銃が手に触れる形であるという事が重要なのだ。

 無論、サバゲをやろうとすれば、仲間が一定数、必要で尚且つ、場所の確保など、普通の高校生には難しいという事も言える。

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