神の降りる空1-2



 スカルマスクでありベルカ・テンレンでもあるモノ――そのネフィリムは混乱していた。


 幼馴染みの少年からのメッセージはまだいい、無謀にもホシノ・ミツキを助けようとするのも彼らしい行動だ。しかし一直線に目的地を特定した経緯がわからなかったし、その目的地の選定にどんな根拠があるのかも不明瞭だった。

 彼の行動の邪魔はしない――気の済むまで行動させて適当なところで保護する腹づもりだった――方針はリョーマの無力さを前提にしていたから、あらゆる意味で彼/彼女のもくろみは破綻してしまっていた。

 どうしてわかるだろう、イヌイ・リョーマがよりによってカインが待ち受けている場所に到達するなどと。

 少しばかりお人好しが過ぎるオカルトマニアの少年が、名探偵張りの推理力を身につけたとでも言うのだろうか、と愚痴の一つもこぼしたくなる事態だった。


 そのように状況の推移を見守るスカルマスクがどこにいるかと言えば、地上から四〇〇メートルの高さの空だった。


 搭乗しているのはテンレン家が所有するヘリのうちの一機だったが、もちろん真っ当な飛行計画が出されている航空機ではない。

 元々、テンレンは秘密結社シャムロックの原型となった研究機関〈シャンバラ〉に参加していた研究者が中心となり財を成した一族なのである。商才のあった後継者によって世界でも指折りの資産家にまで成長したが、その本来の姿は異端科学に精通した現代の魔術師のそれに他ならない。

 スカルマスクの搭乗しているヘリも、異形のテクノロジーで何重にも存在が隠匿された機体であった――視認が難しくなる限定的な光学迷彩は最新鋭の軍用機並みだったし、虚空子回路エーテルサーキットによるステルス性はその比ではない。

 このヘリはレーダー波に検知されないばかりか、飛行音すら地上から確認できない。

 虚空子回路エーテルサーキットによる消音機構――機体の周囲、半径一五メートルほどの範囲で騒音を抑え込む異端科学の成果物である。

 正しく魔術的効能であるそれは、ネフィリム体の開発過程で得られたスピンオフのテクノロジーだ。

 常ならば自身の足で移動するスカルマスクがこの機体を用いたのは、目的地が僻地であり、ほとんど準備時間が確保できないのが原因だった。

 都市部ならいざ知らず、農地と山林、そして平屋建ての家屋があるだけの都市郊外となると、スカルマスクの機動力の恩恵はなきに等しい。横方向からの移動ではリョーマを捕捉する前に、カインに対応される恐れがあった。


 最初から監禁してしまえばこんな苦労はせずに済むのに、ギリギリまで見守ってしまうのは完全にベルカ・テンレンとしての甘さが原因であり自業自得もいいところだった。 

 上空からの偵察である程度、敵の布陣――不審な車両の数が多すぎた時点で黒と判断――を掴んだ後、スカルマスクが選んだのは上空からの奇襲だった。

 消音機構はヘリの飛行音を外部に対して隠蔽するから、ギリギリまで気づかれずに接近できる。

 人間の目でもリョーマが見える距離まで低空飛行で接近、あえて消音機構をカットして本来の騒音を外部に放出――自機の存在をアピールして注意を引く。

 スカルマスクが飛び降り次第、すぐにでも離脱するからできる行動だ。


「お嬢様、どうかご無事で」


 操縦席のシエランに言葉をかけられ、髑髏の死神は無言でうなずいた。

 果たして自分が連れ帰るのはあの少年だけなのか、知り合った少女まで含めるのか――答えの出ない問いかけを抱えたまま。

 ヘリのドアを開き、迷いなく飛び降りた。

 風を切って落ちる。

 上空から重力に任せた自由落下を行い、位置エネルギーを運動エネルギーに変換して。

 事前の計算通りの着地点――現時点でカインを構成する肉体の一つを完膚なきまでに粉砕。骨が砕けて肉が弾け内臓が潰れる不愉快な感触と共に、確保すべき少年を認識する。

 刃物が突き出されるよりも早く、銃口が彼に向けられるよりも早く、その身体を抱え上げて。

 跳躍。

 一跳びで群衆の頭上を飛び越え、二〇メートル以上も距離を取って着地。鳥居の前で彼を放り出すと、祈るように声をかけた。


「ここで大人しくしていろ」


 ヘリで少年だけを回収できたらよかったのだが、万が一、対空火器の一つもあれば狙い撃ちにされる。ゆえにまず彼/彼女がすべきことは残敵掃討であった。

 射手をすべて排除しなければ、安全にリョーマを逃すことさえ叶わない。

 そんな風にすでに今後のことへ頭を切り替えていた分、イヌイ・リョーマからの返答は予想外すぎた。


「悪ぃ、無理だ」


 分別が悪いにもほどがあった。

 声をかける暇さえなく、立ち上がった少年は山道を駆けていく。

 その後ろ姿が夕闇の中に消えていくように思えて。




――待って。いかないで。




 そんな風に声をかけられたらどんなによかったろう。しかし現実のスカルマスクは、外敵からの殺意を感知して自動的に動いていた。

 飛来した銃弾――猟銃から放たれた銃弾を弾き飛ばし、発射地点を音響探査で特定。

 銃弾の射線上にいたのはスカルマスクではなくリョーマであり、それは明確なカインからのメッセージだった。

 まずはライフル銃を持った射手から排除する。

 跳躍。

 一跳びで二十メートル以上離れた民家の屋根に着地、射手の眼前に躍り出る。

 引き金を引く暇を与えず、かぎ爪を一閃。

 ライフルを構えていた両腕を骨ごと切断しながら胸郭を深々と切り裂く。血を噴いて倒れる人影、視野に映る武器――セミオート式のライフル銃は狩猟用に出回っているもので、中古で安価に調達できるものだ。

 その気になれば自律機械兵器テクノゴーレムを投入できる敵にしては、あまりに貧相な火力だった。


――これは秘密結社シャムロックの計画ではなく、カイン個人の企みか?


 ベルカ・テンレンとして生きてきた一〇年間、一切〈シャムロック〉と関わりを持ってこなかったために、スカルマスクは現在の組織の内情に疎い。

 猟銃を取り上げて銃身を握り潰し、次の目標を視野に収める。

 跳躍――膝蹴りで顔面を陥没させた後、二人目の射手の心臓をえぐり取る。彼/彼女の腕の一振りで人体は容易く切断され、蹴り一つで胴体は破裂する。

 三人目――内臓破裂により即死。

 こぼれ出す鮮血を浴びながら、スカルマスクは嘲るように口を開いた。


「ずいぶんと安っぽいチープな罠だな、カイン。自主製作映画でも撮りたいのか?」


 呼びかけに答えるように、道をふさいでいる軽トラックの運転席から男性が降りてくる。洗いざらしのジャージ姿の中年男性で、ついさっきまでうつろな目をしていた人物だ。

 しかし今ではその表情は一変しており、別人のように生き生きとしている。

 ちょうどスカルマスクによって踏み殺された老紳士のように。


「やはり君たちネフィリムは人間ではないか。私を殺しても呪われることがないのだから」


 声音こそ異なるが、まったく同じ声の抑揚――それこそ異口同音としか言いようのない音を声帯から発する男。

 先ほどスカルマスクが殺したのもカインなら、今ここにいるのもカインであった。

 精神寄生体カイン。すでにその存在を肉体に由来しない自律型虚空子回路――怪異と同質のものへと昇華させた魔人は、他者の肉体を乗っ取り自らの手足へと作りかえる怪物だ。

 元々の人格は完全に失われ、入り込んだ精神寄生体によって操られる生ける屍ゾンビ――ゆえにスカルマスクは“カインの手足”への殺傷行為をためらわない。

 それは命ならざるもの、肉の形を保った傀儡にすぎないのだから。


「貴様は人の罪を喰らう化け物だ。世界大戦でどれだけの人間の命を啜り取った?」

「人が人を殺すのは世の習い、避けられぬ人の罪だろうに――潔癖症だな、君は」


 ESP能力を持った突然変異体、世界最古の超能力者という認識も間違いではないが、この怪人の実態からはかけ離れたものだった。

 果たして彼の起源が、本人がうそぶくとおりに紀元前の昔なのかすら定かではない。

 そんなものは誰にも確かめようがないからだ。

 殺せば殺すほど加害者に対して感染が広がる呪詛という寄生体と、発症した呪いによって意識を上書きされた宿主――それがカインを名乗る群体生物の正体だ。

 確かなのは彼が呪いに等しい存在であり、人が人を殺すのが世界の当たり前である限り根絶不可能な現象であることだ。

 冷戦期を通じて行われた東西陣営の諜報合戦で世界中に拡散したそれは、第一次冷戦終結後の地域紛争を通じてさらに蔓延しきった。前世紀の人口爆発と自動火器の普及が招いた虐殺の横行。その結果、おびただしい数に膨れ上がった殺人者という罪の群れ。

 それがカインであった。


「よもやこの人数すべてが殺人者というわけでもあるまい? 欺瞞だらけだよ、貴様は」


 ジャージ姿の男に拳を叩きつける。ぐちゃり、と血と脳漿が飛び散った。

 頭蓋骨ごと脳組織を破壊する拳打――加減してなお、容易く内臓を破裂させ骨を粉砕する打撃。

 おのれの拳で頭の弾けた死体を作りながらスカルマスクが吐き捨てる。カインという病魔の“繁殖”に用いられるのは殺人者だけではないのだ。

 スカルマスクの言葉に、また別の“カイン”が声を発して応じる。


「恐怖領域で精神を打ち砕かれた人間は空の器だ。であれば、私が入り込む余地がある。それだけのことだよ。スカルマスク、君には殺人への忌避感がないようだ」


 “赤い空の世界”――恐怖領域との接触は人の精神に凄まじい負荷をかける。短時間の接触で済めばいいが、数日間も取り込まれてしまえば手遅れだ。不可逆的に破壊された精神は修復不可能な廃人を作り上げ、それはカインが言うところの“空っぽの器”たり得る。

 この虚ろな目をした人々は、おそらくカインによって恣意的に異界へと連れ去られ、その精神を破壊された上で彼の群体に取り込まれてしまったのだろう。

 スカルマスクに言わせれば彼らはカインによる殺人の犠牲者であった。


「面白い冗談だ。ここにいる連中はすべて、あらかじめ貴様に殺されていた死体だろう」


 自身が行っているのは死体損壊に過ぎないと言い捨てるスカルマスク――彼/彼女によって頭を潰され、手足を引き千切られた死骸の数は一〇を超えている。寂れた数十年前の住宅街は血と脳漿と千切れた手足に彩られ、凄惨な大量殺人の現場の様相を呈していた。

 これだけ破壊してもなお倍以上の残機があるのだから、カインの群体の相手はキリがなかった。


 そのときスカルマスクの視界を小動物が横切った。銃声が何度も鳴り、血しぶきで染まった廃墟には似つかわしくない野良猫――まるで危機感のないその生き物は、真っ直ぐに髑髏の死神の方へと駆け寄ってきた。

 違和感。

 跳躍して距離を取ろうとした瞬間、猫の身体が爆ぜた。その手足も毛皮も内臓も粉々になって飛び散り、衝撃波と共に自身に叩きつけられるのがわかった。

 あらかじめ体内に仕掛けられていた可塑性爆薬が起爆されたのだと理解する。

 すぐ側の民家の方に吹き飛ばされ、窓ガラスを割って屋内に叩きつけられる。もう何年も使われていないのであろう民家はボロボロだったが、スカルマスクが見たのは廃屋に置き去りにされた粗大ゴミなどではなかった。

 埃の積もった室内に積み上げられているのは大量の爆薬。

 畳の上に何かの冗談のように敷き詰められたそれを見た瞬間、スカルマスクは自身の失態を悟った。

 平屋建ての家屋にみっしりと敷き詰められた爆薬が一斉に起爆される――破壊的爆発。

 爆音、熱、衝撃波。

 数秒間、スカルマスクの――ネフィリム体の視覚と聴覚がその機能を失った。

 爆発に巻き込まれてなお彼/彼女を殺すには至らなかったが、受けたダメージは重たかった。粉々になった人間や動物の肉片、家屋の残骸を振り落とし、よろめきながら立ち上がるスカルマスク――だが、万全にはほど遠い。

 外骨格はあちこちに亀裂が入っていたし、人工筋肉はズタズタに裂けて苦痛を訴え、内骨格には歪みが生じて運動機能が低下している。

 全身から伝わる苦痛の信号。

 粉塵の舞う空気の中、スカルマスクはうめいた。


「猫に爆弾とはな……動物虐待だぞ」


 何キロも離れた場所からでもわかるほどの轟音と煙を上げて、周辺の平屋建て住宅ごと消し飛んだ廃墟――爆発に巻き込まれて何人ものカイン群体が道路に倒れていた。

 まともに爆発に巻き込まれた以上、そのほとんどは重傷を負っているか即死だ。銃声程度なら音を打ち消す――テンレン家がヘリに使っていたような異端科学の成果物――ことで隠蔽できても、こんな爆発が起きてしまってはソラハラ市の警察も消防も動き始めるだろう。

 カインがここまでやると思っていなかった、スカルマスクの判断ミスだった。

 爆弾テロの爆心地という感じの惨状――先ほどまで視界をさえぎっていた平屋建ての並ぶ景色は綺麗に消し飛んでいて、粉塵塗れの空気の中、うっすらと野山が見える有様だ。

 遠方には辛うじて無事だった家屋のシルエットが見えるが、窓や扉は吹き飛んでいることだろう。

 自動車のブレーキ音。

 おそらく建物の影に退避していたのであろう、箱型の貨物自動車が何台も停車。スカルマスクの前に何人ものカイン群体――精神寄生体の操り人形が降りてきた。

 声――不自然な笑みを浮かべる若い男。


「彼らもきっとよろこんでいるだろう。君という怪物を討ち取る一助となったのだからね」

「……最悪の感性だな」


 カイン群体の一人が構えている筒状の構造物――白煙を上げて発射される何か。

 彼/彼女の視覚器官が捉えたものは、携行対戦車弾ロケットランチャー――単発使い捨ての滑腔式無反動砲だった。主力戦車の装甲を貫通するため開発された成形炸薬弾を発射する、歴とした対装甲目標用の重火器である。

 スカルマスクは小銃弾であれば難なく防ぐだけの防御力を持つが、それは所詮、屋内での対人戦を想定した範囲でしかない。

 歩くことさえやっとの状態で回避できるはずもなかった。

 弾頭の着弾位置を予測、咄嗟に左腕を前に突き出した。

 直撃。

 爆発によって生じた爆轟波によって弾頭部の金属が液体のごとく振る舞い、超高速噴流メタルジェットとして運動エネルギーの洗礼を浴びせかける――古式ゆかしいモンロー/ノイマン効果そのもの。

 それがもたらす絶大な破壊は凄まじく、装甲が、筋肉が、骨格が、バラバラになっていくのがわかった。

 凄まじい衝撃と激痛。

 跡形もなく消し飛んだ左腕――肩の付け根から先が失われている――にバランスを崩したスカルマスクに、続けて二発目、三発目の対戦車弾が撃ち込まれていく。

 着弾。

 着弾。

 その度に手足がなくなり、芋虫のように地面を這いつくばる死神はほとんど死に体だった。


 無反動砲は発射器後方からガスを噴出することで、弾頭発射時の反動を相殺する仕組みだ。このとき噴出されるガスの逃げ場がなければ、射手自身が大やけどを負ってしまう。

 カインの“手足”が使っていた無反動砲は、ガスの代わりに塩水を放出し、狭い空間でも発射可能なように改良されているモデルだった。

 つまりは軍用の重火器。

 貧相なライフル銃で武装していた兵隊は見せ札であり囮だったのだ。

 罠にはめられたスカルマスクを見下ろし、カインは淡々と事実確認のように声を発した。


「ネフィリム・ナンバーズの二八番目。二〇番台最後発である君は電子戦と諜報活動に特化して設計されている――現代の成形炸薬であれば十分にその駆体ボディは破壊可能だ。我々はあの御使いの模倣を行ったが、ついぞ再現には至らなかった。プロジェクト・ネフィリムが軍部の玩具を作るに終わった時点で、私の望みには不適格となった。君の肉体を構成するオリハルコンを回収したいものでね、悪いがこのまま無力化させてもらう」

「……き、さまの、望みだと?」


 今のスカルマスクは両足と左腕を失い、まともに方向転換もできない状態だった。瓦礫のせいでその断面は見えなかったが、右腕以外を欠損した姿はほぼ無力化されていると言っていい。

 彼/彼女の右腕が届かない死角、左腕の側にひざまずくと、カインはささやくように自身の願いを口にした。



「――あまねく人の頭上に降り注ぐ断罪を。私という罪の総体の祈りはそれだけだ」



 しばしの沈黙の後。

 彼/彼女は嘲笑った。




「では貴様から裁かれるがいい」




 一閃。


「ぐがっ!?」


 苦悶の声。

 カインの喉笛を引き裂いたのは、吹き飛んだはずのスカルマスクの左腕だった。

 ごぼごぼと血を噴いて倒れるカインと入れ替わりに立ち上がるのは、その返り血をたっぷり浴びた幽鬼のような影。

 音もなく増殖する金属細胞――オリハルコンによって補填されたネフィリムの血肉が、失われた両足を再生させていた。


「ああ――この痛みが、私の命を実感させてくれる」


 死神の陰々滅々たる言葉。

 遠巻きにスカルマスクを見ていた別のカイン――ロケットランチャーの発射機を放り捨てた小太りの中年女性が、興味深げに彼/彼女の方へ近づいてくる。

 次々と寄生先の肉体を移り変わるカインは、生存本能も死への恐怖も消え失せているらしかった。

 それも当然だろう。この地球上に存在する“殺人”によって結ばれた死の因果に連なる罪人すべてが、カインを構成しているのだ。その死生観も精神構造も、常人に共感できるようなものではない。


「……これほど高速でのオリハルコンの自己増殖は仕様になかった。君の開発者は私を謀っていたのか?」


 愚問だった。

 答える義理もなかったから、スカルマスクは嘲笑を投げかける。

 殺意と共に。



「笑わせるなよ人間風情が。ネフィリムの名を与えたのは貴様らだろうに」



 ネフィリム――堕天使と人の間に生まれ落ちた混血の巨人、地に満ちた人の糧すべてを喰らう怪物の名前。

 その名の通りに、彼/彼女は人を脅かす力を備えて生まれてきた。

 物理法則を塗り替えるおぞましき力の顕現けんげん――刹那、すべての光が世界から失われた。

 光源が意味を成さず、どんな波長の光を捉える目も意味をなさない真の闇の訪れ。



――超能機構・暗黒領域ダークフィールド



 可視光を含めたあらゆる波長の電磁波を操作、遮断するスカルマスクの固有能力である。

 この能力の影響圏内においては、如何なる電波を使用した通信手段も使用不可能であり、電磁波に依存した索敵手段も例外ではない。

 生命体の備える肉眼での目視も、各種光学センサも、文字通り一寸先も見えない闇の中。



 結論から言えば。





 暗黒領域の展開から二八秒でこの場にいたカイン群体すべてが殲滅された。



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