これは別に始まりじゃなくて経過に過ぎなかったらしい

 「今日からここの支部でお世話になります、ソエジマです!」

 サクラ弘晴ヒロハルの勤める会社は東証何部とかいうところに上場しているそれなりにでかい企業で、本社は首が痛くなるような高層ビルだが、彼が勤めるオフィスは小さな建物が軒を連ねる下町の分署にすぎない。そんなところに今春、あの摩天楼から新人が降りてきた。

 「まだまだ未熟者ですが、この支部に貢献できるように、頑張らせていただきます!」

元気よく挨拶をして、彼はにこ、と笑った。屈託のない笑顔から発せられた光が、社員たちの目に突き刺さった。

 「どうしてこんな寂れた支部なんかに?君の経歴なら普通、本社でエリートコースだろうが」

 そう経理がいうと、彼はあはは〜、と笑った。

 「それがですね、あんま上司と相性が良くなくて。入社早々につまんないいさかいでぶん殴っちゃったもんですから、人事部に目ぇつけられちゃって〜!でもここ、家から近いし逆によかったかな〜って」

 「勘弁してくれよ〜、俺、殴られたくはないなあ」

支部長はいつもの困り顔で、ギィとオフィスチェアを鳴らした。朝礼が終わり、皆がそれぞれの業務に戻り始める。

 「安心してください。、ちゃんとやりますよ。」

 また、あはは〜と笑う。逆光。

 

 


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