花乙女 序

私とマリーの出会いはSNSでした。

『ベルサイユのばら』が大好きな私は、マリーのアップしているベルサイユ宮殿の写真、美術品、時々のハプスブルク家に関するものに、とても興味を覚え、翻訳機能を使い、マリーとメッセージのやり取りをしていました。


いつの日にか、SNSだけではなく、直接電話で話すようになりました。


驚いた事に、マリーは日本語も出来るんです。

マリーのよく通うレストランに、日本人のシェフがいて、日本語を学んだそうです。

だから、電話での会話は、日本語が主体でした。


彼女に、

「私の住む愛媛県にはフランスと同じように『サイクリングしまなみ』があって『ツールドフランス』とよく似ているのよ。」

って話したら、彼女は凄く興味深々で

「いつか、同じ年に私はフランスでヨッシーは日本で出場しましょう。」

って、互いに夢を膨らませてました。


まりーは、細川ガラシャが大好きで、よく大河ドラマのガラシャの最期のシーンを見て涙する事を話してくれました。それを聞いて

「なんだかマリー、あなたはマリー・アントワネットみたいね」

と私が話すとビックリして

「なんでアントワネットなのよ?」

と質問を返してきました。

彼女は知らなかったみたいなの。アントワネットはガラシャのオペラを見て泣いた事を…

この話を彼女にすると、とても驚いていたことを覚えてます。

すると、彼女は

「ヨッシーと私は、歴史上の人物と同じように魅かれあってたのね」

って二人して笑いました。

「ねぇ、ヨッシー。私はガラシャは凛として純潔なイメージの白百合だと思うの。あなたが好きな花と一緒ね。私は真紅のバラが好きでしょう。アントワネットが紅バラに例えられたって、ヨッシー話してくれたじゃない?これって運命?」

その言葉に、私はドキッとしました。その瞬間

「ねぇマリー、お互いにサイクリングレースに出た後で、『花乙女』という写真集をつくらない?」

と思わず言ってしまったんです。


今、思えば、なんでそんな発想がでたのか思いもつかなかったけど…

なんだろう…、互いに写真を通じて魅かれあい、仲良くなり、共に愛犬家。今までの写真を友情の証として残したい。ってふと思いついたんです。

すると彼女は

「いいわねぇ~ヨッシー。作りましょう。とびっきりおしゃれで、ピンナップみたいな写真集。ヨッシー、一つ提案があるの。あなたはガラシャみたいなモデルを探すの。私はアントワネットみたいなモデルを探す。フォトグラファーは私たち。どう?」

私は思わず

「いい。それ、凄く良い!」

って、電話の向こうで叫んでいました。


これが、マリーと私の『花乙女』プロジェクトの始まり。


そして、インスタグラムに投稿し、イイね!を沢山獲得したモデルを写真集のモデルにする。

期日は、『サイクリングしまなみ』が開催されるのが2年に1回だから、4年後に出版をすることを約束して、このプロジェクトを始めたんです。


今にして思えば、この時が一番楽しかった日々だったのかもしれません。


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