第23話

「ローズ、このあとどうする?」


「アリサの顔立ちも女の子っぽくなったから、服買った方がいいんじゃない?ほら、今来てるのメンズの服じゃん」


 元男性アバターのアリサが来ているのは、いまも十分に似合っているエメラルドと白のトップスに、少しダメージの入ったジーンズ。

 ちなみにさっきのキャラメイクの段階で、ボーイッシュだった髪型も現実同様ロングにしたのだが、髪色は変えず銀のままにした。

 

 顔立ちと髪型が少し女の子っぽくはなったが、それでもまだ似合っていた。


「ま、アリサは今のままでもそこそこ似合ってるけどね」


「え、えぇ。私もかわいい服とか着たいよぉ」


「この前行った、オススメの店があるけど、来る?」


 ローズの誘いに、アリサは目を輝かせて、子犬のようにうんうんと頷いた。


 2人が向かう先は、『ハイビスカス』という名の洋服屋。

 店名の由来は、ハイビスカスの花言葉が『常に新しい美』であることから来ている。

 花言葉通り、常に現実世界の最先端ファッションを取り扱う店であり、それも破格の値段で提供している。

 

 この世界の物は全てプログラムで構成されている。故に材料費がかからず、現実ではウン10万かかるようなブランド物が、わずか数千円で買えてしまう。

 この世界での服は、身を守るには使えず、お洒落として楽しむ以外に道が無いからた。


 異彩を放つ外観の店や、シンプルに抑えた店など、多くの店が並ぶ中、『ハイビスカス』も負けずに存在した。

 

 まるでその店自体がアート作品。コンクリートは一切使われておらず、全面ガラス張り。色ガラスで模様が描かれていて、中の様子はよく見える。

 店内には、数多の服が並んでおり、外から見るだけでも十分に楽しめた。


「どう?中々オシャレな店だと思わない?」


「こんな店もあるんだね!西側は奥まで来たこと無かったから、知らなかったよ」


 2人は入店。店内には耳を撫でるような、聴いていると落ち着くローテンポな曲が流れていた。


 アリサもローズも、年頃の少女であり、お洒落には敏感。互いに内緒にしているが、どちらも化粧もしてみたいと感じている。


「ローズ!これ良くない?」


 アリサが手に持っているのは、黒のドレス。ヒラヒラの類は着いておらず、スラっとしている。


「アリサの髪の色に似合ったりするかもね。ねぇアリサ、自分用と相手用、2着買ってお店でてから発表ってやつやらない?」


「あ!いいねそれ!やろ!」


 店は広く、全ての商品を見るのに半日ほど掛かるくらいの大きさだ。だが、店頭に並ぶ服以外にも、データとしてはその何倍かはある為、全て見るのなら一日以上は掛かる。

 これが女性服だけだというから、驚きだ。


「こんなのアリサだったら似合うかな。喜んでくれるといいけど」


「ピンクの髪って難しいなぁ。どんな服だったらいいのかな」


 2人なりに店内から互い用の服を選び、外で再開したのは約束してから1時間後だった。


「あ、来た来た。アリサー!」


 先に外でまっていたのはローズ。だがそれも数分程度の差で、どちらも長考の末の購入だった。


「ごめんごめん。待たせちゃったね。でも頑張って可愛いの選んだんだよ?」


「こっちのも期待しててよね!」


 2人は後ろを向き、インベントリから洋服を具現化。


「準備はいい?」


「オールOK!」


「「せーのっ!」」


 2人同時に手に持つ服を見せる。


 ローズが持つのは、クリーム色のロングコートと、黒のドレス。あとは黒のブーツだ。


 アリサが持つのは、グレーのドレス。あとはネックレスだ。ドレスは下の丈が短く、足がセクシー。


 互いにプレゼントを渡し合い、実際に着てみた。


 アリサの髪色は明るい銀。それに対しローズの髪色は赤に近いピンク。丁度バラの様な色だ。


 どちらもよく似合っている。だが、2人とも戦闘が多く、お洒落をするタイミングはこの街にいるときくらいだ。


「ありがとう。街にいる時はこれ、着させてもらうね」


「こちらこそありがとう」


 2人とも上機嫌。このあと2人は、昼食を食べるため一時ログアウトした。

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