第10話

2体のドラゴンを背に進む道はどんどん狭くなっているように感じた。始めは縦横6mほどあった穴も、いまは1.5mほどと、かがまなければ進めなくなってきた。光源の宝石も、数が減ってきている。


「先に何かあるのかなぁ。ただのトラップだったってこともあるかも……。でも戻ってもあのドラゴンさんと鉢合わせしちゃうし……。う〜ん」


考えがどんどんネガティブになっていた。

そのまま進んでいると、開けた場所へと出た。

その奥にはひとつの古びた木のゲートがあった。


近づくと手元にパネルが現れた。


「……うぇるかむ・とぅー・ざ・だんじょん?」


そのゲートはダンジョンの入口だった。


―――――――――――――――――――

Welcome to the dungeon!!


Only two rules.

1. No battle

2. Choose a choice


Want to challenge?

YES or NO?

―――――――――――――――――――


ルールは2つ

闘いは無し、そして選択肢を選ぶだけ。


このくらいの英語は秀才の有咲なら余裕で理解出来た。ただ発音は壊滅的であった。


「バトルないんだよね?じゃあいくよ!YES!」


――――――――――――

OK!!!

Good luck!!

――――――――――――


その表示とともに、ゲートはギギーと音を立てて開いた。







そのころ舞衣は街を出ると、行ったことのない荒野の端の方に来ていた。


既にネットの攻略サイトは出来上がっており、そこの掲示板にはマップの最北端に小さな廃墟の家があり、そのどこかにあるアイテムが眠っているという書き込みを見つけたからだ。


なんでもそのアイテムは、技の被弾者の半径5mにいるドラゴン、またはプレイヤーに受けたダメージの半分を与える、という舞衣の欠点の技範囲の狭さをカバー出来るものだったのだ。


「どこだ〜?お!あれか!」


フィールドは高い崖に囲まれており、その上空にはプレイヤー侵入不可区域が設定されているため、登って超えることはできない。


その壁ギリギリのところに、古びた木製の家がたっていた。


「おじゃましまーす……」


忍び足でドアをくぐる。その家は二階建てになっており、廊下の左手には階段、右手は奥へと続く道となっていた。


「結構ボロボロ…。ちょっと怖いな。有咲と一緒に来ればよかったかも」


まずは1階を散策しようかと進み始めた瞬間、


バタンっ!


ドアが勝手に閉まった。


「ひっ!」


急いでドアを開けようとするが、鍵がかかって開かない。

すると手元にパネルが表示された。


「Welcome to the Ghost House?」


発音は有咲と違い流暢だ。姉妹の数少ない違いであり、舞衣の自慢でもあった。


「あぁ……、クリアするまで出られない感じね…」


全てを察し、この幽霊屋敷を散策し始めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る