第11話

木のゲートを抜けた先は、廃鉱山のような道になっていて、そこそこの広さだった。


そのまま少し歩くと、2つの岩のゲートがあり、道の分岐となっていた。

そこまで来ると、有咲の手元にパネルが表示された。


―――――――――――――――――――――

1st choice

貴方はドラゴンハンター

龍を殺すことを生業としている


その日も大物を狙いに森を散策中だ

途中、子供のドラゴンの鳴き声が聴こえた

そこへ向かうと、その肉は高値で重宝される

大きな母龍が怪我をしながら

小竜を守っている


いま母龍を狩ることは容易い

しかし、小竜は生き延びられない


もし貴方なら、その龍を殺しますか?

―――――――――――――――――――――


「生活のためにドラゴンさんの命を狩るのは仕方ない。けどまだ未来のある子供の先を奪ってまでかぁ……。どっちかなぁ……」


弱肉強食。

昔から野生動物に興味があった有咲は、様々な動画をみてそれを分かってはいた。

弱き者は強き者に食われる運命。怪我をすればあっという間に他のドラゴンに喰らわれるだろう。


ならばいま自分が狩っても問題は無いのではないか?

論理的思考であればそうなるだろう。


有咲はその答えに行き着いた。


「殺します!」


ここだけ聞けば物騒な言葉だ。


パネルの表示は変わり、


――――――――

Go right

――――――――


とだけ表示された。


その後も同じような分岐が現れ、その度に論理と情が絡み合うような問題が多く出現した。


その中の一つには、あの

『5人を助けるために1人を犠牲にできるか?』

という問題もあった。


有咲は全て情に流されることなく論理だけで考えることを貫き通し、全10題を解ききった。


最後のゲートをくぐった先には、入口のような広い円形の部屋があり、そこには赤と金の、如何にもな宝箱があった。


ここでダンジョン終了を告げるパネルが表示された。


「あれが報酬かな?でも参加料とかも払ってないから、そんないいものはいってるとも思えないしなぁ」


箱を開けると、そこには2つのぼろぼろの紙が入っていた。


「これは……スキルと手紙かな?」


手紙には、今回の設問と有咲の回答、そしてその結果に応じた称号が与えられると記されていた。


―――――――――――――

称号を獲得非情の狩人

全パラメータ1%上昇

―――――――――――――


称号は、持っているだけでなんらかの効果がつく。この《非情の狩人》は、有咲の自然の摂理の考えを持つ者に与えられる称号だった。


「《非情の狩人》って…、そんな変な判断したかなぁ」


少し悩んだものの、結果として選んだのは全て残忍な選択肢。しかしそのことに有咲は気が付かなかったのだ。


「スキルの方は…、【座標固定】?」


―――――――――――――――――

スキル名:座標固定

効果:対象のドラゴン、または

プレイヤーの座標を20秒間固定する。

対象はその場に固定される。

技を出すことは可能。


効果が切れてから2分後に再び

使用可能

―――――――――――――――――


「座標を固定って…【煉獄】は範囲攻撃できるからそんなに使えなさそうかも。でも持ってる分にはいいかな」


スキルを使用、獲得して立ち上がったところで背後に紫の光を放つ魔法陣が出現した。


先程通ってきた道は崩れて埋まっていたため、その魔法陣はダンジョンの入口かどこかへ繋がる転移魔法陣に思われた。


「洞窟って空気がどんよりしてるからあんまり好きじゃないな。早く出よーっと!」


そのまま魔法陣に飛び乗ると、白い光に包まれ、気がつけば入口の木のゲートの前まできていた。


「帰り道ってまだあの2体のドラゴンさんいるかな……。あ!【座標固定】使えるかも!」





来た道を戻ると、案の定2体のドラゴンはこちらを向いて待ち構えていた。

有咲が立ち止まった途端、ドラゴンはこちらへ向かって走ってきた。


「【座標固定】!!」


瞬間、ドラゴンの脚は空を掻くようにして勢いを残してその場に固定された。


「いまだ!逃っげろー!」


2体の間をすり抜けて、洞窟の入口まで急ぐ有咲だった。

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