第4話

「まただめだったなぁ……」


結局起きたのは投稿時間ギリギリ。パンを咥えて走って登校という、漫画のような展開を繰り広げていた朝だった。


寝不足ということもあり、あまり集中できなかった英語は特に酷かった。


特に部活にも入っていない有咲は、テストが終わると昼前には家に着いた。

いままでであれば、テスト期間が終われば即見直し、という勉強熱心の少女だったが、ゲームの楽しさを知った有咲にとって勉強などどうでも良くなってしまった。


ヘッドギアを被り、コマンドを口にする。


「コネクト・オン!」





「今日も来ちゃった、勉強は……またあとでやればいいよね!」


周りを見渡すと人は昨日よりもさらに増えて、街も賑やかになっていた。


とりあえずプロフィールを開いた有咲は、ステータスの下にステータスポイントが振れることに気がついた。


「あれ?なにこれ。ステータスはこうやって上げるのか!どれどれ……」


ポイントは残り30。レベルが偶数に上がるにつき5貰えるようだ。


「うーん、攻撃は要らないし……。逃げて遠くからぽんぽん魔法打つのが強そうかも!」


自分の中の方針が決まったところで、魔法攻撃と素早さに15ずつ振った。


自分のプロフィール画面の他にも持ち物や運営からのお知らせなどのボタンがある。

有咲はその中のメールのところに2と通知が来ているのに気が付いた。


「あれ、メールが来てる。いつ来たのかなぁ」


下のメールから開くと、リリース記念特典&事前登録50万人記念特典、というタイトルでメールが来ていた。


有咲は早くドラゴンを狩りにいきたかったため、メールなど読まずすぐに報酬受け取りを押した。


―――――――――――――――

アイテム名:プラズマスター×5 獲得

アイテム名:時のソーダ×5 獲得


―――――――――――――――


「なにこれ?ぷらずますたー?ときのそーだ?ん?」


用途の分からないアイテム獲得表示を閉じて、狩りへと向かおうとしたとき、もう一通メッセージが来ていたのを思い出した。


開くと、『累計BPランキング開催!!』というタイトルで、1位を目指す有咲には興味を示すのに十分なものであった。


「ランキングだ!これを求めていたのだよ!」


何故か偉そうにする有咲。

メールを最後まで読み終えると、さっそく狩りへと向かった。






「【岩落とし】!!」


今日も元気に岩を落としていた有咲。鳥型のドラゴンは無限湧きする雑魚タイプのようで、初めてゲームにハマった有咲は無限に終わらない雑魚処理を楽しんでいた。


パパパパーン!!


「ん?またレベルアップかな」


このとき、有咲のレペルは15にまで上がっていた。

ただこの時、いままでのレベルアップとは演出が違った。


「あれ?アチーブメント報酬?」


このゲームにはレベルが15以上になると、デイリーミッションと常設ミッション、期間限定ミッションに挑戦できるようになるシステムがある。


サービス開始から2日。買い物や食事までできるこの世界でずっと雑魚狩りをしていた有咲は、掲示板や攻略サイトを除くこともなくその情報量はゼロにも等しかった。


「なにか貰えるのかな?……って多いな!」


――アチーブメント報酬――――――

6000円獲得

アイテム名:鉄の剣×1 獲得

アイテム名:鉄の槍×1 獲得

アイテム名:鉄の杖×1 獲得

アイテム名:時のソーダ×5 獲得

アイテム名:時のブレスレット×1獲得


―――――――――――――――――


ほとんどがドラゴンの討伐数報酬だったが、レベルのあげ方が特殊過ぎたために一斉に届いたのだ。


「時のソーダってさっきもあったな……。どんなアイテムなんだろう」


――――――――――――――――――――

アイテム名:時のソーダ

使用者は、使用してから20分の間得られる

経験値量が1.5倍になる。

――――――――――――――――――――


「これって……昨日気づいてればもっと上がったんじゃ……」


気が付きたくなかった事実に気がついて、その日はまたひたすら雑魚狩りを続けた。

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