第3話
《幸運Ⅰ》という不遇スキルのついた杖を武器に有咲は荒野の戦場に立っていた。
有咲の選んだ武器ラッキーステッキは、装備している者に
「なんか困ったなー。全然倒せないや」
有咲が相手にしているのは、中型の犬ほどのドラゴン。肌が岩のようにごつごつとしていて、見るからに硬そうである。
この世界では攻撃者の攻撃力から被攻撃者の防御力を引いた値がダメージとして算出される。
つまり、たかだか20の攻撃では相手の防御力を上回れず最低ダメージの1しか、与えられずにいた。
カーンっ!!
ベルを叩いたかのような高い音が聞こえた。
クリティカル演出だ。《幸運Ⅰ》の効果により攻撃が稀にクリティカルヒットするようになっていた。
「え?あれ?やったー!倒したぞー!」
クリティカルは敵の防御力無視に加え、威力3倍の倍率がかかる。運が良かったのだ。
「ん?んん?レベルアップか!」
視界に祝福のクラッカーやベールが入ってきた。
リザルト画面が、
――――――――――――――――
経験値:6
賞金:8
アイテム:【ロックリング】(レア)
――――――――――――――――
と表示された。
「レアドロップかな。なんだろう」
有咲がプロフィールを開くと、レベルは1から2へと上がっていた。
アクセサリーをタップすると、所持アイテム一覧のページに飛び、そこにはいまドロップした【ロックリング】が入っていた。
――――――――――――――――
アイテム名:ロックリング
<効果>
防御、
スキル
【岩落とし】が使えるようになる
クールタイム:1分
――――――――――――――――
「へぇ、ラッキー!」
ロックリングを装備した有咲は近くに沸いた小さな鳥型のドラゴンに目をつけ、いい機会だと【岩落とし】を試すことにした。
「【岩落とし】!」
生成された岩は思っていたより大きく、鳥型のドラゴンを地面に落としそのまま押し潰して倒してしまった。
「おお!強い強い!このままならどんどん倒せそうだなー」
30分ほど経ったかなというあたりで時計を見ると、時刻は夜中の1時。ゲームにログインしたのが9時過ぎだったので、もう4時間近くプレイしていたことになる。
レベルは12まで上がっていた。本来であればステータスポイントを振って武器で倒すのが正しいレベル上げなのだが、鳥型のドラゴンは簡単に倒せたため時間を忘れ岩を落とし続けていたのだ。
「やばっ!明日まだ英語と数学のテストあるのに……」
頭の中ではこのまま寝てしまうか、勉強をするかで迷っていた。
実際に身体を動かしたわけではないが、仮想空間で動き続けていた有咲には仮想の疲れが溜まっていた。
「いいや、明日早起きして勉強しよう!」
その日人生で初めてハマったゲームに、睡眠時間を奪われた有咲。翌朝のテストに全力を注げなかったのは言うまでもない。
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