第2話

気がつくとそこは街の中心だった。


「うおっ!すっごーい!」


VRMMOをやるのはこれが初めてではないはずなのだが、やはり久々のゲームの世界に心踊ってしまった。


画面の右上の方にはホームボタン、左上にHPとMPが表示されている簡潔な視界。

有咲はホーム画面を開き、プロフィールを確認することにした。


「私のプロフィールは……、これか!」


―――プロフィール―――――――――


プレイヤーネーム : AZ

職業 : 魔法使い

所持金額 : 1000円


Lv1

攻撃 : 20

防御 : 20

魔法攻撃 : 20《+3》

魔法防御 : 20

素早さ : 20

HP : 50


装備

武器 : 普通の杖

頭 : まだ装備していません

服 : 普通のドレス

靴 : 普通の靴


アクセサリー : まだ装備していません


――――――――――――――――――


「……ま、まぁ初期ステータスだしこんなもんだよね」


もしかしたら最初から飛び抜けたステータスで1位なんて余裕かも、という有咲はの一縷の望みは絶たれた。


「やることもわかんないし、とりあえず散策だー!」



始まりの街、と呼ばれたその街は大きな円形の街で、端から端までに走っても20分ほど掛かる大きな街だった。


ゲーム設定を終えた新規プレイヤーは皆、その円の中心から始まる。

有咲もまた、その1人であった。有咲の他にも同時に何人かその場に転送されてきていた。




散策を始めた有咲は、街全体のマップを手にまず近くの商店街へと足を運んだ。

その中で目に入った武器屋何店舗かにはいったが、ゲームの知識は初心者同然の有咲にとって、どういう性能が強い、こんな武器は便利、など分かるはずもなかった。


「う〜ん……。どの武器もみんな良さそうだしなぁ。1000円じゃあんまいいのは買えなそうだし、どうしよ〜……」


1人で困っている有咲に声がかけられる。


「武器選び、お手伝いしましょうか?」


声の主はこの店のNPC。このゲームのどのNPCは全て人と区別がつかないほど高度なAIが組み込まれているようだった。


「あっ、はい!お願いします」


NPCにプロフィールを見せると目の前に半透明のパネルが現れ、いくつかの武器情報が表示された。


「こちらあたりがおすすめとなっております。武器やアクセサリーのカテゴリーは大きくわけて2つ。1つはステータスを強化するもの、もう1つは武器自体にスキルを持つものです」


表示される武器の中には、《攻撃値+15》《素早さ+15》や、《スキル:追尾弾》など初期に買える武器らしい装備が多かった。その中で、目を引かれたものが1つだけあった。


「あのこれってどんなものなんですか?」


有咲がいうこれとは、『豪炎のステッキ』という名の魔法使い向けの杖だった。


「この武器は通常の攻撃に追加効果が付与されています。攻撃が命中した相手に炎の属性の持続ダメージを与えます」


このゲームには、HP自動回復というレアスキルが存在する。持続ダメージといっても雀の涙程度のダメージしか与えられず、大して使い物にはならないのだが、そんなこと有咲には知る由もない。


「じゃあこれは?」


「この武器は装備している者のステータスに、《幸運Ⅰ》の状態異常を付与します。《幸運》とは、敵を倒した時に貰える経験値が多くなったり、レアドロップが出やすくなるものです」


この《幸運》も、始めは使い物にならない。

また対人戦では効果が適用されない。

パーティを組んで、その中に1人いれば全員に効果が適用されるこのスキルであるために、まだゲーム内で知り合いのいない有咲にとっては、とても要らないスキルなのだ。



「レアドロップで落ちる武器はここに売ってる武器より強いんですか?」


「それは武器にもよりますが、ごく稀にユニーク装備をドロップすることもあります。《幸運》のレベルをあげれば、その確率も高くなりますよ」


《幸運》のレベルをあげるといっても、敵と戦い得た経験値を使って武器を強化するのだ。こんな装備を始めの相棒とするプレイヤーはほぼいないだろう。


「よしっ!決めた!この子にする!」


「お買い上げありがとうございます!今すぐ装備なされますか?」


「じゃあそうする」


多くの武器が表示されていた画面はステータスに戻り、武器の欄には『ラッキーステッキ』が装備されていた。


店を出ると、店のガラスのショーケースに自分がうっすらと映っていた。


「うわっ!えっ?なんで?」


初期設定時、有咲は確かに女の子!と告げたはずだ。だがガラスに映っていたのは、銀髪で背の高い、顔立ちが整い男っぽくなった有咲の姿だった。

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