何でも2番目の少女がゲームで1番を目指します!!
氷室
第1話
「衝動買いをしてしまった……」
そう呟くのは、テストの出来が悪かった梓野あずさの有咲ありさ。
今日は得意な社会のテストがあったが、漢字ミス、解答欄のズレなどの普段は絶対にしないようなミスを最後の最後で何個も見つけてしまったのだ。
故に、帰り道は落ち込んでいたため身体が気分転換を求めていたのだった。
「ゲームなんて慣れてないしなぁ……」
いままでに友達との話についていくために何種類かプレイしたものの、長く続いたものはなかった。
「ま、せっかくだしやりますか!」
手に持つのは12月18日、つまり今日発売である
VRMMO「DRAGON(ドラゴン)・SLAY(スレイ)・ONLINE(オンライン)」である。
有咲はいままで、双子の姉である梓野 舞衣まいに何においても負け続けてきた。
勉強、運動、さらには恋愛まで。
「このゲームなら舞衣もいないし、絶対1番取ってやる!後で誘って、有咲様ぁってなるようにしてやる!」
有咲の脳内では自分がふんずりかえり、まいがぺこぺこと頭を下げている映像が流れていた。
その後有咲は、フルダイブ用のゲームマシン『5 SENSEセンス・CONTROLERコントローラー』通称5scを頭につけ、フルダイブコマンドを口にした。
「コネクト・オン!」
五感が薄れ消えてゆく感覚。このゲーム機を使うのはこれが初めてではないが、ゲームとはほとんど縁のない暮らしをしてきた有咲にとってはむず痒くなる感覚だった。
初めに聞こえてきたのは壮大なゲームのBGM。
オーケストラが演奏しているかのようなその音楽は、新規プレイヤーを歓迎しているようだった。
目を開けると、手元には半透明のパネルがあった。
そして目の前には赤い手のひらくらいのドラゴンが浮かんでいた。
「初めまして!僕の名前はダンク、よろしくね!」
そのドラゴンがそう一言発すると、画面のパネルにはドラゴンのプロフィールが浮かび上がった。
―――プロフィール――――――――
名前 : ダンク
職業 : 案内人
好きな食べ物 : パイナップル
嫌いな食べ物 : ドラゴンフルーツ
―――――――――――――――――
「ドラゴンなのにドラゴンフルーツ嫌いなんだ……」
疑問を口にする有咲に対して、
「いやぁ、よく言われるよ。あんまり口に合わないんだよねぇ!」
と返すドラゴン。
このダンクというドラゴンには高度なAIが搭載されていて、少しの複雑な会話であれば容易にこなすことができる。
「僕の自己紹介はこれくらいにして、まず名前を決めよう!何にする?」
ドラゴンのプロフィールはアルファベットのキーボードへと変わった。
「うーん……あんまりゲームやった事ないから本名の有咲とかでいいかなぁ……。でもゲームに名前載せるのはなぁ……」
悩んでいる有咲に対し、ドラゴンは本名は控えてね!というアドバイスをかけた。
「じゃあ、みんなに呼ばれてる梓野のアズでいいかなぁ。でもカタカナってちょっとダサいかな。よぉ〜し!」
カタカタカタ……
「どれどれ……、ふぅ〜ん。AZさんだね!ちなみにこのゲームは性別が現実と変えられるけど、AZさんはどっちにする?」
「女の子!」
「おっけー!性別は女の子ね!じゃあ次は職業を決めよう!設定はこれで最後!」
キーボードだったパネルは、多くの職業とその特徴が書かれた画面に切り替わった。
有咲は軽くスクロールしてそれぞれの職業の特徴を読んで行った。
「片手剣…両手剣…大剣……、剣だけでもこんなに……。決められないよ!ドラゴンさんのおすすめはどれ?」
「僕のおすすめかぁ…。AZさんはどちらかといえば、力と力のぶつかり合いなバトルが好き?」
「それは痛そうだし……。できれば遠くから攻撃出来るのがいいな」
「わかった!じゃあ、僕がおすすめする職業はコレ!」
画面には、魔法使いのプロフィールがあった。
「ふむふむ……詠唱が必要である魔法攻撃を得意とする職業、か。よし決めた!これにしよう!」
有咲が魔法使いを選んだ理由は2つ。1つはオススメとして選ばれたから。そしてもう1つは、暗記には自信があるからである。
「これで設定は終了!じゃあいまから、始まりの街に転送するね!目を閉じてくれるかな?」
有咲は目を閉じると、ドラゴンのいってらっしゃーい!という声を合図に白い光につつまれたのであった。
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