episode1

俺の名はイグニス、この世界で恐らく最後の魔族であろう。私達魔族は魔力特化の種族であり、さらには魔物を操る事の出来る極めて強力な力を持つ種族であった。だからこそ滅ぼされたのだ、力を持つ国は近隣国家からは疎まれるのだ。

敵は人間国家オーラスと獣人国家シリウスである

私達魔族は戦った。国の為、友の為、家族の為に

魂を燃やしながら、命を散らしていった。

そして俺は愛する友や愛する国を失ったのだ。

目の前が真っ暗になった、今は亡き友に会いたい気持ちが溢れて儘ならない。

怒りが溢れ悲しみが押し寄せる、何も考えられない

何も考えたく無い。考えると記憶が呼び出され悲しみに襲われてしまう。なぜ魔族が戦に負けたのか

理由は2つ、その一つが魔族の国がある場所は、オーラスとシリウスの間にあり二つの強国に挟まれている状態にあった為、いつ攻め入られても不思議ではなかった。それでも今まで魔族の国が生き残ってこれたのは魔族の魔法のおかげであった。魔族の魔法はただの魔族の平兵士ですら人間の兵士百人を、一瞬の間に消し去る事の可能なほどである為であった。だか負けた理由の二つ目だオーラスは魔族にとって最悪と言える対魔族殲滅兵器を生み出しただ。

魔物や魔族にとって魔力とは魔法を使う為のだけの物ではない生命を維持する為の期間でもあるのだ。

その魔力を強制的に奪う兵器を作り出したのだ、その為魔族は急激に数を減らしていった。

対魔族殲滅兵器を発動してからたったの一週間で魔族の国が滅びたのだ。

「俺はなぜ生きているのだろうか?」魔力は奪われた筈だった。なのに私は生きている、何故だ、何が俺を生かしたのだ?。そんな事を思いながら森の中を歩いていると、ちょうど良いサイズの岩があったので少し休む事にした。イグナスは心も体もすでにくたびれていた、友を亡くし国を亡くしたイグニスにはもう何も残っていなかった。

このまま死んでしまいたいとさえ思えるくらい心はボロボロであったのだ。

そんな時であった、木々の中から突然赤い色の矢が飛んできたのだ。咄嗟に避けて剣を抜き即刻、乱戦体制に入る。奪われた魔力も少し回復していた為、心の中で詠唱する。すると森の中からこの世の物とは思えないほどの美しい白銀の髪のエルフが出てきたのだ。そのエルフに目を奪われていると「貴方は一体何者?」と聞いてきたのだ。

俺は戸惑いながら「俺の名はイグニス、魔族の国の者であった。」するとそのエルフは「ここに何しに来たの?。」俺は今までの経由を話した。すると

エルフは「そう、私を殺しに来た訳じゃ無いのね。」俺はその言葉に不思議に思い問い詰める事にした。「君は一体何者なんだ?その髪その紅い目

明らかにエルフの特徴では無いよね?」するとエルフは「私の名はネア…、ヴァンパイアとエルフの

ハーフ、ブラッドエルフよ。」俺はその言葉に耳を疑った、この世界に確かに混血者は存在する。

しかしその子供が生まれる確率は3%未満と言う

確率らしい。その理由はエルフが薬草や木の実を食べる様に、ヴァンパイアが血液を食する様にお互い摂取する栄養が全く異なるのだ。そしてもし生まれて来れたとしても、遺伝子のバランスが悪ければ生まれてから一週間以内で栄養失調で死んでしまう。

それが生存確率3%未満の理由だ、それが混血者なのだ。そんな事を考えているとネアが「貴方もそうでしょう?」と衝撃的な言葉をかけられた。

何故そう思うと声をかけようとするとネアは、

「この森は混血者以外は入れないのよ、そして何より貴方の血液からは明らかに魔族以外の匂いを感じるわ、それも一つや二つじゃ無いわよ。」

「は?」

今なんて言った?俺が混血者?ありえない。

俺は今まで極めて普通の魔族として生活していた。確かに平均の魔族より魔力が少なかったのは事実だがそれ以外は極めて平均の魔族だった。

その俺が混血者?理解が追いつかなかった。

確かに俺は実は両親の顔を知らない、魔族の国の孤児院で育ったのだ。過去に何度か身体検査を受けたが変わった数値は見られなかった。だが俺はある事に気がついた、対魔族殲滅兵器で俺は死ななかった

つまり俺は魔族以外の種族の血に助けられたのか?

それなら俺だけが生き残った理由の合点が行く。

俺は何とも言えない気持ちに襲われていた。

するとネアが「とりあえず私の家に来なさい。行く所も無いのでしょう?」俺は無言で頷きそのまま

ネアに森の奥の家まで連れて行かれるのだった。

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