第178話 ウチの裏山で採れた武田の忍びです
カクヨム様で限定公開の近況ノートを書いたらおこずかいくれると書いてたので、今度発売する菊池伝記を書いた際の愚痴などを適当に書いて載せました。
大した事は書いてないので、間違って課金しないようにお願いします。
内容は
『エントリーしてから限定公開ノートを書くと抽選でお小遣い貰えるそうなので、お試しで書いてみました。
とはいえ無料だから読んで頂いているだけで投げ銭までして頂けるような職業作家では無いので、タイトルを以上のようにしてみました。
えー、最近は菊池伝記という軍記物を翻訳しており、本日終了の目処が付きそうなので明日、晴れたら菊池市に行って写真とか取ってこようと計画しております。
私は旅行当日に福岡から熊本に目的地を変えたり、宿なんか予約してないので直接空いた部屋がないか聞いたりするような行き当たりバッターなので明日になったら「眠いからまた次回」となるかもしれませんが、360度カメラで現在の肥後を切り取って来たいと思います』
なので…
では本編始めます。
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昔、激辛香辛料が大好きなメキシコ人たちにワサビを食べて貰って反応を見ると言うTV番組があった。
メキシコというと辛さの暴帝 ハバネロ(トウガラシの親玉辛さの単位スコビルで比較するとタバスコは1,500~2,500スコビル、ハバネロは25万〜45万スコビル)をスープに加えたり、ビールのおつまみにそのままかじったりする国である。
実際にハバネロを酒場で丸かじりしている人に日本のワサビをそのまま食べて貰った所………
メキシコ人はもんどりうって倒れた。
『信じられない辛さだよ。ハバネロとは種類が違う辛さだね』
と、言って涙を流していた。辛さに強い人間でも種類が異なるとここまで耐性がないという話。
……一般の人でも分かりやすく言うならば、スマホからアイフォンに変えたり、ウインドウズからマックに機種変更したら戸惑うようなものである。
commandキーってなんだよ。
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越後の朝は暗い。
日本海の冷たい風が対馬海流の暖流と混ざって雲が発生し、一年のほとんどが曇っていると言っても過言ではない天候なのである。
一日でも晴れてたらその日はラッキー。
突然雨が降るので笠が手放せない。
そんなアンニュイな朝を迎えたなか
「ひいふうみい。おー、今日は3人の忍びを捕まえたか」
罠にかかった魚を数えるように、捕えられた武田の忍者を見た。
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「何故、三ツ者(みつもの=武田信玄が組織した隠密集団。情報収集を得意とする)は帰って来ないのだ!!」
甲斐から信濃に移動した武田晴信は憤懣やるかたない顔で怒鳴った。
情報は貴重だ。
父を追放する根回しも事前に漏れれば自分は今生きていなかっただろうし、諏訪を奪取出来たのも諏訪惣領を望んだ伊那の高遠頼継ら反諏訪勢の情報を得て手を結び、諏訪への侵攻を行ったからだ。
当主に不満を持つ者、下剋上で当主の座を奪おうとするもの。
そうした隙を知り、そこから裏切りの連鎖を汲み上げ山津波の如く情勢を一変させる。
そのためには蜘蛛の巣のように張り巡らせた情報網が必要であり、その情報をいち早く知る必要がある。
そのために北上したのだが、肝心の情報が入って来ないのである。
商人や拝み巫女に偽装して帰って来たものから堤防の規模や形状は分かった。
自分が作り上げた堤を模倣したものと、たった6日でつくられたもの。
だが、それ以上の情報になると途端に精度がさがった。
地面にたまった水は井戸を造って汲みあげているようだが、遠くから見た商人に
「そのような方法で水を減らしても追いつかぬのではないか?」
と聞いてみると
「それが水車を使っているようなのです」
「井戸から汲みだしておるのじゃよな?」
「へえ、堤の上に水車があり、それを使って井戸から水を汲んでいるようです」
「?????」
井戸と言うとつるべを使うか滑車でバケツを持ちあげる方式しか知らない晴信も商人も不思議そうに首を傾げる
まるで蒸気機関車を『鉄の馬車が走ってます』と説明されたような顔で晴信は奇怪な光景を想像する。
圧力を利用した井戸ポンプを想像で思いつくのは流石の甲斐の虎も無理だった。
「実際にどうやって汲みあげているのかは見なかったのか?」
「へえ。あっしは最近何者かにつけられているようでして、これ以上無理をすれば怪しまれそうだったのですよ」
それは単に仕事をさぼっている言いわけではなさそうだった。
実際、信濃に帰還出来ているのは噂話を聞いたり別件で越後に渡り、堤防は遠くから見るだけで帰って来たものばかりなのである。
逆に言えば、詳しく調べようとしたものは皆帰って来なくなったことになる。
「一体、いかなる手を使っておるのだ。景虎よ」
毘沙門天の化身を自称する若き好敵手に問いかけるように晴信は言った。
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忍者とは甲賀や伊賀の場合、郷単位で修業し独自の流派を作るのだが、武田の場合は商人や僧侶、それに踊り巫女と言われる各地を巡回するのが当り前な職業の人間にスパイ技術を教え込むのである。
これが厄介なのは、彼らは元々一般人なためスパイかただの旅人か区別が付きにくい事。
書店員時代、一般客を装って2冊本を取り、1冊は買うけどもう1冊は万引きもしている客とか、上得意になって警戒が緩んでからこっそり盗む奴らであった。(現在は防犯タグが安価になったので簡単にばれます)
今まで社会の仲間だったのが背中から急に襲って来るようなものである。
「●国の国防総動員法(有事の際、国家が民間の人や施設を動員できるようになる法律)のせいで、海外で働いている●国人が国家に矯正されて急に産業スパイや破壊工作員になるような感じですね」
実際にそれで捕まった人がいるので、多分そんな感じなのだろう。
「と、いうわけで誰でも見る事が出来る情報は拡散されても仕方ないが、立ち入り禁止区域に入った人間は問答無用で捕まえる罠を説明するゾ」
この秀吉君が作った堤防。
堤防の外側に人一人分の通り道を作って、横には幅2mの水路を設置しているのだが『関係者以外立ち入り禁止』と書いている。
それでも入ろうとするやつは、字が読めない破壊工作員か、字が読める破壊工作員のどちらかだろう。
なので、遠慮なく罠を敷設して捕まえても問題は無いと思う。
ただ、忍びとは生還して情報を伝えるのが至上の掟。
単純な罠の見分け方位知っているはずだ。
言うなればハバネロを平気で食えるメキシコ人並に危険察知能力のプロである。
だとすれば
「ワサビに匹敵する異空間の罠を設置すれば良いだけだ」
というわけで、忍者の盲点となるトラップを設置してみたら結構な頻度で忍びを捕まえる事に成功した。
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越後のしのびは混乱している。
罠と言えばマキビシや落とし穴、それに紐にさわると作動する鳴子や弓などが主である。
だが、
「職人たちの足跡を踏みながら歩いていたんだ。当然罠の紐とかを警戒しながらな」
他人の踏んだ場所は基本的に安全。
警戒すべきはマキビシや後から架けられた縄などである。
ところが
「それが、何の変哲もない足跡を踏んだら急に地面が沈んで、鉛の固まりみたいなものがスネにガツンとぶつかってな」
ベトナム戦争で使われたブービートラップの小型版である。
「足にはすね当てをしていたから軽い打撲ですんだけど、それと同時に銅鑼のような音が鳴り響いて、それで御用というわけよ」
と、仲間に語る。
ベトナム戦争で使われたものは梃子の原理を最大限利用するため、顔にぶつかるように長めの板をつかっていたそうだが、こちらは敵に発見されないようにと材料節約のためにすね狙い、50cmくらいの長さにした。
この時代の日本人は背の高さがまちまちで、顔の上を空しく空振りしたり、胸板に当たる場合もあるから、確実さを重視したのである。
「俺は紐だな。気が付いたら足が急に引っ張られて縄が足を結んでてよ。刀で切ろうとしたけど、堀に宙吊りだから切りにくくって気が付いたら御用よ」
猪退治の基本トラップ、くくり縄のガチ版の罠。ベトナムだと竹や木のしなりを利用するのだが、それだと目立つので堤防の通路下に落とす形式に捕まったのである。下手をすれば頭が地面にぶつかり危険なのだが、幸いなことに、この忍びは背が低かった。それに
「…………まあ、おまえが一番災難だったな」
そういって足に添え木と包帯を巻いている仲間を見た。
「ううう…なんで俺だけこんな目に…」
と、うらめしそうに足と仲間を見比べる男。
彼がかかったのはトラバサミという罠である。
トラバサミとはギザギザ歯のついた円形の鉄を敷設する罠だ。
土に埋められた円の中心を践むとバネがはずれて歯と歯が閉じて足を挟むのである。
漢字で書くと虎鋏と書くように、バネを強くして歯も鋭利にすれば、かかった人間の足の骨が砕けるような威力もある。
そのため日本では現在使用禁止。
地雷みたいに足がなくなりはしないし、すね当てをしていれば初撃の衝撃は何とか防げたが、肉に歯が食い込んだ。
ちなみに、トラバサミの歴史について調べようと
『トラバサミ 歴史』で検索すると、各市町村のトラバサミ使用禁止のページばかりヒットするのでいつから使われたのかは不明だが、スプリングとか鉄をふんだんに使った道具は戦国時代には、まだ存在してないと思われる。
存在してたら小型地雷になってたかもしれない。
だが、彼らも馬鹿では無い。ただ、一つの油断と言うか安心でレミングスのように死地に自ら飛び込んだだけである。その手とは
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「罠用の木板にモルタルセメントを付けて、そこに共用わらじで足跡をつけてっと」
そういって、作業員の一人に足跡を付けさせる。
そして、その上に砂をまぶして普通の地面と区別がつかないようにカモフラージュしていたのだ。
「この作業員の足跡を置くだけで面白いようにひっかかりますね」
と、さねえもんが不思議そうに言う。
まあ、仕事と言うのは定石があるからな。
これが守れない作業者は事故に巻き込まれて現場から退場する事になるし、だからこそ定石に罠をしかければプロであるほど引っかかるという寸法である。
分かりやすく言えば、安全帯のロープに切り込みを入れたり、登山用のカラビナ(固定具の一種。開閉できる部品(ゲート)がついた金属リングである)を100kgでも耐えられる高級品から5kgしか支えられない百円均一のものに取り換えて渡すようなものである。
「良く分からないけど、分かる人には死ぬほどえげつない事をしていることは分かりました」
「まあ、人が歩いた後は安全っていう先入観があるからこそのひっかかりだな」
足跡というのは簡単に上書きされ消えるもの。
そう信じている人間だらけの時代だから、セメントで足跡を固めてそれっぽく偽装するトラップに引っかかりやすいともいえる。
単純だが、前例を知らないと誰もが一度は必ずひっかかる。
シューティングゲームで初見殺しなる言葉が生まれる所以である。
だからこそ目撃したしのびの仲間は確実に捕らえないといけないし、甲斐に返す訳にはいかない。
「天竺と豪州。いくならどっちがいい?」
そう尋ねる誘惑にかられながら、「でも彼らにも家族がいて帰らなかったら悲しむことになるんだろうなぁ」と思うとうかつな事は言えなかった。
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メキシコ人とワサビの話はヤラセの可能性もあると思いネットで調べたところ、結構なメキシコ人がワサビに悶えていたようなので例えとして採用しました。
余談ですが、私はココイチの一辛でも涙目になり3辛に挑戦した時は半分でギブアップし、辛いもの好きな友達に食べて貰いました。
でもワサビは平気です。不思議。
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