第160話 加賀の朱雀 サブロー

 この話はもう少し時間経過してから書こうと思っていたのですが、8インチフロッピー並に容量の少ない筆者の脳では維持しきれないのでもうネタばらしにします。

 なので、時間経過が短すぎるとツッコミを入れつつ温かい目で見ていただけると幸いです。


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 やあ、戦国時代の大きな流れを捻じ曲げてしまった豊後王から、みなさんへ質問だよ。

 3つの手紙が届いた時、悪い感じがするニュースと嫌な予感がするニュースと不気味なニュースなら、どれから読みたいだろうか?


 俺はどれも読まずに逃げ出す派である。


「はいはい。あきらめて加賀からの報告を読みましょうね」

 とさねえもんが強制的に手紙を突きつけてくる。

 な なにをする きさまらー!


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「えーと、まずはザビエルさんからですね」

 と、諸国漫遊の旅に出たイエズス会神父さんの手紙を読む。

「富士山の後に甲州に立ち寄りましたが、仏教徒の力が強く、越後も似たような状況だったため加賀に行くことにしました。加賀に入った時は敵視、迫害され死を覚悟しました。」

 うん。そりゃ仏教徒の農民が支配する世界でも類を見ない都市だからね。加賀は。いうなれば敵の本拠地に乗り込んだようなもんだ。

 よく生きてたな。

「えーと、『サブロー』なる人物が住民を説得し、教会建設に協力してくれました。これも主と殿のおかげです。完成の暁には再び手紙を書きます」

 と締めくくられていた。

 サブロ-?

 三河屋さんの御用聞きかなんかだろうか?ていうか


「主のおかげはわかるけど、


「さあ?」

 ふたりして顔を見合わせた。


「で、次の手紙はどれにします?」


「そのサブローさんかな?」

 そこには達筆な字(みみずののたくったような字)で、豊後殿から自分が目をかけていただいたことを感謝する事、命を救われただえでなく、こうして再起の機会を与えていただいた恩は一生かけて返すこと。などがかかれていた。

 字に勢いがあるが、最後の方は字がどんどん細かくなり、紙が足りなくなって焦りつつ行間を狭めたことがわかる。

 小学生の作文のようでほほえましい。

 これを見る限り、サブローなる人物は勢いで突っ走り、感情が制御できないタイプの人間らしい。

 1番目の建設会社の専務がこんな感じのひとだったっけ。


 なお最後に名前が書いて有ったが、サインみたいな字なので読めなかった。


 決して脳が読むのを拒否した訳ではない。

 この時代の草書はやっぱり読めないからだ。


 候が『。』で省略されたり、可が『お』に見える字なんぞ読めるわけがない。

 この書状も吉岡のじい様が解説してくれるから読めるのだ。

 ただ、となりでさねえもんと臼杵が『アチャー』って感じで頭を押さえている。

 どしたの? 

 まあ吉岡じい様もベッキーも吉弘兄さんも大した反応はないから、大きな問題ではないのだろう。

 ちょっと不気味だが先に進めよう。

「で、最後に加賀の一向宗テロリストのみなさん達からか…」



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「へー。あれから選挙で指導者を選び、総本山と交渉することにしたのか」

 

 京都での立場を考え、表向きは別組織にすること。

 また、反乱集団とはいえ武士と似た組織改革を行い『50人隊長』『100人隊長』などの名称を使って統治機構を一新した事が書かれている。


 ん?これって欧州の用語じゃないか?

「最初は異国の異教を迎えるなど言語道断と思っていましたが、彼の知識を利用する事で初めて我らが加賀は『国』として運営できたような気がします。と書いてますね」

 そういえば古代ローマ軍の基幹戦闘単位であるケントゥリア(百人隊)とか言うのがあった気がする。

「日本だと足軽大将とか侍大将みたいなものか」

「だとしたら、中々気を使った上手い表現ですね」

 武士が三河守とか上総守みたいな官位を自称するのは許されるが、将軍家や天皇家とはゆかりのない農民が官位を僭称したら、新王を称し関東に新国家を作ろうとした平将門公みたいに全力でつぶされるだろう。

 だが、異国の名称ならばそこまで目くじらをたてられないだろう。

 他にも農民兵の軍事改革や武器の見直しなどの改革案が端的に書かれていた。

 

 すごい。


 俺たちほどではないが、世の良い制度を取り入れて効率的な組織に変わろうとしている。まるで明治時代辺りの未来人でもやって来たんじゃないかと思う程の改革案だ。

 織田信長が追放された今、近畿を治めるのは意外と身分のしがらみにとらわれない加賀なのかもしれない。

 そう思った時


「追伸;『織田家とは仲良くしておけ』と以前言われて、最初何の事か分からなかったし、お家騒動が起こり、当主様は出奔はするしで訳が分からなかったですが、お言葉通り当主様を保護した事で武家社会という者が理解でき予想以上の収穫を得ました」


 と、こちらの予想もしない超展開が書かれていた。

「ああ…やっぱり、あれ『』殿の花押でしたか…」

 と、さねえもんと臼杵は頭を抱えて言った。

 三郎と言えば織田三郎信長なのだという。


 …………何で、選挙に負けて尾張を出奔した男が加賀の一向一揆に混じってやがるのだろうか?


 行くなら岐阜の斉藤道三とか、紀州方面で海賊やるとか、あまり面倒にならない所で暴れ回って欲しかった。


「それもこれも、豊後の方たちの助言のお陰です。尾張の選挙でも色々動いていたそうですが、我々への力添え誠にありがとうございます。と文章はしめくくられてますね」

 と臼杵がこちらを見ながら3つの手紙を読み終える。

 その言葉に全員の顔がこちらに集中する。



 ちゃうねん。




 一向一揆くんたち。俺が織田家と仲良くしろというのは、将来的に君ら信長さんに逆らったら虐殺されるから、そうならないように仲良くしたほうが良いよ。という意味であり、爆弾を自分の軍営に取り込めという意味じゃない。


 なんでもザビエルさんが来たとき、みんなは異教徒と言うことで追い出そうとしたらしいが地球儀を見た三郎君は

「なるほど。世界は丸いのか」

 と納得したらしい。

「たしかに、フロイスの記録でもの…三郎さんは地球が丸いことをすぐに理解したって書いてましたね」

 なんでも三郎君は水平線から船がだんだんと姿を顕したり、日本一高いはずの富士山が尾張からは見えないのがずっと不思議だったそうだ。

 だが、地球が丸いならそれら全てに説明が付く。

 これに趣味で火星を観測していた者も、大地が太陽のように丸く動いているのだとすれば明星(金星)の軌道が変則的なのも太陽を中心に回っているからだと考えられる。とガリレオやコペルニクスみたいな農民がいたらしい。


 そこから、この坊様(ザビエル)は仏教でははっきりと知られてなかった事を知っている。私は、この者の話を詳しく知りたいぞ。と空気を読まずに言ったらしい。

 そして反対する者たちに

「では、この世界をこの坊主以上に知っている者はいるのか?」

 と、空気を読まずに全員を論破し、一向衆が支配する加賀に教会を建設するという異業を成し遂げたらしい。



 つまり、犯人は俺。



 ……………………………………なんてこった。


 これから、俺たちの知っている歴史はどれくらいねじ曲がるのだろうか?

 この葉の上の蟻のような不安さでぼんやりとした不安たちこめる未来に思いを馳せ、やがて考えるのをやめた。


 なお、この三郎君が甲斐の虎に越後の龍と並んで、加賀の朱雀と呼ばれたり、北条さんが相模の亀という不名誉な名称を貰うのは後の話である。

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 今川さんは東海一の弓取り(ニンゲン)なので仲間外れですね。

 本当は『麒麟が●●』にしようかと思いましたが、大河に喧嘩を売る気概はないし、あれ結局は来なかったので四神にしました。

 麒麟?

 そこになければないですね。

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