第159話 あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる

 SDGs という言葉が昨今流行ってますが、

 1番目の『あらゆる場所あらゆる形態の貧困を終わらせる』って言葉がないがしろにされていると言われてその通りだよなぁと思う今日この頃。

 免罪符を購入していた人間の心理ってこんな感じで都合の良い部分だけを手に入れていたのかな?と思うと感慨深いです。

 ついでにペストみたいな疫病が流行った時の状況や大仏建立で病魔退散を願う気持ち、土砂災害になすすべなく押しつぶされる人間の気持ち、第二次世界大戦が始まる前の状況や、『●●●●みたいな独裁者が死んだら戦争終わらないかな?』と思っていた時期などとっくに終わり、ヤバい時期に突入した状況を追体験できるなど、一生知りとうなかった出来事が目白押しで、そろそろコロナ位は終わって欲しいものだと思います。


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 城づくりは新しい技術実験と失業者対策の意味を合わせて主要個所以外はのんびりと進めることにした。


 たとえばクレーンの原理(動滑車が1つあると力が半分で済む)を思い出したので、船から直接積み荷を引き上げられる装置を作ったりとかである。

「まさか大量の芋が入った木箱が3人の力で持ちあげられるとは…」

 さすがの知恵袋 吉岡長増も驚愕している。

「これは、わざわざ坂を上り下りしないので楽です!」

 と吉弘兄さんも驚いている。

 そうだろう そうだろう。

 全身運動でつづら折りの坂を移動するより、直線距離で荷物を持ちあげた方が楽だし早いのは誰の目にも明らかだ。

 そろそろ物理学の研究も進めてみるか。と、現代で2階建ての建物の上り下りが時間の無駄だからロープで引き上げる形式を提案したら脳筋先輩から却下された事を思い出しながら考えた。


 食料の生産量が増えたのと、それを保存、貯蔵技術ができた事により豊後と、その協力者(村上家含む)はだいぶ経済的に余裕ができたと思う。

 そんな折り、薩摩や種子島などで収穫された作物の買い付け分が届いた。

 サツマイモにタロイモ。

 これで飢えに苦しんで海賊に行く人間も少しは減るだろう。


 …となると良いなと思う。


 薩摩人と新撰組は飼い慣らすとか常識で縛るとかできないだろうから、とりあえず『ワタシ テキ チガウ』という状態さえ保てれば良いのだ。(偏見)

 

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「せっかくだしサツマイモはみんなにたべてもらうか」

 大量のサツマイモを鍋に入れて蒸して、みんなに振る舞うことにした。

 品種改良されたサツマイモを食べていた身としては甘くもないし繊維が多くて食べにくいが、隣で奈多さんが

「ほかほか…いえ『ほくほく』…というのでしょうか?温かくておいしいですね」

 と笑顔で言っているのをみると素直に美味しいと思える。

「まあまあね」

 と一色さんも言葉少なく言っているがお代わりしている。

「これ、塩をかけると味が変わるぞ」

 そう言って少し塩を加える。

「あら。甘みが増したわ」

 そう言うと、一色さんは奈多さんにも塩サツマイモを勧める。


 こんなふうに、みんな仲良く飯を分けあえたら良いのにな。


 いかにして『仲間以外は殺して奪い取っても良いじゃない』という戦国時代の価値観をいかにして変えるかに頭を悩ましている身としては、じつにほほえましい光景だった。

 こちらに来てから4年。作物の栽培も少し成功したし


「…………そろそろ次の段階に進むとするか」


 と、思った。


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「そろそろ甲斐に蕎麦やブドウの種を。越後にはイモを。土佐にはソバ、長芋、エノキタケを栽培できるように知識を解放しようと思う」

 

 と、信頼できる人間だけを集めて言った。

 本来なら食料の育成法は秘匿事項にした方が輸出などで有利なる。

 だが、それは『その作物の育成に適した土地を所有している』という条件がつく。

 シャインマスカットは日本でも栽培できるし、他の国では作れなかったから主力商品となっていた。

 だが、日本では育ちにくい南国のフルーツなどの栽培法は現地でこそ生きる知恵となる。

 豊後の場合、ブドウは栽培にあまり適さないようで、盆地の湯布院で何度かブドウ園を作ったが安心院ワインに負けている。

 なのでブドウの種は特産品の少ない甲斐で作ってもらった方が質の良い物が手に入るし、領主に人間の心があるならば民にも利益を還元して暮らしが楽になるはずである。

 またサツマイモみたいな救荒作物があれば、出稼ぎと口減らしのために冬場に戦闘に出るような真似をしなくてもすむはずだ。


 なので頻繁に戦争をしたり、農業的に土が貧しい國に対して、食料の種を一部解禁しようと言う訳である。

 そして豊後ではブドウを加工してワインにしたりジュースにする二次産業を育てれば良いのである。

「で、ブドウと蕎麦ですか?」

「ああ、土が肥えてない土地は蕎麦が良く育つ。しかももうひと工夫有るんだ」

 そう言って、俺は蕎麦を現代風の蕎麦にする。


 蕎麦が現在のように麺として食われるようになったのは江戸時代になってからだ。

 それまでは、そばがきと言われる団子みたいな状態で食べるのが一般的だった。

 手間はかかるが麺としての蕎麦が現代に残っているのだから、この特産品は十分な財産になるだろう。間違っても戦費などに回さなければではあるが…


「で、これらの品を誰経由で送ってもらうかだが…」


 こうした支援とか援助というのは、大名が行うといらぬ勘ぐりをされる。

 島津と大友は鎌倉時代から九州の守護という縁もあり、つつがなく九州を治めるために協力しているといえば説得力がある。

 だが、大友家が海の交易路がある越後ならともかく甲斐にまで援助するのは天下人でも気取っているのではないかと疑われかねない。


 そこで、いつもの手段を使うことにした。

「とりあえずザビエル師に運ばせよう」

 そう、宗教関係者を送りこむ手段である。

 越後の長尾景虎はバリバリの仏教徒で頑固というか毘沙門天フリークだから使えないが、武田ならいけそうな気がするのだ。


 ところが、

「あ、それ無理ですよ」

 と甲賀忍者の伝令さんと密接に連絡を取っていた吉岡長増が言う。

「え?なんで?」

「ざびえる様はただいま、加賀に教会が建てられておられるので、布教のために数ヶ月は動けないそうです」



「はい?」



一瞬、思考が止まった。そして、もう一度聞いた内容を思い出して、改めて言う。





「はい?」




 えーと……一向衆とは、仏教の一衆派。

 そう。仏教である。

 1550年あたりならデウス=大日と勘違いしていた時期もあったけど、もうそのような時期は終わっていたはずだ。

 なのに加賀にイエズス会の教会が建つと言う。

 独裁主義国家で独裁者の悪口を言ったり、民主化を叫ぶくらいありえない話である。


 ここから導き出せる答えは……………




「この世界バグった?」

 あまりにもあり得ない情報に、俺はさねえもんにそう聞くので精一杯だった。

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