第161話 ノッブの始める戦国農民チート

 気が付いたら40万PV突破していました。(恐

 それもこれも皆様のお陰です。

 ありがとうございます。これからも大友家の紹介をしながら、カオスと化した戦国時代を楽しく書いていきたいと思います。


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 昭和後期(1980年ごろ)の信長と言うと、父の位牌に灰をぶつけ、母親は弟を可愛がって愛されず、数々の奇行が目立ちながらもそれらは全て天下を統一するための準備だった。凄い人で、楽市楽座を思いついたり、鉄砲三段撃ちで武田騎馬隊を滅ぼしたり、神を恐れず比叡山を焼いて石山本願寺を攻めた無神論者だと思われていた。

 だが平成後期の研究で、信長はそこまで革命児でも破天荒でもなかった事が言われている。

 たとえば楽市楽座は六角氏がすでに始めていたのを模倣したものだというのは有名な話だ。

 鉄砲の三段撃ちは小説の創作話。

 信長は無神論者で、朝廷すら滅ぼそうとしていたなどといわれているが、現実には朝廷のために都を作りなおしているし、禅宗に傾倒したり熱田神宮などにお参りしている。比叡山は敵を匿ったりかなり舐めた真似をした敵だから滅ぼされたのを後世の僧が尾ヒレを付けて被害者ぶったのが顛末らしい。

 というか、信長は初対面の人間にはどのように対応すべきか慎重に検討した礼儀ただしく、しきたりを大事にする人間だった事がフロイスの記録からも伺える。


 では、新たな研究から浮かんできた保守的研究の信長が天下を取れたのは何故か?


 商業港の津島を得ていた。程良く都に近かった。部下に恵まれていたなどの要素は挙がるが、【利用できるものは敵の制度でもどん欲に取り入れる柔軟な思考があったから】ではないだろうか?

 鉄砲三段撃ちは創作だとしても、弱いなら勝てるように武器を替えたり、船戦でほうろく玉などに負けたら鉄の船を造るという思考の柔らかさ。

 絶えず進化する第一次世界大戦のような熾烈な戦いが、常時彼の頭ではリピートされていたのかもしれない。

 そのため、各国の中でよいと思ったアイデアをどう運用するかくらいは考えていただろう。


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「というわけで、これが今の加賀の現状です」

 と忍者さんの報告が追加で来る。


 まず信長さんはいろは歌ではなく、豊後で使っていたあいうえお表を量産して各地の信者に配っているらしい。

 しかも書き言葉ではなく、口語をそのまま文書にしているので特殊なルール(てふてふ=ちょうちょ、どぜう=どじょう。と読む。)を覚えずに、ひらがな表と見比べる事で住民すべてが文字を読めるようにしている。

「豊後でもこれをやりたかったけど、先を越されたか…」

 読む言葉としゃべる言葉が一致する。

 この言文一致と言われる文体は、江戸初期の雑兵物語、おあん物語などでも使われたが、一般化するのは明治の初期頃に、二葉亭四迷が広めてからだったと思う。

 というのも『正しい書状のルールに反するため』と家臣から反対されたからだ。

 現代でも、スカイプとかで砕けた表現使っているのに、急に【私たちにお任せください】と【私どもにお任せください】の使い分けをネチネチと1時間くらい問い詰めるバb…老害クソ上司がいたが、仕事しろよ…ではなく、こちらも同様に、武士は不便なビジネスマナーに束縛されているため武家社会では言文一致体は広まらなかった。


 だが、元々文字を知らない人間ならそんな弊害はない。

 最初から効率よく、読み間違いの少ない文体を素直に覚えられる。

「これ、かなり恐ろしい戦力アップになりますね」

 さねえもんが報告を見て即座に言う

「ああ」

 三国志の曹操とか、複雑な指示は紙に書いて伝達していたという。

 今の戦いは太鼓や鐘の音で兵を動かしているが、指揮官クラスには紙で書いた作戦を伝えた方が効率が良い。

 戦闘だけでなく文字が読めると日常生活でも効率化が進む。

 マニュアルを作れば一度の負担で恒久的に新人教育が出来る。

 第二次世界大戦でドイツはティーガー戦車を女の子に見立ててイラストをふんだんに使った「付き合い方」を学ぶドイツの「萌え」教本「Tigerfibel」なる本を作っていた。

 これで一通りの業務は理解できると言う訳だ。


 余談だが、即戦力を求める企業ほどマニュアルは無くて、自発的に作ろうとしたら時間の無駄とか言い出すのは何故だろうか。頭が戦国時代より退化しているとしか思えないのだが、そりゃ一年で新人一斉退職とか起こるわ。と思う。


 話がそれた。

 信長の恐ろしい所は、読み書きができる所でおわらず、【書き】の素質のある人間には武家書状の形式を教え、偽書状の作成をできるようにしたらしい。


 武家の書状は正式なものは特殊技術である。


 まさか農民主体の加賀が偽書状を作れるとは夢にも思わないだろう。

 これで織田家と浅井朝倉に越後の領主は指示系統に混乱を起こしているらしい。

 毛利元就2号が出来てしまった。


「ほかにも、剣術、槍術、計算方法、武家の故実も教えているそうです」

 と、淡々と言う。ネットのない時代、情報は貴重、というか金を払っても買えない秘伝などがある。


 実は、俺でも豊後の農民には出せない知識というのはいくつもある。

 簡単に火をおこす方法は火事を簡単に起こせるようになるし、武芸も無手の護身術程度。医術も制限をかけている。

 他国に広まると優位が崩れるというより、悪用すれば国を滅茶苦茶にできるからだ。

 現代日本だって、民衆は何とか生活できているから治安が安定しているだけであって、仮に自宅で●●●薬品と●●●●薬品を●●して●●●●●●●●●●●すれば(以下、検閲削除します)と、国を滅茶苦茶に出来てしまうのである。

 特に、殺人へのハードルが低いと言うか、推奨すらされている戦国時代にそんな知識を農民に与えたらそれこそコントロール不可になる。


 大名が大名としてかつぎ上げられるのは大名が武士の権益を守っているからだ。


 だが、武士社会から追放されたノッブの野郎にはそれがない。


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「フハハハハ!これが、武士の剣術、弓術、槍術よ!!」

 こちらが反乱を恐れて(もしくは農民に教えることで武士たちから反乱されることを恐れて)教えられなかった秘術を各地の信徒に惜しげもなくばらまいているそうだ。


 これで、国民皆兵。

 全員が人殺し。

 読み書きもできる優秀な強兵を手に入れたことになる。すばらしい。

(※本州から遠く離れた対岸の九州よりお送りしております)


 もしも、ノブさんが本州を統一できたならば『正式な幕府が復活したから豊後は織田家に仕えるぞ。あ、あと俺は息子か(弟でも可能)に家を譲って隠居するわ』とハッピーエンドを迎えることができるだろう。

(※危険地帯に隣接してない、海を隔てた九州よりお送りしております)


 いや、本当にこの世界どうなるんだろう?

 尾張の弱兵で近畿統一した織田信長。加賀の強兵を纏めたら大勢力になるのか、それとも自滅の道を辿るのか?

 智恵のリンゴを渡したヘビでも人間がこのように成長するのは予想できなかったであろうことを思うと、人間である俺が考えても仕方ない事だと諦めた思考逃避した



 なお信長は後に『武士とはなにか』という、武士は己の欲得で互いに戦争している癖に「領民をまもるため」と言って農民の生産物をかすめとり、本来朝廷に献上すべき年貢を不当に横領している盗人の集団だ。と武士の権威を徹底的に貶める、爆弾のような本を書く。

 その最後に


『この本を真の君主であり、民のために動かれた豊後の尊兄 大友様へ捧げる』


 と爆弾発言を書かれ

『兄貴!俺といっしょに地獄におちようぜ』

 という意味とほぼ同義の濡れ衣を着せられ、巻き込まれる未来が来るとはこの時はまだ思っても見なかったのである。

 何しろ他にも頭を抱える変化はまだまだあったのだから。


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 さいきん仮面ライダーカブトのキックホッパーのフィギュアを購入しました。

 頭の大きめな真骨頂より、昔のタイプの方がプロポーションが良くて好きです。

 やっぱり矢車の兄貴は最高ですね。

 影山、俺と一緒に地獄に落ちよう。 

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