第151話 大友の義鎮 一生の不覚(通算115回目)

やっと、納得のいく毒電波が落ちて来てくれました。


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『選挙制度とは、多くの領主や民の意見を反映するのもであり、侵略の口実に使うものではありません。ワイロや恐喝はほどほどにしましょう。出来る事なら、不正をした家は除外して下さい。間違っても、不正をでっちあげて討伐対象にしてはいけません』


 何を当たり前の事を、と思ったが中国地方の惨状を見ていると、基本的な忠告をせざるを得なかった。

 あいつら選挙制度を領土略奪とか邪魔者排除の道具としか見てない感じがする。というか絶対に見てるよ。アイツ。

「えーと『豊後では候補者を殺そうなどと考える不心得者は罰則を受けました。そもそも約束も守らないような奴が家臣から信用されるでしょうか?選挙とは誠実に国の政治を考える人間を選ぶための制度です。悪用してはいけません』」

 どの口が言ってんのかと自分でも思うが、詐欺師にも個体によっては人の心はあるので罪悪感を覚える時だってあるのである。

 まあ、選挙と言うのはヒトラーやプーチンが指導者に選ばれる事もあるし、選挙制度ってものすごい毒にもなるし、本当に事前の養育が必要なんだなぁと思った。




 …………もはや手遅れだけど。

 

 と、まだこの時は他人事のように考えていた。

 この時は。


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「よーし。うまく亀裂入れたら火薬を使うからの!設置しだい待避せよ!!!」

 ベッキーの薫陶を受けた八郎君が、部下たちに指示を飛ばす。


 現在、豊後では将来の大道トンネル(大分市内に入るときに通る必要となるトンネルで渋滞の元となる)のある大道地区の山を破壊中である。

 ここで採掘された石土はそのまま別府湾埋め立てに利用するので一石二鳥。

 そのためにしいたトロッコレールは道が開通した後はそのまま豊後国分まで連結出来るし、この地域は土砂崩れの心配もなくなりよい事だらけである。

「あのあたり、西の城と呼ばれる砦があったはずなのですが…」

 と、さねえもんが言うが、豊後府内ははっきり言って防衛に向かない。(※個人の感想です)

 北は広い海に面し警備は難しく、南は中途半端に小高い丘、その先にはそれなりに広くて昭和40年代までは牛が畑を耕していた古国府地区がある。

 言うなれば全てにおいて中途半端な狭い京都。

 守るにはあまりに不向きな土地なのである。

 実際、南北朝時代に肥後の菊池が攻めて来た時も、1587年に島津が攻めて来た時も、大友家はあっさりと府内の町を捨てて別の場所で防衛を行った。

 近くでガチで防衛に入るなら高崎山があるが、町の中心から10kmは離れているし標高も高いので、1587年の薩摩侵略時には全く使用されず素通りされた使い勝手の悪い城である。

 だったら、交通の便を良くしさっさと逃げられるようにした方が良いと思う。

「まあ、あそこの近くは処刑場だったので寺や神社もないから、宗教的な反対が無いのは幸いしましたね…」

 と、吉弘兄さんが疲れた声でいう。

 吉弘家は国東六郷満山の執業の家でもあり、奈多家が寺社奉行となる前はそれなりに格があったそうで、神社関係の折衝をお願いする事が多い。

 なので板挟みにならずに済んでほっとしたようだ。


 ちなみに以前

「義兄上。国東も危険地域多いから、山を壊しませぬか?」

 と尋ねたら

「かわいい義弟様のためならららっらららららら…」

 と、急にバグる程度には信心深いので、山の破壊には胃炎…もとい意見を聞くようにした。

「あのときは不信心者を成敗するか、当主であり義弟の命令に従えないから切腹するかマジで悩んでましたからねー」

 と、さねえもんが笑いながら言う。いや笑えねぇよ。

 あのときは「この大友の義鎮一生の不覚!!!」と平謝りしたものだ。


 災害防止とはいえ、やってることは太陽光発電補助金狙いの悪人とかバブル時期に悪役とされたゴルフ場開発のために自然を壊す銭ゲバと同じだからな。

 いくら便利とは言え、現地住民の感情に逆らって信仰対象の破壊なんてやるもんじゃない。

「それに、壊すべき山はほかにもたくさんあるからな」

 別府の竈門神社近くの亀川は入り江で海の底だから交通の便が劇悪である。

 大在も地面のほとんどは遠浅の砂浜だし、大分市街地のすぐ西、津留地域なんて河川整備されてないから常に地面は水浸し。すぐにでも埋め立てたい地域である。

 ただ、津波がきたときは避難場所も必要だからすべてを壊すわけにも行かない。


 開発事業は大変なのである。


 そんな計画を立てながら、昼休憩に入る。

 新緑の季節の大分は海から心地よい風が吹き込む。

 鉄鋼所や化学コンビナートの煙もないので佐賀関や日出まで見える。

「今度、奥さんたちをつれて黒島で貝掘りにでも行きたいな」

 大友宗麟は臼杵に在城のみぎりには三つ子島と呼ばれる場所で、貝掘りとか肴を釣ってその場で食べたりしていたそうだ。

 杵築や佐伯でも良いのだが、この時代に貝が取れるのが確定で分かっているのがそこだけだったりする。

 そんな事を考えていると、

 各地からの報告がまとめられてきた。

「米相場は安定して来てますね。逆に化粧品は口コミで広まったので、品薄になっているようです。あと、南蛮から来た珍しい食べ物が認められてプレミアが付いているので、米よりももうかるかもしれないと報告が上がってます。」

「ザビエルさんが食糧支援の礼に富士山のスケッチを送って来ました」

「北条氏康殿の娘が今川義元の御子 今川氏真殿に嫁ぐようです」

 あー、甲相駿だか相駿甲だか駿甲相だかの三国同盟が結ばれたかー。あれ1年おきに婚姻が結ばれたんだっけー。 

 などと全国の活動に耳を傾ける。


 そこで、一つだけ見過ごせない報告があった。


『尾張にて選挙制度実施の機運が高まっております』


 この言葉に、俺とさねえもんは2度見どころか5度見6度見した。

 そして、詳しい内容を読んで、大きく息を吸い込み

「この大友の義鎮!一生の不覚ぅぅぅ!!!」

「ホントてめぇ!じゃない!アンタなんてことしてくれやがったんですか!!!」

 と叫ばざるを得ないのであった。


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 年のためWIKIで信行くんの没年を確認して、まだ生存してたので「よっしゃあ!」とガッツポーズとりました。

 今の時点ではなかなか面白い電波を受信できた気がしますが、これから先どうなるか本当にわかりません。

 この世界、マジで賽は投げられました。(他人事

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