第133話 農業を加速するため、環境問題とエネルギー問題を解決する。
※ 世の中にはインドゴムノキというものが存在するそうですが、存在自体を知りませんでした。
ゴムと言えば中南米という思いこみで発見できてない状態にしてましたが、これを利用すれば戦国RTA(リアルタイムアタック)が2年ほど短縮できたかもしれません。
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さて、農作物博覧会を行い有用性を示した上で、各地に農作物を渡して数人の指導員を派遣した。
輪作問題を抱えて収穫の悪い土地を中心に作付けして様子を見ようと思う。
特に七つ森古墳近くで取れるスイートコーン畑は圧巻だった。あの甘くておいしいトウモロコシが食べられたら最高である。(※早い者勝ちなので道の駅や直売店では午前中には売り切れてました。買う時は早めに買っときましょう)
ほかにもトウモロコシとか本当に食べ物かわからない種とかもあるが、とりあえず育ててみよう。
十分に疫病対策をしてから。
ちなみに竹田市入田からちょっと離れたすごうの指導員には入田親真を任命した。当主殺しという大罪人だがトウモロコシの栽培が軌道にのれば生産できるだろう。まあ、大役をはたしたご褒美といったところか。
「ブラック企業の社長というか、横暴なヤクザがちょっと恩着せるようなムーブですね」
なんだと、コラ。
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さて、南米からの作物も到着し「さあ、これから農業チートだ」
…と成らないことが、農業のもどかしさである。
農業関係は時間がかかる。
植えたら次の日には収穫できるというチート能力があれば一年で300年分の発展ができるのだが、そうはいかないのが非ファンタジー世界の冒険。
これから地道な手入れと、疫病、それに自然との戦いとなる。
トウモロコシの場合、一つ部の種から一本の身に400程度の種がつく。
仮に500植えて8割育ったとすると1.6万粒。
それを植えなおして約500万粒。
ここまでくれば各地で栽培する分も確保できるし、主食として流通もできるだろう。
結果が出るのは最短で3年後くらいだろうか。
当然 台風などで被害を受けない事が前提である。こればかりは運を天に任せるしかない。なので、天を信じて俺は俺の仕事をしよう。
「と、いうわけで新種の農作物を育てやすくするために、次は環境問題とエネルギー問題を解決しようか」
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「なんでやねん」
そんなつっこみを受けた。
「失礼。…えーと、なんで戦国時代の農業を発展させるために環境問題とエネルギー問題の解決に取りかかるんですか?」
真剣に考え込むさねえもん。
うん。ちょっと説明が必要だよな。
環境問題というと石油や石炭を燃やしたり、有害物質を垂れ流す公害問題が現代日本だと取り上げられている。
だが、『環境問題』という言葉の意味は『人間の活動に由来する周囲の環境の変化により発生した問題の総称』である。(WIKIの環境問題の項より)
それにエネルギー問題とは、資源に乏しい日本が石油やガスなどを輸入に頼り消費しているいびつな状態、つまりは持続可能な生活を自給自足で維持できるようにするにはどうしたらよいか?という類の問答である。
「大分というか九州にガス田や油田はありませんよ?(2022年現在。試掘は福岡で実施中)」
「いやいや、もっと身近なエネルギー問題があるじゃないか。さねえもん」
戦国、というか明治時代と平成では、日本の風景で大きく異なる点がある。
「何かありましたっけ?」
「森林だよ」
明治時代の写真を見ると、生活圏内に存在する山には木がまばらにしか生えていない。
なぜなら昔は木の枝は材木や薪に使われていたからだ。
今では薪を使う必要はないし、材木も輸入材が入ってきて木の需要はほとんどないが、昔は木材の端材がないと料理が出来なかったし暖房も使えない。
木材は食料に次ぐ生活必需品だったのである。
「ああ、そういえばこちらの時代だと禿げ山は当たり前で考えたこともなかったですが、確かに木は全国的に少ないですね」
合点がいった様子でさねえもんが言う。
人口が増えた江戸時代には材木の勝手な伐採は禁止されている山もあり、治山事業が行われて言い、古くは奈良時代から同様の禁止例はあったらしい。
ガスや炭が安価で手軽に手に入る現代だとピンとこないが木材は人類が生きるのに必要なエネルギー資源だった。
「津久見の薬師寺家の人が、『明治時代には燃料をとるために山に登って薪を拾っていた。山のてっぺんには松が3本しか生えてなかったから、あのあたりは地元民が三本松って地名で呼んでいた』って言ってました」
今では、樹木があふれているため松の木は見えなくなっているという。
そんな点在する木が地名になる程には日本は樹木が少ない時代があった。
「たくさん木があるのは鎮守の森と呼ばれる神社の付近あたりで、花粉症が日光あたりの風土病で終わっていた時代ですからね」
この時代、花粉症の自分にはちょっとありがたい。
なお、俺の母方の祖父は大正のはじめに県が管轄していた山で山林監視員的な役目に就いていたという。
杉の穂先を60cmあたりで切り落とし、束にした穂先を20cmくらいの穴に指し、しばらく置く。
ある程度すると穂先から根っこが生えてくるので、それを苗木に1mくらいの間隔で植樹を行い10年ほど育てればそれなりの樹木となる。
これを『直挿し造林』と言って、日田ではよく使われている植林法である
(※スギの直挿し造林 - 大分県ホームページhttps://www.pref.oita.jp › uploaded › attachment)
なお、この作業。大人は賃金をもらったそうなのだが、幼少時の母は穂先を集めて苗木を育てる所から手伝ったのに小遣いすら貰えなかったと恨んでいた。
他にも宿題よりも夕飯の準備とか風呂を沸かすための薪を燃やさないと怒られて夕飯抜きだと脅されたとか、そもそも電気代がもったいないからと、家族が仕事から帰るまで電気をつけさせてもらえなかったとか、今だと児童虐待と言うか毒親のようなエピソードが少し見え隠れしたのだが、聞こえなかったことにした。
話がそれた。
こうすることで20年たつと立派な杉林ができあがり、林業の発展につながった。この伐採からの植樹を各地の山々で周期的に繰り返せば、安定した収穫が可能であり、大分の林業は安泰…と思ったらやすい輸入材が入ってきて材料としての杉は使い道がなくなったという。
今では花粉症をまき散らす存在として大分の山を彩る存在となっている。
「ただまあ、山に植物があふれると洪水の恐れが減るし、山菜も育つし役にはたってますよ」
とさねえもんがフォーローにまわる。
うん。でも花粉症という人類の敵まで生み出してるから、もう少し切っても良いと思う。
「とまあ、日本は木材需要が非常に高かったわけなのだが…」
その割に江戸では建物がバンバン燃えるし、薪として無駄遣いをしている。
「無駄…ですか?」
「無駄だね」
まず、炊事。次に風呂。調理をするのに薪が要る。
これを電気やガスにできたら良いのだが、そんな技術はまだない。
だが、一つだけ節約できる部分がある。それは
「保温技術だ」
日本の建物は夏の湿気対策のために風通しが良いと言われている。
だが、考えてみれば貧乏で材料が足りないから薄くてすきまの多い板作りの家=風通しが良い家ということなのだろう。
古い古民家とかがそんな感じだ。
現代建築だと壁板が一枚とかマジであり得ない。
板に隙間が有れば簡単に外気と同等の気温になるし、断熱材は土壁が有っても、戸板にはそのような機能が無いから、薪を燃やしてもすぐに熱が逃げてしまう。
この時代の一般農家の家とは風が直接吹かず、雨や地面の冷気からは身を守れるだけの『ほぼ外で寝てるのと大差ない家』である。
なお材料費をケチって断熱材を薄くした家があったが、まるで外にいるんじゃないかと感じられるほど夏は暑いし冬は寒い家ができあがったものである。
「だから、冬場にそれほど薪を使わなくても暖まるような部屋。断熱がしっかりした場所を作ったり、上等の防寒着を作ってみようと思う」
こうすれば薪の消費量は減るし、効率的にエネルギーを使えるはずだ。
そのための下準備は進めてある。
そう、この時代に俺が来た時真っ先に研究を進めさせたアイテム。
布団である。
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