第131話 儲けた金で農業ガチャ
みなさん、しいたけヨーグルト好きですね(コメント欄より
あれ、美味しく作るにはどうすべきだったのかな?と思いましたが現在でも杵築で『しらすソフト(クリーム)』なる狂気の食べ物があるので、何かの表紙で復活するかもしれないですね(白眼
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農業というのはギャンブルである。
どれだけ精魂込めて育てても収穫前に台風がくればおじゃんになるし、病気で実が付かなければ収入が0となる。東以外を山に囲まれ台風の被害が比較的小さい大分でも、400億近い被害が出ている。
なので、国をあげて保護するのは民の生活を守る上で必要な措置だと思うのだが、現実はそうでもないらしい。
そう。悪夢の言葉、自己責任である。
筆者は10年前に無職で、なんか仕事がないか産業振興系の所に相談したら
「今は菊の需要が高いから、それを育ててみればどうか?」
という、無責任なアドバイスをされたことがある。
何が無責任かと言えば、まず農地を借りるか買う資金がない。
次に育てるノウハウもない。
仮にそれらをクリアしても、食品でない鑑賞用植物の菊を育てて、ブームを過ぎた後どうやって食っていくのか?
これらの疑問点を聞いたら特に助勢なども無く、そこで会話が終了したことがある。
どう考えても、リスクの高い自営業をやって借金を抱える位ならバイトかサラリーマンをやった方が割が良い。そう思いブラック勤務を経て今でもサラリーマンをやっている。そちらの方が安全だからだ。
『農家はやってほしい。でも失敗して借金抱えても国は保護しません』
これで農業の担い手が足りないと言うのは頭がおかしい。
台風で被害にあったら支援金や融資の口利きをする自治体もあるそうだが、それでも完全に保証されるわけではない。祖父の集落では農家を止めて都会に行った人間が数多く居る。
それくらい農業というのはリスクが高い。
楽に稼げるならうちの母親は農家を続けていた。
現代でもそんな状態なのだから、食ってくだけで精一杯の戦国時代の農家が冒険できるわけがない。
そこで、登場するのが研究所である。
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「殿。このような島で一体何をされておられるのでございますか?」
佐伯湾の先に浮かぶ小島、大入島(おおにゅうじま)。
主要産業は漁業。水産加工業も盛んで、「佐伯イリコ」、「佐伯チリメン」として知られるちりめん・いりこが名産である。
1999年度(平成11年度)から島の農水産品を原料とした特産品づくりが行われており、「おおにゅうじまん」というブランドでごまだしやたこめし等を販売している。ごまだしラーメンは中々美味しいし、雪ん子寿司という肉厚の椎茸、さっぱり味の青じそにシャキッとした食感の大根を一番上に雪を見立てて乗せる握り鮨は大分B級グルメグランプリ受賞殿堂入りとして佐伯では有名だ。
そこに日田の郡老や国東の領主を集めた宗麟はこう言った。
「これより、物産博覧会を行う」
「物産博覧会?」
大友家は1550年より、無月さんを中心に化学だけではなく農業や水産業の育成をこの島で進めていた。
情報隔離もあるが、県内に疫病が発生しないよう、臼杵の津久見島や佐伯の大入島で海外から持ち込んだ品種の実験栽培を行っていたのである。
「こちらは、南蛮より取り寄せたイモの育った姿でございます。痩せた土地でも育ち、地面の中で実がなるため台風の影響を殆ど受けませんでした」
「これは天竺より取り寄せたサトウキビと呼ばれる品種で御座います。高級品の砂糖が取れまする」
見た事も、聞いた事も無い舶来品の作物を見せられる領主たち。
「ここは冬だと言うのに随分と温かいのだな」
「はい。ここは南蛮と同じ気温となるよう御屋形様が考案された『はうす栽培』なる方式で育てられております」
給仕役の家臣が説明する。
家3軒分位のガラスで囲った温室も少しずつ栽培しているのだ。
その原理を理解できた領主はいなかったが、寒い冬に暖かく過ごせるのは非常に心地よかった。そして
「こちらに保存や加工していた食材がございます。実際に食べてみてください」
と、目の前の作物から取れた料理を指しだされた。
「この白いのは、もしかして砂糖ではないか?」
当時の砂糖は高級品である。中国から輸入されていたが、一般人にはまだまだ手が出ない値段だった。
現代で言うなら、一食1万円の海鮮系調味料とか高級食材のような扱いだ。
そのようなものを無料で差し出す給仕は、あっさりと
「はい。こちらこの島で取れた砂糖となります」
と、まるで『うちの裏庭でとれた松茸(市場価格;1個5000円)です』とでも言うかのような気軽さで告げる。
舶来品ではなく国産と聞いて国東の領主は眉に唾を付けたが、御屋形は高級品のしいたけの栽培に成功している。ありえない話では無い。
「この島で、とれたと言うが、どのようにして作ったのだ?」
日本では砂糖は甘蔦やテンサイなどから抽出するのだが、わずかな量しか取れず高騰化していた。すると目の前の給仕は
「目の前の笹のような植物から採れます。宜しければ、その工程をご覧にいれましょう」
と、言った。
情報が金になる時代に、このように公開する事は珍しい。あまりにも旨すぎる話だと疑うのも当然なので
「やあ、
とさねえもんがにこやかにあいさつをしながら近付く。
「これは天竺に生えていた植物なのですが」
そう前置きして
「おそらく国東の地でも育つと推測される植物です」
その言葉に他の国東領主が一斉に顔を向ける。
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この博覧会の目的は、各地の領主に新商品を見せて、自分の領地で育てたいと思わせる事である。
この2年間育てて問題のない品種を与えて生産をしてもらう寸法だ。
与えられたものを育てるだけなら簡単と思われる方もいるかもしれないが、初めての作物を育てるのは一筋縄ではいかない。
土質や風土によって育ちには差が出るし、栽培方法は聞いてても実際に育ててみると勘違いで枯らしてしまう可能性もある。
分野は違うが、大分では明治15年から魚の卵をふ化させ、稚魚の放流を始めてみた。
この時、ふ化させたのは新潟から取り寄せたサケだったので4年間に23万匹放してたが2年目に80cmに成長した1匹だけが捕獲できただけで失敗に終わった。
『寒い地域で育つサケが南国で生育できるわけがない』
今ならわかりそうな事だが、このような事業は公共団体が行わないとできるはずもない。
わかりそうな事と分かるのは、このような実験でとれたデータのおかげである。
ちなみに、今の大分では毎年鮎の放流を行っており、漁業権を購入すれば大分川で釣りができるようになっている。安心院ではスッポンが養殖され、湯平ではコイ。竹田などではエノハも養殖されている。
農業や水産業はこうした目の前の作物との対話と試行錯誤である。
一度成功した体験を持つアドバイザーがいれば問題解決は早いが、そうでなければ一人で解決策を考えなければいけない。
自分で考えて問題を解決するのは大事な事だが、失敗すれば餓死する農業でそんな悠長な事は出来ない。
そんな中で、作物が育っても育たなくても賃金をもらえ、生産性よりも発見を重視して研究を続ける集団をつくり、思考錯誤の負担を予め国が実験し、なるべく成功率を高めるのが国と研究所という機関の在り方の一つではないか?という発想から大入島の研究所は動いていた。
問題は、どこの土地にどの作物を育ててもらうか?という点だったのだが、これはあっさり解決した。
「明治時代に盛んだった大分の地場産業を思い出してみました」
大分歴史事典という本の『地場産業』という項目を読んでいた記憶を掘り起こして、かつて盛んだった特産物を書き出してくれたためだ。
すごいや無駄知識。と思ったが空気を読んで黙っていた。
「まず、日田は杉ですね。下駄の材料として植えられ、下駄の生産量だけで193万足造るくらいでした」
でも、杉って成長するのに時間がかかるじゃないか。
「ですので、これは長期投資になるでしょうね」
次に蝋(ロウ)。国東・速見・大分・日田などではハゼの実を絞ってローソクの材料を造っていたという。特に国東の清末、日田の草野・大蔵などの製造家が有名だった。
だが、安い西洋ローソクに押されて廃れた。
「あと、変わり種として砂糖がありますね」
明治のはじめ、国東の西部で盛んに造られ国東や速見、海部まで広まったという。
40年で750軒が製造し黒砂糖3万斤の他白砂糖・赤砂糖(カナソード。さとうきび100%使用の茶色い砂糖)も生産したが輸入品に押されて衰退した。
他に縫針、茶、竹細工、みかんもある。
今残っているのは茶とみかんくらいだが…
「砂糖とロウは輸入品によって衰退したんだな」
「逆に言えば、今なら造れば金になるという事ですよ」
競合相手がいなければ廃れない産業なのだろう。
ここらは一応研究をさせておこう。
そんな感じで育てた作物と、実際に育つかどうかわからない作物も実験的に育てた。こちらでダメなら種が島で育てれば良いのだし。
取り敢えず、高級品が育つ国東、海部、日田へはこれで協力が得られるだろう。
問題は、これらの食品が育たないその他の地域である。
「不公平にならないように、するにはどうするかなぁ」
これが一番の問題だった。
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お母さん(農家の娘)はいいました。
「農家だけはやめなさい」と。(仮面ラ●ダーカブト風)
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