第130話 経世済民
今日はちょっと電波の受信状況が悪い感じがしますが、準備回として投下します。
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さて、自由と平等の力で毛利の驚異から九州の危機を先延ばしした俺は、次の計画を立てることにした。
それは
「他国の平定でございますか?」
「朝廷工作ですか?」
「不満分子の粛清ならいつでもお任せあれ」
まず、この戦闘民族どもの意識改革だろう。
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『経済について』と大書した紙を一枚貼り出す。
「経済とは何ですか?」
「経済とは経世済民、
と、大昔大学で勉強した怪しげな知識を披露する。
この言葉自体は中国・東晋の葛洪の著作『抱朴子』内篇(地眞篇)に登場するらしいが、日本で広く知られるのは江戸後期。
貨幣経済が浸透して経済の「社会生活を営むのに必要な生産・消費・売買などの活動」という側面が強調されるようになっていったという。
(WIKIの経世済民の項目より)
「これに大分生まれの福沢諭吉先生たちが、英語のeconomy(エコノミー)に該当する概念として経済を当てたので、商売中心の考えが一般化したようですね」
とさねえもんが補足する。
つまり経済とは元々政治・統治・行政全般を指す語だったのである。
まあ、昔は国が食料とか生産物を一度吸い上げてそれを分配するんだから、経済回すにはそれらの要素が必要なのは間違いない。
「そのために必要な水の確保は既に行っている。あとは生産物をたくさん取れるようにするために、集めた税を利用する事だ」
『民→生産物→祖税として徴収→国→徴収した租税で国を整えて世を経め、民を済う→民が再び生産物を作る』というサイクルを書く。
この時代の武士は『民の土地は自分が貸してやってる』という意識が根底にあり、税収も『奴隷が死なない程度に残してやる』という意識があったのではないかと思えるほど容赦なく取り立てる領主も見られる。
だが、生活に余裕が無ければ生産性など上がらない。
朝夜休まずに働いて豊かになるのなら南米やアフリカ諸国はとっくに日本を追い越して成長している事だろう。
ようは労働力を効率よく効果的に動かせるかが経済発展には重要であり、それが出来るのは国とか領主などの政治家の手腕である。
「例えば、豊後では今まで4000人が半刻かけてそれぞれ汲んで来た水を自宅に居て飲めるようにした」
これを一人の人間が行ったとすれば83日はかかる労働である。
「他にも、今までは歩いて移動していた大分川周辺の道をトロッコで素早く移動できるようにもした」
このように、生活に必要だが無駄な時間や労働を効率化して生活しやすいようにするのが政治経済の基本と言えるだろう。
現代社会なら渋滞を解消して1時間かかっていた道を30分で移動できるようになれば、車のアイドリングで消費されるガソリン消費量が減るし、県民が余裕を持って生活できるようになる。
大分市では宗麟大橋という橋を架ける事で20分はかかる渋滞地帯が10分で通れるようになった。
「つまり、お前たちが豊かになるには土地を奪うよりも、領民が楽に生活できるようにする事が重要なのだ」
1970年にはやったスポーツ根性もののような、あさっての方向でも努力すれば良い。みたいな世界では無く、入念な準備と分析で世界を変えなければならない。
迷信と我慢比べの極致である戦争が蔓延している戦国時代の世界とは真逆の考え方である。だいたい、武芸ってのはやりたくも無い我慢やきつい移動をどれだけ出来るかが重要だと考えている節が有る。
一応、鉄砲とか投石機などの機械でそれらの神話は一部崩れているものの、頭の固い連中はいままでのやり方を変えないだろう。
農業なんて天候次第で取れ高が変わるギャンブルなのだが、仮に収穫が悪くても自己責任でしっかりと税は盗られ、下手をすれば奴隷として売られても文句は言えない地域もある。
「前に開放した奴隷とか、土地を持たない水のみ百姓が借りた種モミ代を返せないから自分で自分を売るってパターンもありましたもんね」
そんな環境で働いても労働へのモチベーションと言うかやる気は上がらないだろう。
そこで、考えたのが
「という訳で、一郡に付き一つの特産物を作ることにします」
未来に出された成功例の丸パクリである。
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進撃の巨人で有名になった大山町は山間部で稲作に不向きだった。そのため、梅や栗などの特産品を独自に作り『梅栗植えてハワイに行こう』というキャッチフレーズの下、山間部でも発育可能で、農作業が比較的楽な農作物を生産して出荷するほか、付加価値が高い梅干しなどに加工して販売する運動を行った。
このアイデアをパクリ、県で行ったのが大分の一村一品運動である。
前も解説した気もするが、今までは大友家主導で大友家の土地だけで行っていた。
そこで、今回は各地の領主に任せ、その惨状もとい結果を観察してみようと思うのだ。うまくいけばそれで良し。失敗したなら何故失敗したのかを考察し次に活かしてもらおうというわけだ。
この体験を通じて、各地の領主には領地と言う枠を超えて協力した方が生産性が上がったり、色々便利である事を学んで頂きたい。
一応、大友家直轄地で生産した食料で豊後一国は賄えるが、エコノミーの方の経済と言うのは国民一人一人が豊かになる事で発展する。
つまり、大友家だけが豊かになっても意味が無いのである。
そのため、毛利が攻めてこないこの3年の間に豊後で成功モデルを作り、その後で肥後や肥前でも同様の試みが出来たら良いなと思うのである。
「まあ、嫌な予感しかしませんが、国が発展するには必要な過程ですからね…」
秀吉が刀狩りとか検地を行ったようなものである。
ものすごい反発は予想されるけど、目標をはっきり持って成長を目指すにはどうすればよいか考えないと、某ブラック建築会社のように達成不可能なノルマを達成するために、家族や親せきに工事をお願いするような羽目になってしまったり、営業課長が無能すぎて現場作業員にまで仕事を取ってこいという『それはお前の仕事だろ』みたいな事態になってしまう。
相場と言う得体のしれない者を使って得たあぶく銭と、技術チートで得た優位を活かして今の内にやらなければならない事である。あと2年もすれば、どこかの天才が真似して優位が崩れないとは言えないからだ。
「まあ、成功率は10%くらいだろうけど、やらないよりはましだろう」
そんな事を考えながら、国政と言うギャンブルにまずは500億円ほど賭けてみたのである。
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