出羽守＝他者の例を引き合いに出して物事を語る人のこと。特に、保守層は海外と比較して日本を批判する人を「海外出羽守」と呼ぶ。（ＷＩＫＩより）

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（※本作はフィクションです。実際の人物・団体・著作物には一切関係がありません。あと、今回引用が多めであり政治的な内容を含みますが、不快な方は☆マーク部分は読み飛ばして頂けると幸いです。電波が俺にこんな話をかけとささやいているので仕方が無いんです）

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　アメリカのグランドキャニオンには柵がない・・・

　偉大なる谷と呼ばれるアメリカの雄大な谷には、人が落ちないための柵が無い。

　何故ならアメリカでは全てが自己責任だからである。アメリカでは、自分の安全は自分の責任で守っているわけだ。

　これがもし日本の観光地で事故が起きたら、どうなるだろうか。観光地の管理責任者は新聞やテレビで轟々たる非難を浴びるだろう。なぜ柵をつくらなかったのか。なぜ管理人を置かないのか。なぜ立札をたてないのか・・・

　日本は「自己責任の原則」がないからダメなのである。

「～アメリカに行った事がない出羽守より～眠瞑書房刊」

　という筆者が軽蔑する３流物書きが、現地に行った事も無いくせに架空の話を書いた本が有る。（※本作はフィクションです）

　この本が刊行された当時、多くの日本人が騙されたのだが、これは元外務省の人間が、アメリカかぶれの著者に語った嘘だったりする。

『何故なら、グランドキャニオンは『観光地』であり、訪れるのはアメリカ人だけでなく外国人もいるからだ。』とその人物は自著で暴露してたりする。

　言われてみればその通りだと、学生の自分は思い、知ったかぶりの詐欺師には気をつけようと思ったものである。

　なので筆者もアメリカには行った事が無いのだが、先ほどグーグルで「グランド・キャニオン国立公園」と検索すると、遊歩道などには柵がないが、観光地として整備された場所ではしっかりと柵が立てられ、落ちない様に警告がされていた。

　だいたいグランドキャニオンは全長277マイル（446km)もあるので、当然柵の無い場所の方が多い。アメリカ政府としても観光地でもない場所で勝手に落ちるのまでは責任が取れないだろう。

　このガセ情報を伝えた元外交官は、薄っぺらな知識とアメリカかぶれな３流物書きが恥をかくのを期待したのだろうが、ネットの発達していない時代に書かれたこの話は多くの人間に信じ込まれ、ネット時代でも真実だと思いこむ人間を生みだし、騙された人間によってこの３流は政治家として活動してたりする。

　思い返すと、日本をダメにした『自己責任』という言葉はコイツが広めた気がする。嘘を使って持論をもっともらしく語る詐欺師の様な出羽守は国賊と同意義なのかもしれない。

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「豊後は無礼者ばかりで申し訳ない」

　と一人　小寺に接近を計る男がいた。

「失礼ですが、どちらさまでしょうか？」

「拙者は一万田鑑相と申す」

　対馬に父が送られた一万田の息子である。後に宗麟を裏切る鑑相の兄　鑑種では無い方の息子である。

　豊後に一万田家は人数がそれなりに居る。

　鑑景・鑑通・鎮之を筆頭に地方領主が１０人ほど。彼らがそれぞれ役職名で名乗るのだから豊後沼にそこそこ浸かっている筆者でも系図が無いと区別がつかない。

　余所から来た小寺ならなおさらである。

　ただ単に小寺は『大友義鎮から不興をかって対馬に飛ばされた一族の誰か』というイメージだけは持てただろう。

　それゆえに、宗麟は彼を小寺に接近させたのである。

　ちなみに、一万田鑑相の息子である鑑実は兄と違って最後まで大友家に仕える大忠臣である（※一万田氏は系図が複雑なうえに鑑相・鑑種は罪人として系図から抹消されているパターンもあるので血縁関係には諸説あります）。

　そんな余所から見れば裏切り者候補、後世から見れば安牌の彼を毛利のスパイに近寄せたのにはわけが有る。

　一万田は宗麟への不満をあらわにし、「大友義鎮は自分達の一族どころか血縁者に対して無礼である」と、特権意識に凝り固まった人間を演じていた。

　そして上水システムや、セメントによる燃えない家などを指し「珍妙な物を作り、美しき豊後の姿を破壊した」と『頭の固い無能』ムーブで、便利で豊かな姿を説明していく。

　製造過程や仕組みは一切教えず、ただただ豊後の凄さだけを教えているのだが、小寺にとって飴と鞭の鞭が９９％を占める豊後では、それだけでもありがたい話だった。そして南蛮のタロイモや、タピオカを始め、本式のパエリア（黄飯でない）とか団子汁を振舞うと、小寺はその物質的豊かさに目を丸くした。

　物価がジェットコースターのように上下するインフレ中の中国地方ではついぞ味わえない満腹感に珍味。

　奇妙な姿ではあるが、便利な生活。

　家族がいなければ間諜ではなく、本気でここに住みたいと思ったものである。

　そして、それとは別に自分達は貧しい暮らしをしているのに、このような豊かな暮らしをしている豊後人を恨めしく思ったりもしたのである。

『この国をいつか平らげ、自分達がとってかわってやる』

　分不相応と言うか身の程知らずな欲望を小寺は抱いた。

　その豊かさに舌を巻きつつ、一万田を『家柄にあぐらをかいて、不平だけ並べる無能』だと内心馬鹿にし、豊後の内情を知り漬け込む隙はないか一万田に色々と探りを入れてみたのである。

　あくまでへりくだって、自分は下賤で逆らう気は一切ありません。と後ろから指す気満々な本心を押さえながら。

　それに対して一万田は小寺のおべっかに乗ったふりをして小寺を格下に扱い、油断したように若い当主へ反抗的な領主の名をいくつか挙げた。

「彼らは皆、大友家の庶流で我こそは当主に相応しいと思っている者たちである。本州の方々と友誼を結びたいと思う者たちじゃ」

　とわかりやすい餌を提示する。

　だが、その数は予想よりも少なかった。

　そこで、小寺は

「なるほど…しかし、豊後では代替わりが起こって数年経ちますが、特に争いも無く治まっております。それは何故ですか？」

　と、これまた1550年に起こった肥後の争いを知らないふりして尋ねてみた。

　すると、一万田は悪魔ですら卒倒しそうな嘘をついた。曰く

「豊後では、一紋衆をないがしろにし、領主たちに媚を売る『選挙』なる制度を、御屋形様が提案されてな。それで多くの民が騙されたのじゃ」

　この時の一万田の表情は『よくもまあ、あんなクソみたいな制度を提案しやがって』というものだったが、事情を知らない小寺は『大友家の分家と言う特権階級が、権力を失ってひがんでいる』ように勘違いした。

　小寺は大名とは血縁がない小領主である。

　いわば毛利家と同じく大国の間で虐げられた中間管理職の一員であり、平等と言う言葉に引っかかり易い地位の人間だった。

　そのため、領地の多寡ではなく一人一人の意見が聞き入れられる選挙と言う制度は魅力的に感じられた。

　言うなれば『アメリカは移民の国であるから自由や平等がある。日本みたいにしがらみや変な上下関係はない』という言葉に希望を抱く若者のような心境である。

　ネットが発達すると『黒人差別が酷いし自由はあるけど自己責任が凄い。上下関係は日本より凄いし同調圧力も半端ない』という内情が現地人から語られたりするのだが、情報の発達してない1980年あたりまでは多くの人が純粋に憧れを持っていたし、実際に渡米しても少し滞在しただけでは分からないものである。

　筆者もクソみたいなブラック企業（本屋兼ＣＤ屋）に在籍していた時、社長の息子である上司が新入社員に

『この店では新人がＣＤを大量発注したけど１００枚ほど売れ残った事があった。だが、系列店一丸となって売り込んで売り上げを上げた事がある。だから安心して挑戦しなさい』

　などと寝言を言っていたが

『その新人はお前だし、系列店一丸となったのは社長の息子でコネ入社した権力によるもので、売れ残ったのは３００枚だし、１００枚は不良在庫として未だに売れ残ってるのに、なぜ武勇伝のように語れるのか？』

　と思ったものだ。

　建て前と内情は言いようによってかなり変わる。

　短期間で豊後の良い部分だけを見せられた小寺は、豊後が国を上げて自分を騙しているとは気がつかない。

　詐欺師ほど自分が騙しても他人から騙されてるとは思いもしないように、あっさりと騙され『自由』と『平等』を信じ『選挙とはなんてすばらしい考えなのだろう』と思った。

　そして、帰国後は『豊後では新参者や非血縁者でも発言権が有る～』とか『我が国は遅れているが豊後では自由が有り～』と豊後かぶれの出羽守になってしまったのである。

　それも『選挙と言う、家の強弱に関わらず発言権を持てる素晴らしい制度』をさんざん吹聴したうえで、である。

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　出羽守は自分の支持する国を過大に評価し、失敗ですら成功だと言い張るので非常にタチが悪い。

　２０２０年にコロナウイルスが流行し始めた頃、『米で人気急上昇、クオモ・ニューヨーク州知事がこの1カ月でやったこと。感染者76人で緊急事態宣言』と題し

『ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ氏。”爆発的感染（オーバーシュート）”の中心となっているニューヨークで、抜群のリーダーシップを発揮。』という副題まで付けているニュース記事が２０２２年でも残っている。

引用；https://www.businessinsider.jp/post-210445

　当時の『ニューヨーク州では3月31日現在、感染者が7万5795人、州内の死亡者は30日の1218人から1550人に急増と発表した』とあるのだが、それを受けて『クオモ氏の対応は素晴らしい。日本はクオモを見習え』という出羽守がネットで大量に発生した。

　日本ではまだコロナの感染者が2000人しか出てなかった時に、である。

　厚労省発表；https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10636.html

　その１年後、氏は『約9000人の入院患者が陰性が確認される前に介護施設に移されていた』と非人道的な悪行が露見し『介護施設での死者数について実際は1万5000人に上っていますが、先月末まで8500人ほどと過少発表していたことも発覚しています』と報じられた。

　引用；https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000207009.html

　そして2月27日にはクオモ氏からセクハラ被害を受けたとして11月までクオモ州知事の保健政策顧問を務めていたシャーロット・ベネット氏（25）が告発し、色々悪事が発覚して弾劾調査が開始され、辞職した。

『ニューヨーク州のクオモ知事は、人工呼吸器を連邦政府は400台しか送ってこない、2万6000人に死ねと言うのかと批判。「私はNYを愛している。NYは皆を愛している。愛は勝つ」と感動的な言葉。日本のトップリーダーたちには、このように皆の心に訴える演説がない。支持率と再選しか念頭にないからか』

　という、黒歴史発言まで飛び出していたのが夢のように今では誰も彼について語らない。

　引用；https://togetter.com/li/1667754

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　日本も出羽守の言う事を信じてニューヨークのようなトップを選んでいたら、とんでもない事になっていただろう。

　出羽守は鬼・悪魔と並ぶ害悪なのである。（※本作ｒｙ）

　こんな嘘すぐにバレると思うのだが、今でも日本には水道民営化というフランスやアメリカなど出羽（では）、失敗したと言われている制度を日本で行おうと暗躍している連中もいるので、油断は出来ない。

　さて、この一見公正で素晴らしく聞こえる制度を小寺は多くの土産とともに中国に持ち返り、ほうぼうの領主に話した結果がどうなったかと言うと――

　――のちに毛利元就をして『豊後狐』と呼ばしめた、最悪の中国地方領主の内乱の元となった選挙制度を広める事となったのである。

　これにより、中国の統一は非常に遅れ、九州の平穏は保たれたのである。

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「さねえもん。中国では３か月後くらいから始まるかなー。選挙」

「豊後の再演が起こるのはその2カ月後ですかねー」

　全くの他人事として他国の不幸を語る極悪人２人。

　さすがに良心に耐えかねたのか、一万田を通じて「せめて飢え死にだけはしないでくれよ」と土産にタロ芋などの種を渡したのだが、それがかえって『こんな便利な食べ物を渡してくれた人間が嘘をつくわけがない』と善良な信者を生みだし、混乱に拍車をかけたのだから運命とは残酷である。

　まあ、毛利が北九州の小領主をたぶらかして反乱を誘発させたことで死んだ人間もそれ位居たはずなので、その損害を今世ではお返ししたと考えればそこまで酷い話ではないだろう。知らんけど。

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　前回はミスリードを誘った終わり方で、そこから話をふくらませようとかと思いましたが、現実にリンクするたとえ話を探してたら、そっちに力が入ってしまいました。

　結果から逆算した後だしじゃんけんな話ではありますが、筆者は２０２０年１月から『外国に比べて日本は感染者が少ないんだから、海外を見習う必要はないだろう』という意見に、賛同をしてはいたので御容赦ください。

　『ＮＹの方式にも見るべき点はあった。流石アメリカ』と呼べる程度に感染が押さえ籠めていたらどんなによかったかと思いますが、現実は非常であり、イメージと聞きかじりの出羽守情報だけで物事を語るのがどれだけ危険か、戒めも込めて今回の話を書きました。水道民営化の話の、出羽（では）という部分は自戒の意味も込めた一文です。

　正しい情報と正しい対策を選択する事により、これ以上疫病の被害者が増えない事を祈りながら筆を置かせて頂きます。