第123話 豊後式選挙法 第一条『頭部を破壊されたら失格』(ヤケクソ)
選挙制度に関わらず、新しい事というのは民衆にそれを受け入れる下地が必要なのだろう。
前に建設会社のせんむが大企業が行うような新しい制度を取り入れた事がある。
有給休暇も取り入れ、給与の評価制度も不公平が無いように低い給与の人を昇級したり、改革を断行したのである。
ホワイトを目指す改革に喜ばれるかと思ったのだが…
「結局、老害たちが俺たちの時はこんなに優遇されてなかったズルい。とか言い出して色々難癖をつけだしたんだよなぁ…」
特に生涯年収という概念を3度説明しても理解できず、仕舞には「自分が理科できない説明しかできない奴が悪い」と自分の不勉強を棚に上げて文句を言う奴とかもいたなぁ…。
選挙という制度も、フランスみたいに不平等で理不尽な社会を変えたいという欲望や、一部の人間が選挙権を独占しているのはズルイ。俺たちにも欲しい。という当事者が制度を受け入れる下地が必要なのかもしれない。
そういった経緯をすっ飛ばして完成された制度だけを導入しても、うまくいかないのだと思う。
目の前の『候補者を殺ってしまえば勝てるんじゃね?』とか考えている奴らを見ると特に。
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対立候補の殺害は発展途上国でポピュラーな選挙方法として根強い人気がある。
フィリピンでは<激しい選挙戦を勝ち抜く手っ取り早い方法。それは対立候補を殺してしまうことだ>と書かれるほどで
2018年5月4日から12日までの9日間の選挙で、5日の時点ですでに20人の候補者が死亡…いや殺害されていたし、ロシアでは大統領に逆らった人間の暗殺がとりざたされている。
(引用;ttps://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/05/20-48.php ttps://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/post-7124.php)
コロンビアでは麻薬撲滅を訴えた市長が就任の翌日に殺害…ごめん。これは麻薬組織に乗ったられた国の話だった。(リアルグロ話なので引用元の張り付けは控えさせていただきます。この国は本当に酷いです。)
「まあ、最終的にこうなりますよね…」
命のやりとりをしないための選挙だが、最終的に原点回帰するのは皮肉な話である。
「本当に、人間の思考って時代が違っても似たような傾向になるんだなぁ…」
とどのつまり、対立候補を消してしまえば選挙する前から勝ちが確定するじゃん。という事に気がついた連中による妨害活動のための集合が報告された。
…っていうか内乱じゃん。これ。
「日本の場合、警察という最凶の暴力機構があるので、なかなかお目にかかれませんが、軍隊が力を持っていたりクーデターを起こした国は選挙中の内戦って良くあることですからねー」
ヤクザの跡次問題みたいな状況がよくある世界ってなんかヤだな。
このいつも通りの合戦作法を盛りこんだ選挙戦法を見て他の候補たちは
『じゃあ、暗殺すればええんやな』
と考えたようで、腕のたつ侍の勧誘が進んでいると言う。
斜め下というか直下降の回答をありがとう。お前ら皆 死ね。
「とりあえず、戦闘だけは止めるか」
仕方がないので、府内で闘争を行おうとしている奴らだけでも鎮圧する事にした。
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「おい!御屋形様が征伐に出られるとの話じゃぞ!」
府内から少し離れた郊外。
内乱の集会所こと選挙事務所に、府内にいた武士があわてて入って来た。しかし
「は!あんな若造なにするものぞ!(戸次)伯耆や(吉岡)越前殿の後ろ盾がなければ何もできぬ若造ではないか」
と、候補者の
「しかし、前に一万田殿が模擬戦で破れていたではないか」
と、冷静な声で他の支援者がたしなめた。しかし
「模擬と実戦は違う。あのような遊技で満足しておるような若君を恐れてどうするか!」
と、この男は威張ったように言い放った。
まあ、豊後での戦闘は20年前に山香や玖珠で大内や菊池と戦ったあと、大きな戦が無いため、この男も実戦はなんたるかを知らなかったりするのだが…。
領内でのもめ事とか小競り合いでの実戦経験と、圧倒的優位による勝利体験が彼の自信につながっていたのだ。
彼らの人数は武士で30人。
少ない数に聞こえるが、これに10人の家臣や小者が加われば500人の中勢力となる。
市中で暴動を起こせば大騒ぎにはなる人数だ。
大友家でもここまでの人数を動員できるのはかなりの上位となる。
普通なら、大名でも警戒すべき相手となっただろう。普通の大名なら。
しかし、
「大変じゃ!」
「どうした?御屋形様が来られたか?」
小馬鹿にしたように支援者が言う。
「化け物が!鉄の化け物が取り囲んでおる!」
その言葉に外に出れば、大きな鉄の猪の様な箱が周囲をぐるりと囲んでいた。
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戦国時代の騎馬隊とはどのような戦い方をしていたのか?
詳しいことはわかっていない。
ただ、人間より大きな生き物が馬蹄を響かせ、人間では絶対にかなわないスピードで突撃してくる恐怖感に雑兵は逃げ腰になり、一気に戦列が崩壊したのではないか?という推定をされた研究者がいる。
「その話を聞いたとき、納得はできたけど実感はできなかったんですよね」
さねえもんはそう語った。
「でも、現代社会で二回身を持って体験できた事があります。」
一度目は別府市。
二度目は広島・呉市。
そう、自衛隊の見学会である。
「小型と言われる16式機動戦車でも全長9m。高さ3m。飛び乗るだけでも一苦労な巨大な鉄塊です。個人の力で破壊はまず無理。護衛鑑に至っては全長248 m。戦おうって発想自体が浮かびませんでした」
敵の攻撃は一切通じず、こちらは致命傷を与え放題。そんなワンサイドゲームを簡単に想定できる軍事力が騎馬隊を進化させたものなのだろうと言う。
「というわけで、人力で動く戦車を作ってみたわけだが」
全長5m。厚さ2mmの鉄板を木に張り付けた虚仮威しの模擬戦車である。
こんな事もあろうかと、ベッキーを責任者にして選挙監理委員軍を創設しておいて良かった。5日で造った鍛冶職人さん達に感謝。
「なんじゃこりゃあああああ!!!!」
「化け物か!御屋形様は化け物と手を組んだのか!」
と、大騒ぎである。
実戦がどうとかほざいていた奴は真っ先に逃げ出していた。
「矢だ!矢を放て!手火矢(鉄砲)も使え!」
30車ほど並ぶ異様な鉄の塊に遠距離攻撃を試みる内乱罪予備軍たち。
だが悲しいかな、その程度の攻撃力では表面に傷しか付けられない。
矢が当たっても鉄板で弾かれるし、避弾経始を意識して傾斜させた装甲は銃弾でも貫通出来なかった。
いわばこの時代の最強の楯。
これにマシンガンを積めば、この時代の戦闘では先ず負けないだろう。
一度だけは。
ここ一番の大勝負で使おうと思っていたけど、こんなしょぼい争いに投入する事になるとは思わなかった。コンチクショウ。
この無敵の楯で円陣を狭くし、屋敷を取り囲むと、さしもの武士たちも大人しくなった。
こうして、小さな内乱は事前に制圧する事ができた。
動力は自転車式の足こぎペダルか手押しなんで1日15kmしか動けないから府内の暴動鎮圧にしか使えないのだが、こんなこともあろうかと用意しといて良かった。
「あまり強くしすぎると、これで他国を攻めろとか言われかねませんからね」
うん。そんな面倒なことしたくないし、鉄も農機具とかに回したいもんな。
安全な選挙制度のために早めの無力化によって、武力衝突を回避する事ができた。ついでに、見せしめの意味も込めて関係者全員ブタ箱にぶち込んだ。
いつブタ箱を作ったって?
昨日だよ。突貫工事だよ。ジョバンニが一晩で頑張ったよ(ガチ切れ)
「さて、諸君らの処遇だが…」
あまりの酷さに、逮捕された関係者を集めて事情を聴き、収拾をつけることにした。だが、
「わが名門の出である●●家が政権に参加するのは当然であろう!」
「いや、我が家こそが相応しいのであるのに、道理に合わぬ事を言うな!」
「仮にお主の家が当選しても、そんな結果は受け入れられぬ!いずれ弓箭で決着をつけようぞ!!!」
と、こやつら全員、自分の候補者が負けたら反乱を起こす事だけはわかった。
お前ら、ここが県庁所在地 兼 警視庁みたいな場所だって分かっててテロ宣言しておられるのでしょうか?
というか、あの兵器見てもそういう発言するってことは、俺をまだまだ舐めているのだろう。もうやだ、この蟷螂の斧たち…
「わかった。じゃあ、こうしよう」
混乱する裁きの場で、俺は解決方法を伝えることにした。
「戦って勝った方の主張が通る。負けた方は全員死刑」
「それ、普通に合戦ですよね」
完全なデスゲームの提案に罪人たちの顔色が変わる。
お前たちがやろうとしていた事は最終的にはこういう事なのだが、『いや、なにもそこまで…』などと日和った事を言い出した。
想像力足りてないんとちゃうか?おどれら。
「で規定 第一条『頭部を破壊されると失格』」
「「「「「「「「「「それ、普通に死にますよね」」」」」」」」」」」
さねえもん以下、その場の全員が抗議の声を挙げる。
それに何か問題があるのだろうか?
「それに何か問題があるのだろうか!?」
俺の返答に怯えの色が見える。
確かに酷い決断だ。だが、お前らのやってた事だって十分酷いじゃないか。
…パトラッシュ、俺もう疲れたよ。この40歳児の悪事を一々注意するのに。
おまえら勝手にガンダムファイトでもして候補選んでくれ。勝った奴らにはキング●ブハートの称号とかつけてやるから。
ちょうど当選者数4人だし。
「第二条 相手の実家を攻撃してはならない
第三条 破壊されたのが頭部以外であれば、何度でも修復し決勝を目指すことができる。
第四条 候補者は己の体を守りぬかなくてはならない。
第五条 一対一の闘いが俺的には望ましい。鎮圧がしやすいので」
かすかな記憶を頼りに、ルールを宣言する俺を真っ青な顔して見つめるテロリスト予備軍たち。
結局、第9条 負けた陣営の親類縁者は冷凍刑に処すと家族の身にまで危害を及ぼすぞと言うに当たって、ついに『話し合いで決めますのでどうかお許しください。マジで』と白旗を挙げた。
そして、他門衆の中でもそこそこの大きさの家である奴留湯家(将来の門司城城主)、大津留家(豊後大野の長官)、一昔前に加判衆だった雄城氏、それに朽網氏を加えた4家を民主的に選び出し、平和裏に決定する事が出来た。
やはり最後はや暴力‥‥!! 暴力は全てを解決する。
という戦国の真理を知ることが出来た有意義な選挙戦であった。
………………………今まで無駄にした時間を返して!!!
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選挙制度って、本当に善意とか社会的責任の理解とか、あるていど社会的に成熟してないと機能不全起こすんじゃないかなぁと、今回調べてて思いました。
選挙結果が不満だからテロや内戦が起こらない日本って本当に文化的で社会的に成熟してますね(しろめ
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