第121話 戦国時代の不正選挙 無差別級アリアリルール
俺は小学生のころに福沢諭吉の伝記漫画を読むと
『私がふとある人に「ワシントン(大統領)の子孫はどうなっているか」と尋ねたところ「ワシントンの子孫には女があるはずだ,いまどうしているか知らないが誰かの内室になっている様子だ」と答えた。
アメリカは共和国。大統領は4年交代ということは百も承知のことながら源頼朝・徳川家康というような考えがあったが今の答に驚いた』
とあり、一般人がトップにもなれる選挙制度の先進性を凄いなぁと思ったものだ。
「ワシントンさん(男)には子供がいなかったそうなので、そりゃ誰も知らないはずですよ」
え?そうなの?
「あの人は子供がいないので『1788年3月に「マサチューセッツ・センティネル」紙は,ワシントンを選出すべき理由を枚挙して掲載したが,その中には「息子がいない――したがって,世襲の後継者という危険に我々をさらすことがない」というものが含まれていた』そうですよ」
(引用;ttp://donttreadonme.blog.jp/archives/1023525125.html など)
どうやら、その後結婚した女性に連れ子がいたそうだが、その子供はワシントンの子供では無いので『知らない』という答えになったそうな…
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そんな事を考えていたのが1月ほど前の事である。
今はどうかって?
選挙というのは人類の血によって成長した制度である。
フランス革命で王家の血によって産声をあげ、各地で平等の名の元に権力者たちが不正を行い、自分に都合の良いようにルールを書き変えてなるべく人が死なない様に『平等感』を与える戦争の一種である。
という感じだろうか?
何故このように変化したのか?
順を追って話そう。
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日本では明治時代には高額納税者にだけ選挙権が付与されたが、その時代から票を金で売買する不正は存在したという。
なので、当然ながら豊後武士たちも票を確保するため、ワイロや暴力を使いはじめた。
ただ、ここで意外だったのは、この蛮族たちは思ったより賢かった事である。
「候補者は4人。投票者は600人だとすれば150人確保すれば絶対勝てる訳じゃな」
などと3日前まで言っていた連中が
「我が一族だけでは勝利できぬ。ここは連立して候補を立てて票田を集め、確実に一人は候補者をねじ込もう」とか「候補者が16人いたとして、最低1票が投じられた場合、584票が実質的な票数になるから、そこから分布の偏りを考慮すれば実質的な当確数は100人前後。もしも単独候補が200票獲得すれば、75票でも当選はありうる。山香とか国東の奴らに金を握らせて味方にしろ。逆らうなら妻子を人質にとれ」
などと、恐ろしい学習能力で選挙制度の勝ち筋を理解し始めたのである。
おまえ等、普段は物覚えが死ぬほど悪いのに、なんでこういう時だけ実力発揮してんの?
「まあ、兵数が決まっていて天候や不慮の事故に左右されない争いなら計画が立てやすいんでしょうねえ」
というと?
「戦ってのは数で勝っていても戦い方で負けます。だから、勝率アップにつながる大義名分とか、戦上手の武士を味方にしたりと複雑な計算をしたうえで運を天に任すわけです」
なるほど。
「ところが、選挙の場合は数だけが重要。天気や戦術など考えずに単純に票さえ集めてしまえば勝てて、誰も死者が出ないなら、これほど勝ち方が分かり易い戦いはないじゃないですか」
ルール付きでの勝負なら真剣に頭を使えるのか…
まあ、急に後ろから襲われて大軍が瓦解するとか、味方だと思ってたやつが裏切って前提が変わったりするのは合戦では良くあることだ。
大変な思いをして人数を集めても、ちょっとしたミスで勝ったり負けたりするなら精神論とか根性論に逃げる奴が多くても仕方が無いんだな…
色々世の中の理不尽と戦ってはいたんだな。あいつらも。
まあ、ここで一つアレなのは数の多い方が勝ち。という戦国時代にも合致した部分は理解されたが『よりよい政治を行うために、社会全体の役に立つ人を選ぼう』とか『ワイロや脅迫などの不正はいけない』という公職選挙法の精神は一切聞き入れられなかった点だ。
合戦時の味方集めの手法そのままで票を集めようとしているので、金品はバンバン動くし、関が原の戦いの前に大名の妻子を人質に取った石田某成みたいな手法も平然と行われ出した。
アカン。それ皆からスカンくらって裏切られる手や。と言っても聞き入れられなかった。
豊後の選挙は、まるで某漫画の「正々堂々、卑怯な手で勝負させてもらうよ」と言わんばかりの直接的な権謀が飛び交っていた。(他人事)
まあ、ソ連とかロシアでも
例え不正な手だとしても、それだけの人間を財力とか暴力で動員できるなら、一族を従える事ができるのかもしれないなぁ…と9割方諦めの境地に至っていた。
特にソビエトの祖となったレーニンは、選挙が実施されると得票率24%しか取れず第二党になったが、「この選挙では人民の意志が正しく反映されなかった」と主張し、「憲法制定議会はソビエトから権力を奪うことを図っており反革命である」と言いがかりをつけて議会は強制的に解散させた。
こんな横暴が通ったのは多くのレーニンとズブズブの関係者が暴力とか冨を握っていたからだろう。それでも100年近く続く国を作れたのだから、暴力を有する野郎と言うのは国の維持は出来るらしい。
考えてみれば現代の選挙というのも『この人なら自分の生活を良くしてくれるだろう』という期待とともに送り出すのだ。
前にバカ息子が使えないので議員にしたとある会社の話のように、市議会議員なんて企業利益の鉄砲玉の集積地みたいな場所でもある。(※本作はフィクションです)
『消費税という悪法を潰してくれたり、表現の自由を守ってくれるという利益のために投票する』のも、『この人が当選すればウチの会社に便宜を図ってくれるからごり押しするぜ』というのも、どちらも自分にとって良い国にしてくれるだろうという期待は同じである。
「日本でも『津軽選挙』とか言われる金をばらまく不正で今も議員は選ばれているようですし、強い者が勝つと言うのは当分続きそうですねぇ…」
と、さねえもんは他人事のように言う。まあ、他人事なんだけど。
(津軽選挙の詳細解説は次回)
津軽選挙と呼ばれる東北の選挙でも、チラシに金を仕込むのは当然で、豊後では今「自分が当選したら土地をやる」とか「家宝の刀をやる」という証文まで出回っているらしい。
公職選挙法というのがいかに大事かよく分かる醜い銭合戦だね!……死ねばいいのに。
そこから1週間が立つと「一人一人に金をばらまくよりも、票を数えたり管理する人間を買収した方が効率が良くないか?」と言う事に気が付いた奴も出たらしい。
ベッキーや吉岡にまでワイロを送る超絶バカまで出てきたと報告があった。
…………送るなら、もう少し相手を選べよ。お前ら。
エスカレートする手段の選ばなさと、暴走っぷりに頭が痛くなってきた。
これ、決まったとしても内乱で覆そうとするやつらでるんじゃないかなぁ…
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長いので中編に続けます。
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