第95話 ジャ●コが町にやってきた。ヤァ!ヤァ!ヤァ!
気が付いたら15万PVを超えていました。
これも皆様のおかげです。誠にありがとうございます。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
辺境の田なk……地方都市にお住まいのみなさまの近くに郊外型ショッピングモールが来たことがあるだろうか?
よく「我が名はイ●ン。商店街をつぶして、そして我も消えよう」などという既存店を壊滅させる悪のように書かれることが多い。
だが、自分の住んでいた町の場合
『出店したら商店街がすでに死滅していた』
という最悪の立地で、人通りが少ないうえに
『テナントで入ったマ●ドやケン●ですら3年もしないうちに撤退。同時に出店した別店舗の本屋やカーショップも撤退して空き店舗状態』
という悪夢のような立地なのだが、なんとか閉店せずにがんばっているという救世主というか慈善事業のような存在である。
そんな例外はさておき、大資本が地方に参入すると金の流れが変わる。
大資本は薄利多売。独自の流通ルートがあるので珍しい品が入るし値段も安い。
佐賀のような地方都市に生活雑貨の豊富な品ぞろえの店がでれば小規模店舗はひとたまりもないだろう。
ちなみに『田舎だとしがらみとかつきあいで地元の企業は強い』というイメージがあるが、近所にディスカウントショップが出来たら酒屋があっさり潰れたから日本人の義理人情ってあてにならないと思ったものである。
そんな時代よりも400年前の日本。
近代的な商売法が大資本を引っ提げて喧嘩を売れば勝敗は明らかである。
大友札で取引をしない店舗があれば、そこには商品を卸さず、独自の販売で売る。
車の存在しない時代に荷物を集積して地方に運ぶのはそれだけで商売になるほど不便な時代である。
大友家に逆らうなら、そんな零細企業は根こそぎ消すと言うわけである。
おまけに、新しい化粧品や未知の食品まで出すのだ。
これでは既存店に勝ち目はないだろう。
利に聡い商人は大友家に即座に従がった。
それゆえに佐賀の商人たちは「銅銭なんて価値がない」と強気に断る挙にでたのだ。でなければ店を畳まないとならなくなる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はいはい。みなさーん。この道具はこうやって使いまーす。そうすれば、こんな土でも、この通り簡単に穴が掘れます」
唯一の例外として農具販売者が大友札の使用を拒否したため、豊後から兵隊…もとい、販売員を派遣してみた。
ナメられたら潰す。
ビジネスの世界は非情なのである。
豊後で開発された新商品の数々を見て住民は驚きながらも商品を手に取った。
それを豊後から派遣された商人が実際に使って使用法を教える。
「この道具はこうやって、この靴って道具を使っておもいっきり踏むと。と」
そういってシャベルに体重を乗せて地面を掘る。
「この『しゃべる』という道具は便利じゃのう」
新製品は受け入れにくいという教訓から、便利な道具でも実演した方が良いという配慮からだった。
「こんな質の良いクワは初めて見た」
従来の品も鉄の部分を増やして耐久性を上げたし、ゴム手袋でグリップ力を上げておいた。
「この南蛮渡来のイモは珍奇な見た目じゃが、値段が安いのに旨い。それに塩も苦みがないしうまい」
とサクラを交えて商品を宣伝する。
これらの高品質な商品を大量生産することで安価で提供する。
一地方の商人では太刀打ちできない、大資本による嫌がらせを堂々と展開する。
余談だが、大分に初めて古本屋のブック◎フが来たとき、昔ながらの古本屋さんが5件潰れた。
1990年代の地方古本屋というと良い商売だった。
値段は定価の8割。本は貴重品だったので、どんなに古くても7割以下となることはほとんどない。
品ぞろえも古く、カバーが無いなんてのは当たり前。
日焼けやシミで汚れた本でも値引きはなく、絶版本は倍以上の値段が付いていた。
そこへ最新刊でも半額、中には100円コーナーなんてものもある。カバーなしの本は買い取り不可。
買い取り金額は全国一律。店主の気分で買い取り金額が変わるなんて事はないうえに、東京からの売れ残りが回ってくるので品ぞろえも良かった。
それくらい地方の流通というのは近代になっても遅れているし、対応も違うのだ。
神のごときサービスを体験した未来人に横柄な商人が勝てる理屈はないのである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「商人を根絶やしにするつもりか…」
龍造寺隆信は警戒をした。
地元の商売を根こそぎ取られたら、銭の収入が減る。そして産業が消える。
そこまでは理解できた。
だが、そうなると何故 紙幣と言う紙切れを配っているのかが説明できない。
相手の本心は分からないが、なるべく地元の商人から商品を購入し、流通を取られないように警戒させた。
だが、佐賀領主たちの困惑はこれで終わらなかった。
「水道を整備する?」
次は水道事情を改善すると言い出した。
佐賀は中央の山からの土砂が堆積してできた土地だったため、佐賀駅が前年に大雨で床上浸水したように、龍造寺のいる村中城も大雨が来ると浸水する時もある。
城の周囲は水はけが悪く、沼や泥地が多かったのである。
だが、その水はけの悪さは兵の進軍を妨げる天然の要害でもある。
「大友様より、土木部隊と名乗る方々が、水手に集まり、なにやら不穏な動きをされています」
との報告を受けて、堀を埋めたり水の流れを変える事で城を弱体化させるのが目的かと思った。だが
「屋敷に居ながらにして、水が使えるじゃと?」
土木部隊と名乗る一軍は、変わった筒を各地に配備し『蛇口』なる金属を繋げる事で川に水汲みに行かずとも水が使えるように佐賀を作り変えた。
反乱を起こす川には堤防を作り、農業用のため池を山地に幾つか作成をした。
そのおかげか今年は洪水の被害が殆ど聞かれなくなった。
さらに農業の技術指導もされたようで、豊後から運ばれた肥料を使うと作物の出来が非常によくなったとの報告もきた。
「豊後は何が目的で、ここまでしてくれるのじゃ?」
「それがしにも見当がつきませぬ」
隆信と腹心の鍋島は互いに首をひねった。
属国とは言え下剋上が当たり前の世の中でここまで他国の手助けをするとは一体何を考えているのだろうか?
行基様のような聖人を気どりたいのか、もっと悪辣な何か企みでもあるのか。
他人とは裏切るものであり、善意とはかなり疑ってかかるべしと考えている隆信は得体の知れない恐怖を感じながら変わりゆく領地を眺めるのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「支配国とはいえ、他国を富ませるとは何をお考えですか!」
得体の知れない恐怖を感じているのは豊後の家臣たちも同様だった。
自分達の代表者が敵国になるかもしれない他国をどんどん発展させているのだ。
怒り心頭といった様子で大友館につめかけた。だが
「おやおや、初めは『
と揶揄すると、黙った。
水道やため池技術は最初、豊後領主たちにも受け入れなかった。
だが、水汲み不要な快適さを他人が味わっているのをみると「ずるい」と思ったのだろう。少しずつほかの領主も真似をするようになった。
川に行かずとも水が使える。
垂れ流しだった雨水も有効に活用できるので干ばつの心配が無い。
ここまで生活が快適になると、他の仕事に時間を使え、国は豊かになった。
それを他国が手に入れるのは豊後にとって脅威になると領主たちは実感してくれたようだ。
ここにくるまで1年半。非常に長かったなぁと感慨深い。
「それは、たしかに殿の卓見でございました。認めます。しかし、だったら何故その便利さを肥前に伝授するのでございますか?」
そう言われて、
イギリスにデイビッド・ヒュームという国際開発学者によるとアフリカの人道支援をする理由として
1;道徳的義務 困っている人を助けるのは当たり前だから。
2;道義的責任 欧米日などによる他国の植民地化与えた損害に対する補償
3;共通利益 援助で国が発展し、めぐりめぐって自国のためになる
4;自己利益 開発援助は、物資を供与する形で行われる。
などがあるとしている。
「まあ、それ以上に便利な技術を与えるのは大友家に反乱を起こさせないためじゃな」
というと
「相手の国力を強くして、何故反乱を防止できるといえるのですか」
と尋ねられた。
あれ?分からない?じゃあ説明するか。一言で
「その便利な技術で豊かになった生活。それを大友家抜きで維持できると思うか?」
さあシンキングタイムだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます