第2話 ????年 ???
【????年 ???】
「若君!大変です!」
そう言われて目を覚ます。
目の前には頭を雑に剃った坊主頭の人がいる。きっとお坊さんだろう。
どうやら寺の中で介抱されていたようだ。落雷で気を失っていたのだろうか
「ああ、あなたが保護してくれたのですか?ありがとうございます」
そう言われて目の前のお坊さんは、きょとんとした顔をしたあと
「私のような坊主に、もったいなきお言葉!恐悦至極に存じます!」
と、やけにかしこまって平服された。何でだろう?
その横で「兵部どの!若君が目を覚まされましたぞ!いつまで寝ているのですか!」と肩を揺すられている男の子がいる。
引き締まった体に中性的な顔つき。はて?どこかで見たような顔だな。
「ああ、すいません。先ほど大変とおっしゃってましたが、なにが起こったのですか?」と頭をふってお坊さんに尋ねている。
「そうでした!若君!お父上が府内にて逆賊から負傷させられたとの由(よし)!早馬にて報告がありました!」
「なんだってーっ!!!」
父上?俺の父はガンで亡くなったはずだが、死んだ人間が再び殺されることなどあるのだろうか?
そんなことを考えていると、お坊さんは肉親の死でショックを受けたと思ったのだろうか。平伏しながら言う。
「若君。御傷心のこととは思われますが、賊の手がいつここまで届くか分かりません。一度立石に逃げるのが良いと思われます」
「立石?立石とはどこの辺りですか?」
「ここから西、ケーブルラクテンチの辺りですね」
斉藤と呼ばれた男が言う。
「あの上に、大きな『メンヒル』という大岩が立っているので昔は立石村とも言われたんですよ。今だと水ノ口湧水や牛で有名な山香の立石駅と区別するため南立石町という名前になってますけどね」
「へー、そうだったんだ。詳しいな」
まるで先ほど会った少年のようだ。
「まあ、歴史研究会に所属してますしね。明治の地名だってある程度は由来を知ってますよ」
「お二人ともはやく!」
お坊さんが心配そうに外へでるように促す。
外は夜闇で真っ暗だったが雨は上がっていたらしい。
だが停電でも起こったのか、町の灯りが全く見えなくなっている。
「あれ?別大国道にも車がないのかな?災害でもあったのか?」
「災害でも車くらいは動いてて良さそうですが」
そういいながら暗い夜道を提灯の光で案内される。
3kmほど歩いただろうか?一段高い丘の上で庄屋の方の家に保護された。
「若君!賊は全て討ち取られたとのこと!殿は存命です!」「府内に佐伯が入りました!戸次どのがこちらに向かっているそうです!」「逆賊入田が逃亡しました!」
めまぐるしく情報が入ってくる。
だがそれ以上に気になっていることがある。
まず自分の格好だ。
戦国のドラマにでてくるような着物にわらじ。頭にはちょんまげまでできている。
そして、報告にくる男は百姓のような格好の人ばかり。
家の中には囲炉裏に薪まで用意されている。
明らかに令和時代の家ではない。
あまり考えないようにしていたが、確信をもって私は横にいる男の子、いや、少年に言う。
「あの、すいません。もしかして俺たち、戦国時代にタイムスリップしてませんか?」と。
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