大友宗麟になったので天下統一は諦めました ~戦国時代破壊記~

黒井丸@旧穀潰

序章;大友宗麟になってしまった

第1話 20XX年 大分県別府市浜脇 大友館跡

 創作による情報だけ有名で、知名度の少ない九州北部・豊後の大名大友宗麟の妄想小説です。

 独自解釈の多いエンタメ小説として楽しんでいただけたら幸いです。

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「じゃあ、これから俺はチートを使って天下統一を目指せばいいのかな?」

 時は戦国、大分県。

 どんな理由か俺は大友宗麟に転生…いや憑依していた。

 この状況に驚いたが、趣味で読んでいた歴史転移者の農業改革、簿記、新技術に歴史知識を思い出していた。

 何しろ大分どころか九州で一番偉い大名・九州王 大友宗麟になったのだ。

 現代の戦術に兵器を組み合わせればチート無双も夢じゃない。

 ああ、米相場で儲けるなんてのもいいな。

 でも自衛隊だけは勘弁な。あれはバッドエンドすぎる。


 そんな妄想を膨らませていると、さねえもんが哀れむような目で俺をまっすぐに見据える。

 え?何?なんかまずいこと言った?

 困惑する俺の肩を、さねえもんはがっしり掴んでこう言った。


「いえ、大友宗麟になったら天下統一は無理です。諦めてください」



 ●転生したら大友宗麟だったので天下はあきらめました。~戦国文化大破壊記~



 話は数日前に、いや400年後にさかのぼる。




【20XX年 2月10日 大分県別府市浜脇 大友館跡】



「おや、もしかして大友家の史跡巡りですか?」


 と声をかけてきたのは若い男性だった。年は15・6と言ったところだろうか?中性的な整った顔の少年だ。


 俺の名は藤原吉繁(ふじわらよししげ)。28歳の現場監督だ。普段は家を建てたりリフォームをしているブラック職場の社畜だった。このたび4ヶ月ぶりに家が完成したので休暇がてら別府温泉に来たのである。


 この温泉で有名な大分県別府の南、浜脇には大友館跡と呼ばれる場所がある。

 豊後の大名、大友家の別荘が建っていたといわれる由緒ある土地だ。

 『湯トピア浜脇』という公共の温泉施設から「南の高台へ5分も歩けば到着する」と言われ、物珍しさで見に来たら偶然先客と出会ったというわけだ。


「ええ、まあ建築が専門なんで、どちらかと言うと縄張りとか遺構の方に興味があるんですけどね」と少年に答えると

「それでも、うれしいです。普段遭遇するのは猿かイノシシくらいなもので」と言われた。

 聞けば、歴史を使った町おこしという事で大友宗麟を中心に郷土の歴史を調べているらしい。

 彼は驚くべき記憶力を有し、大友家だけでなく、飛鳥時代にかかれた風土記、鎌倉時代にかかれた土地台帳、太田文。江戸時代にかかれた豊後国志という本の内容まで暗唱してみせた。

 大分の地名から人物、出来事まで何でもござれといった感じだ。

「すごいですね。若いのに色々と知ってる」

「ええ、金にならないことだけは無駄に知っているんですよ」と少年は冗談めかして言う。

 そんな事ないですよ。と言おうとしたとき、急に雷鳴がした。


 あたりは急に暗くなり、土砂降りの雨が降り出したのだ。


「まいったな。どこか避難できる場所はないかな?」

 私が来た道は野道で民家まで600mはある。

「こっちの方にお寺がありますから、雨宿りさせてもらいましょう」と少年は言う。


 立派な御堂の軒下で、鶴見岳から別府湾へ雨雲が流れていくのが見える。

「雨、どんどん強くなって来てますね」

 まるでスコールのように雨は激しく地面を叩きつけている。お寺の軒下に着いた我々は刻一刻と暗さを増す暗雲を眺めていた。

 雨は一向にやまない。電波が悪いのか、スマホも繋がりにくくなっている。

「そういえば、ここって大友宗麟が滞在したという伝承があるって知ってます?」


「宗麟が?」

 大友宗麟(おおともそうりん;1530~1587)。

 21代目大友家当主にして「九州の北半分を統一した」大分の戦国大名。

 キリシタンを保護した事と、日本で初の大砲の鋳造に成功した大名だという。


 ネットだとあんまりよくない話ばかり(女好き、暴虐、わがままetc)だし、ゲームだと大分だけしか治めてないイメージがあるが、少年に言わせると「そう言った話は、だいたいは江戸時代に作られた俗説ですし、ゲームで大友家の本来の領地を再現したら九州統一は楽すぎてバランスが悪くなるんですよ」との事らしい。

 しかし、そんな大名がここに来てたというのは初耳だ。


「宗麟が21歳の時に父親が家臣によって殺害されるんです。そのときに、宗麟はちょうどこの別府の屋敷で凶事を聞いたと言われているんですよ」

 そんな壮絶な生い立ちとは知らなかった。


 何でも「二階崩れの変」という事件らしい。


 大友宗麟は幼い頃に母を亡くし、継母による讒言で大友家を継げずにこの屋敷に幽閉されていたという説もあるという。それに抗議した家臣を宗麟の父は処刑したので、別の家臣から襲われて命を落としたという。

「ま、軍記物っていう物語のお話だから、本当かどうかはわかりませんけどね」と少年は肩をすくめた。


 襲撃があったのは2月10日の夜だったという。

 ちょうど今日だ。

 南に見えていた高崎山よりも、もっと先にある大分市街。そこから火の手が上がったり、父が襲われて混乱しているのが見えていたのだろうか?

「そんな(不吉な)日に、ここにくるとは、不思議な縁もあるものですね。」

 少年がそういうと言うと雷鳴が聞こえてきた。

 みれば、別府湾に稲光が落ちているのが見える。

「こんなに天気が荒れたのは久しぶりだなぁ」

「ええ、これは危なそうですね」

「もしかして、ここにも落ちるかもしれませんね」

「やめてくださいよ。フラグを立てるのh…」そんな事を話していると、急に視界が真っ白になった。

 

 ものすごい轟音が聞こえた気がした。


 膨大な光の中、薄れゆく意識の中で、それだけははっきりと聞こえていた気がする。


 ・・・・・・・・・・・・・・・

 大友宗麟の人生を広めつつ、自分が学ぶために、今までにない転生物をやろうと思います。いや、ひょうい物ですかね?

 展開のぶっ飛び具合では本作はかなり上位に食い込む事になると思います。

 まあ、大友の職制とかにはあまり詳しくないので、通俗小説でも読むような気持ちで読んで頂けたら幸いです。


 なお「今のグレゴリオ暦と旧暦は違うだろ」と思いますが、そもそも日付自体が人類の決めた便宜的なことなので、まあ験担ぎみたいなものと思ってください。

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