2-5.憑依(BathTime)~

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本文には、Hな描写が含まれているます。

苦手な方はご遠慮ください。

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 その日の夕方、アルスが眠る前に、俺は新たな実験をすることにした。


 冒険を終えた3人が、宿の部屋に入り装備を解除したところで、実験を開始した。


 まずはアスカをターゲットとして、俺は憑依スキルを使ってみた。


 …………

 …………

 …………


 しかし何も起こらなかった。


 次にミヅキをターゲットとして、憑依スキルを使ってみた。


 …………


 ピタ


 『きたーーーー』


 魂が体にフィットした感覚と共に、目の前に金髪の天使のようなアルスの顔が見えた。

 こうしてアルスのことを、外から見るとなんだか新鮮である。


 「??どうしたのミヅキちゃん?」


 空色のバンダナを外し、首を傾げたアルスの額には、例の小さな模様がある。


 ミエコさんの巨乳の下側に付いていた模様とは、形が違うようだ。


 「え、いや、べつに」


 ビビッて声が小さくなってしまったが、何とか返事をすることが出来た。


 確かにミヅキの声だったが、女の子の話し方がまったくと言っていいほど判らずに戸惑ってしまう。


 「そうだ、ミヅキ。お風呂に行きましょ」

 「え、お風呂?」


 突然のアスカの提案に、驚く俺。


 「そう、シルフィーさんに聞いたんだど、冒険者ギルドには大きなお風呂があるらしいのよ。冒険者はタダで入れるんだって」


 「そ、そうなんだ」


 『やべーーー。何という幸運』


 俺はミヅキの声で返事をしながら、心の中に住み着く悪魔が叫んだ。


 一方の俺の心の中にいる天使は、ミヅキへの憑依を解除しようと必死に頭を使っていたが、欲望に眩んだ頭では答えに辿り着けなかったようだ。


 「ほら、ミヅキ、早くいきましょ」

 「は~~い!」


 俺は素直に元気く返事した。


 「アルスも入りなさいよね」

 「うん、わかった」


 アルスの事を促すアスカの頬は、薄っすらと赤くなり可愛かった。


 …………

 …………

 …………


 冒険者ギルドの大浴場は、離れにある建物の中にあった。


 位置はギルドの裏手、馬小屋の横にあるが、こちらは本館と渡り廊下で繋がっていて外からは見えない。


 3人は大浴場の入り口までくると、男風呂と女風呂で別れた。


 この世界は、混浴ではないようだ。


 もちろんミヅキに憑依している俺は女風呂である。


 今の状況なら女装がばれて捕まる心配はない!


 中に入ると、脱衣所特有のムッとした熱気に包み込まれた。

 

 そして中では冒険で汚れた鎧を脱ぎ、生まれたままの姿の女性達がいた。


 どれも鍛え抜かれた、貫禄のあるファイターの裸体だった。


 背中にある大きな傷は勲章である。


 『…… まぁそうだよね』


 俺の期待は大きく裏切られた……


 中には魔法使いだろうか、女性的な体の持ち主もいるには居たが、痩せすぎというか、不健康そうで色気が無かった。

 そもそも女性しかいない空間では、恥じらいも外聞もないわkで、意外とこんな物なのかもしれない。


 周りをキョロキョと観察していた俺をよそに、アスカは次々と洋服を脱いでいく。


 アスカの腕と足は引き締まっているが、適度な丸みを帯び、張りがありながらも、女性らしい柔らさを保っていた。


 『なんと、すばらしい。そして下着は白か!』


 アスカは赤を好むので、下着は赤だと思っていたが、意外にも白だった。


 そしてワイヤーのない、白い布で出来たブラジャーを途中まで外した。


 意外と、この世界の文明は進んでいるようで、下着の形状は現代の物に近かった。

 もちろんワイヤーが入ったブラジャーは、今のところ見たことがないが、ストッキングの様な物まであったりする。


 「何見ているのよ。ミヅキも早く脱ぎなさい」


 アスカは俺の視線に気が付くと、背中を向けて下着を脱いでいった。


 『うん、上を向いたお尻も美しい』


 胸を腕で隠し、すらりと伸びる長い足、姿勢の良い姿はスポーツウーマン特有の芸術的美しさがあった。


 「先にいってるわよ」


 アスカはスタスタと行ってしまった。


 「はぁ」


 『アルス、ごめん』


 俺は小さくため息を吐き、心の中でアルスに土下座してから、ミヅキの巫女装束を脱がせていった。


 紅色の女袴は、蜘蛛の糸で出来ているのだろうか、軽い上に肌触りがよく、そして皺が一つも出来ていなかった。


 硬く結ばれた腰ひもを解いて、スルスルと外していく。


 紅色の女袴を下げていくと、満月の様に白く、きめの細かな肌をした太ももが露わになっていく。


 『ごくり』


 続いて白い小袖を脱ぐと、胸が僅かに膨らんだ、丈の長いチェインメイルが現れた。


 ちょうどパンティが見えない絶妙の長さをしている。


 チェインメイルを脱ぎ、軽くなった体は、白いキャミソールと白いパンティーに包まれていた。


 幼い体になぜかドキッとしたが、なるべく意識をしない様に、上を向いたままキャミソールとパンティーを脱いでいく。


 『あれ?』


 パンティーを膝まで下ろしたところで、柔らかい白く太ももの内側に小さな模様があることに気が付いた。


 『また模様か』


 この世界の住人には、体のどかに模様が付いている物なのだろうか?


 そんなことを考えながら、胸と下半身を手で触らない様に隠しながら浴場へと向かった。


 もちろん小さな蕾の様な胸を俺は見ていない。


 俺は邪な考えを頭から追い出し、無心になってミヅキの体を何とか洗い終えることが出来た。


 もちろん綺麗な黒髪も、痛まない様に丁寧に洗ってあげた。


 『はぁ~、疲れた~』


 そして湯船に向かおうと振り返った、俺の目の前を聖女が通り過ぎて行った。


 あの短い癖のある銀髪、そして雪よりも白く透き通るような肌。

 肉付きは控えめ均整のとれた肢体。


 無駄のないしなやかな背中には、小さな模様が美しく添えられている。


 俺は聖女の姿が、水面に隠れるまで茫然と見とれてしまった。


 余りの衝撃に、今の自分がミヅキの体をしていることを忘れしまうほどだった。


 我に返った俺は、聖女から離れたところで湯船に入った。


 「はぁ、きもちいい」


 「遅かったわね」


 はっ、と振り返ると、耳まで浸かったアスカがいた。


 燃えるような赤い髪が水面に広がり、水面にちょっぴり浮かび上がった張りのある果実が眩しかった。


 アスカの横に移動した俺は、張りのある胸の上辺りに、小さな模様を発見した。


 それから俺は、さりげなく移動しながら周りにいる女性の体を観察してみたが、模様は見つからなかった。


 いや、これは純然たる情報収集の一環で、やましい気持ちで見ていたわけではない。


 そして偶然にも聖女と目が合ってしまった。


 「あら、ミヅキさんじゃないですか。今日もお疲れさまでした」


 「あ、いえ」


 俺はドキドキと鳴り響く胸の音を抑えながら、何とか返事をした。


 「あ、シルフィーさん。お疲れ様です。うわぁ、すごく綺麗な肌をしていいますね~」


 さっきは美しい姿に見とれていたのと、ほとんどが後ろ姿だったために気が付かなかったが、聖女の正体は受付嬢のシルフィーさんだった。


 アスカは遠慮なくシルフィーさんの白い腕に触れている。


 『くそ~~、羨ましいーー』


 「そんなことありません。アスカさんの水をはじくような肌にはかないません。少し長湯をしてしまったようです」


 シルフィーさんは、さりげなくアスカを避けるようにして、素早く湯船を出て行ってしまった。


 その動きには無駄がなく、聖女の様な姿を瞬間しか捉えることが出来なかったが、それでも鼻血が出そうだ。


 「ミヅキ、ボーとしちゃって大丈夫?鼻血が出ているいわよ」


 「あ、ちょ、ちょっとのぼせちゃったみたい」


 俺は夢から覚めぬまま、ふらふらとしながらも、急いで脱衣所に戻ったが、聖女の姿はどこにもなかった。


 『残念』


 俺は、なれない巫女装束に悪戦苦闘するも、何とか着替えることが出来た。


 もちろん下着を新しい物に変えるのも忘れていない。


 アスカと二人で外へ出ると、アルスが待っていた。


 「おまたせ~。覗かななかったでしょうね?」


 「そんなことしないよ」


 アスカは湯上りの姿を見られることが恥ずかしいのか、ごまかす様にアルスに突っかかっていた。


 そして3人は冒険者ギルドの酒場で夕食を済ませた後、部屋へ戻った。


 と、その時、事件が発生した。


 『う、やばい。トイレに行きたい』


 のぼせた体を冷やそうと、沢山の水分を急激に取ったせいか、ミヅキの体は尿意をもよおした。


 俺は慌ててトイレに向かうも、焦った。


 『さすがにこれはまずい。でもどうすれば憑依を解除できるんだ』


 そう、アルスに憑依した時は、アルスが目を覚ますことによって、自動的に憑依が解除されるので、これまで俺の意思で憑依を解除したことがなかったのだ。


 しかし、すでに我慢の限界が来ていると判断した俺は、トイレに入るなり下着を下ろしながら、気が付いた事を実行に移してみた。

 ツン。


 「きゃー」


 俺の視界が暗転した次の瞬間、ミズキの短い悲鳴が廊下から聞こえてきた。


 慌ててアスカとアルスは廊下に飛び出していく。


 そう、俺の目にはアスカの後ろ姿が見えている。


 『実験は大成功だった』


 ドンドンドン


 「ミヅキ、大丈夫!?」


 アスカがトイレのドアを叩いている。


 「大丈夫だから…… 部屋に戻ってください……」


 トイレの中から泣きそうなミヅキの声が聞こえてきた。


 「イタタタ、痛いよ。アスカ姉ちゃん」


 意味の解らないアルスはトイレの前に突っ立っていたが、アスカに耳を引っ張られて部屋まで連行された。


 しばらくして、涙目のミヅキが部屋に戻ってきたが、何も言わずベットの中に潜ってしまった。


 『すまない』


 俺は心の中で誠心誠意、ミヅキに謝罪した。


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