1-14.救出作戦2~

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本文には、暴力的な描写だけでなく、性的な描写も含まれているます。

苦手な方はご遠慮ください。

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 洞窟を進む一行の前方に、開けた空間が見えてきた。


 アルスはクーガーにならい、腰を低くし広場を覗き込む。


 中はそれなりに広い円形のホールの様だった。


 床には燃え尽きたかけた焚火が点々とあり、ホールの天井を赤く照らしている。

 焚火の周りにはゴミと一緒に沢山のゴブリンが寝転がっていた。


 そして左の壁沿いには、まるで羊の群れのようにまとまった、白く丸みを帯びた何かがあった。


 『まさか』


 俺は頭では解っていたが、目の当たりにしたそれは想像を絶していた。


 焚火の火に白く照らされているのは、裸の女性だった。


 その数は10人、いや30人はいるだろうか。

 体は泥を塗りたくったように汚れ、いくつもの切り傷や変色した打撲の跡がうかがえる。


 そして両手が手錠のように紐で結ばれ、足も走れないように結ばれている。


 みな疲れ果てているのか、丸まって眠っていた。


 アルスは震えるミヅキの肩を、そっとつかんだ。


 レーダーには無数の赤い光点と黄色い光点の塊が映っている。


 「ミヅキ、足についている紐を切れ。いいか声を出させるなよ」


 クーガーは小声で指示をだすと、1本の投げナイフをミヅキに手渡した。


 「はい」

 「アルス、ミヅキを守れ。行くぞ」


 漆黒の狼とクーガーは獲物を求めて、滑るようにホールへと駈け込んでいく。


 アルスはミヅキを庇うようにしながら、女性達のところへと音を立てないように慎重に向かった。


 漆黒の狼は音もなく、ゴブリン達の喉を次々と食いちぎっていく。


 クーガーも負けない速さで、ゴブリンの口を左手で塞ぎ、喉へダガーを突き立てていく。


 アルスはミヅキが自分の背後に来るように、ショートソードとスモールシールドを構える。


 「ヒィーーー、助けて……」


 ミヅキが3人目の紐を切ったとき、助けられた女性が目を覚まし、混乱しているのか叫びだした。


 ミヅキは慌てて手で、女性の口を塞いだが遅かったようだ。


 「……」

 「ギュ~?」

 「………」

 「……」


 あちらこちらからゴブリンが目を覚まし始めた。


 アルスは起き上がりだした近くのゴブリンをショートソードの一振りで切り伏せ、そのまま辺りで寝ているゴブリンの胸を次々と刺していった。


 「ギョァ」


 「……」


 「……」


 「グァギャギャー」


 ついに眠りから覚めたゴブリンが騒ぎ出し、次から次へと戦闘態勢を取っていく。


 「グァギャギャー」

 「ググァギャグギャー」


 「ち、アルス、ミヅキを手伝え」


 クーガーはロングソードとダガーを振り回し、次々とゴブリンを葬りながらアルス達の元へとやって来くると、背を向けたままアルスに指示をだした。


 そして幼い二人からゴブリンを遠ざけるように、クーガーは戦い続けた。


 その間も漆黒の狼は返り血に体を染めながら、ゴブリンを噛み切っては、すぐに別のところへと飛び込み、また喉を噛み切る、といった具合に、部屋中を縦横無尽に駆け回ることで、ゴブリン達を混乱に陥れていた。


 アルスはミヅキを手伝い、一糸まとわぬ裸の女性の足に付いている紐を次々と切っていく。


 助かったはずの女性達の顔に笑顔はなく、あるのは恐怖や混乱、諦めなど、気持ちを重くするもばかりだった。


 中には顔見知りもいたが、同一人物とは思えないほど雰囲気が変わってしまっていた。


 「あっちに逃げて」

 「さーこっちです」


 アルスが洞窟の外へとつながる道を示し、ミヅキが女性達を誘導するが、体が弱っているのか裸の女性達の動きは鈍く、なかなか避難が終わらない。


 アルスとミヅキは、なんと全員を来た道へ送り出すと、ゴブリンを行かせまいと道の前に立ちふさがった。


 すでにゴブリン達の数も、当初の3分の1に減っていたが、まだまだこちらより多い。


 5匹のゴブリンがアルス目掛けて殺到してきた。


 「目をつぶって。ホーリーフラッシュ」


 ミヅキが神聖魔法を唱えると、ホール一面が白く染まった。


 目潰しを食らったゴブリン達に向け、アルスがショートソードで切りかかる。


 ミヅキも、アルスに続いてショートスピアで突いていく。


 なんとか二人だけで5匹のゴブリンを倒し終えたところに、クーガーと漆黒の狼、いや青い血で染め上げられた狼が戻ってきた。


「ふぅ~、さすがにキリがないぜ」


 さすがのクーガーも肩で息をし、狼も長い舌を出して息が荒かった。


 「クーガーさん、ヒールはいりますか?」

 「いや、大丈夫だ。それより道に戻って戦うぞ」


 クーガーの指示で、ホールの入り口を5mほど戻ったところで陣形を整えた。


 広いホールの中では敵に囲まれてしまうが、通路なら2対2か2対3に持ち込めるからだろう。


 前衛はクーガーと青く染まった狼、後衛はアルスとミヅキだ。


 次々と恐れもせず、怒りに燃えたゴブリンが襲ってくるが、アイアンクラスのクーガーと狼の敵ではなかった。


 ようやくゴブリン達を倒し終わり、一行はホールの壁際で休憩をすることにした。


 戦いが終わり気の緩んだ頭に、元々ゴミ溜めの様な匂いがしていたホールの空気に、死んでいったゴブリン血しぶきが混ざり合いた刺激臭が襲い掛かる。


 『うっ、これはたまらん』


 疲れ果てた3人と一匹は黙って休憩しているが、疲れと無縁の俺だけがアルスの体の中で悶えていた。


 …………

 …………

 …………


 ドスン。

 ドスン。


 どっかで聞いたことがある地響きが、ホールの反対側にある出入口から響いてくる。


 『そういえば、まだ奴がいるんだった』


 レーダーには近づいてくる赤い光点が表示されている。


 疲れ果てた体に鞭を打ち、クーガー、漆黒の狼、そしてアルス、ミヅキが立ち上がった。


 クーガーはロングソードとソードブレーカを構える。

 アルスはショートソードとスモールシールド。

 ミヅキは背中に背負っていたショートボウを取り出す。


 ちなみにアルスのロングボウは、狭い洞窟の中では邪魔になるので、外の茂みに隠してある。


 「ミヅキ、敵を引き付けたらホーリーフラッシュを頼む」


 クーガーは指示を出すと、漆黒の狼と前に出て左右に広がる。

 そしてアルスはミヅキの前に進み出る。


 ちょうどY字になるように陣形が整った。


 そして反対側の出入口から現れたのは、


 手に鉄製の巨大なバトルハンマー、体には胸だけを覆う金属製のブレスアーマを付けた、巨人の様なホブゴブリンが一体。


 スケイルメイルを着こみ、手には剣や槍を持ったコボルトが6匹。


 『精鋭部隊の登場だ』


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