006:暁雨、早朝に川原を散歩する(20)
「アキちゃんも、一個も
ぼやく口調で、
例の化け物が
何の化け物か分からん例の男はまだ、ぐったりと布団にうつ伏せて
それでも
ひとまずの危機は
「
とてもガッカリしてるとは思えんにこやかさで、
気心の知れた神の
「こいつ
そういう自分も
「
よう知ってるやないか、
そうやろな。こいつは
ついさっきは、耳まで口が
そやから化け物は信用ならへんのや。
「
「何ぞ知ってんのやったら、もったいぶらんと早う話せ」
布団の足元のほうに
「アキちゃん。タダやと言われへん。手伝うたら何くれる? 俺とまた、動物園に
「何で俺がそないなことせなあかんのや」
目も合わせず
いつも
捨てても捨てても追いすがってくる、こいつも悪い
もう
こいつにはこいつの一生があるんやないかと私は思うのですけどね。
「俺はアキちゃんにまた、ぎょうさん絵
「そないなことない」
そう言うたものの、それは事実かもしれません。
「こいつ、動物園の
いや、知らん。俺はつくづく世を捨ててんのや。
家に
そやけど、俺もう死んでるのやで?
今さら何をやるて言うんや。
いつ果てるとも知れへん
けど、それを言うなら
「行こうよ、アキちゃん。水族館。けど、こいつ、どないするん?」
どないしたらええんやろな、こいつ?
私がほんまに生きておった
そやけど、アキちゃんはもう
そんなら、どないすればええのやろ?
それが一番ややこしいところなのです。
「返したら? もし
分かりきった答えを教えるように、
そうやな。そうやけど。
何やろう。この胸の
「
さも
そんなんやないぞ
「何で
笑う顔のまま不思議そうに
「
「その時とは?」
キョトンとして、
「こいつ何か足りんと思わんか?」
ほんま言うたら自分でも何が気になっておるんやら、よう分からんのです。
そやけど、この化け物は、さっさと手放して一件落着というような浅い
ただの予感ですけどね。
けど一応、これでも
それが
そこに横たわる身体はもう五体満足と言うてもいい。欠けたとこなど無いように見えます。
もともと無かった側の体は衣服を失い
つまりこいつは、服は再生できひんのや。この衣服はただの服なのです。
新たに生えた半身の、生白い足の付け根のあたりに、
どうやら
真新しい
「ハートやな」
勝手に何をやってんのやお前は……。
痛いのか、そうでもないんか、化け物が
「アキちゃん、これ見て」
アレです。スマートフォン。
ほんまに
「これ」
その小さなガラス板には、一匹の
後ろ足の付け根に大きな
その少し
たった今、そこで
「ショウちゃん……」
画面に書かれていた名前を、私はただ読んだだけでした。
京都水族館でショウちゃんに会おう。そう書いてあったのです。
そやけど、それがこいつの
布団に横たわっていた化け物が、急にぱちりと目を開きました。
「ショウちゃん」
「ショウちゃん……それ……僕の名前です」
そう言うて顔を
「みんなが付けてくれた、僕の名前やったのに……あいつが、僕から
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